第6話:未知の世界
眩しい光が消えると、彰人の目の前に広がっていたのは、まるで異世界のような光景だった。
空は暗紫色の雲に覆われ、地面は銀色に輝く金属のような質感を持っている。遠くには、不規則に揺れる光の塔がいくつも立ち並び、彼の胸に言葉では言い表せない不安感を与えた。
「ここは……どこだ?」
自分の選んだ霧のレールの先が、こんな場所に繋がっているとは想像もしていなかった。
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ふと、耳元で小さな声がした。
「ようこそ、新たな未来へ。」
振り返ると、そこには見慣れた案内人の姿があった。ただし、これまでの冷静で穏やかな表情とは違い、どこか挑発的な微笑みを浮かべている。
「ここは何なんだ? 現実か、それとも夢か?」
「現実だよ。ただし、これまでの現実とは異なる『可能性の世界』だ。」
「可能性の世界?」
「そうだ。お前が選ばなかった道や選びきれなかった選択肢が、ここに集約されている。言わば、無数の未来が交錯する場所だ。」
彰人は理解しきれず、案内人の話を聞きながら周囲を見回した。確かにこの場所には、どこか現実離れした異様な雰囲気がある。それは、選択を超えた何かが存在するかのようだった。
「この世界で、お前は自分の選択を再確認することになる。」
「再確認……?」
「そうだ。この先にはお前が選ばなかった未来、その残響が存在する。その中でお前は新たな選択を迫られるだろう。」
案内人は言葉を切り、少し距離を取るように後ろへ下がった。そして指を差し示すと、彼の視線の先に一本の新たなレールが浮かび上がった。
それは、今までのような直線ではなく、複雑にねじれながら先が見えない形をしていた。
「歩むのか、それともここで止まるのか。それもお前次第だ。」
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彰人は迷っていた。これ以上進むべきなのか、それともこの場所で何かを見つけるべきなのか――。
ふと、その時、遠くの光の塔の中に見覚えのある人影が見えた。
「……美幸?」
彼女の姿に似たシルエットが一瞬、塔の中で揺らめいた。それは確かに彼が記憶する美幸の姿だったが、どこか現実味がない。
「どうしてここに美幸が……?」
案内人が再び口を開いた。
「お前の選択が、彼女の未来にも影響を与えている。その残響が、この世界に現れているだけだ。」
「残響……?」
「だが、この世界では、彼女もまた別の選択をしている可能性がある。それを知りたいか?」
彰人は迷い、しかし彼女の姿が気になって仕方がなかった。彼は塔の方向に向かい、足を踏み出した。
その瞬間、またしてもレールが現れた。
一本目のレール:光の塔へ進み、美幸の姿を確かめる道。
二本目のレール:塔を避け、未知の新たなレールを進む道。
彰人は立ち止まり、深く息をついた。そして、ゆっくりと一歩を踏み出した。
「俺が選ぶのは……」
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分岐点の果てに ほんわか @ken1975
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