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 ゆーあ@3253 / tulip


 ゆーあ@3253 フォロワー14人


 2024年 12月24日に公開済み 1時間前 1344回再生 2:44


 作:ゆーあ@3253  作曲:ゆーあ@3253  歌唱:ゆーあ@3253  MV:ゆーあ@3253


 #初投稿


 歌詞↓


 視界に映る赤いチューリップ

 人気の色はそれなんだよね

 太陽の日を浴びる青いセーラー服

 行きたいなここで待っててね


 いつも君と目が合うね

 嫌いだったらすごい確率

 大切にしたい

 悔いしかない人生を

 泣いちゃうくらい

 いらないけど


 君と一緒にでかけたい

 「えらいね」って褒められたい

 助けてもらいたい

 一緒の気持ちだといいな


 写真に写る白い君の肌

 似たような顔じゃないね

 食べてるときの可愛い顔

 行かなくちゃずっとここにいて


 することがもうなくなっちゃって

 君のことを思い出せなくて

 駄目な人間だね

 って、あなたにすら言えなくて

 太陽はもう沈んじゃった

 夜しかもう来ないんだ


 た。


 寒い季節に浮かぶ白い雪

 夜だから寒すぎるね

 長すぎたけどこれで終わる

 「らしくないね」言うと思った


 馬鹿みたいに落ちる涙

 「いつか」なんてもうないよ

 馬鹿みたいに叫ぶ君

 「いらねえよ」って言ってくれ



 コメント


 ・めちゃいい曲!

   ↳それな

   曲調明るくて好き

   聴いてると元気出てくる!


 ・恋愛ソングかな?

   ↳絶対そうでしょ

   なんか意味深な曲かもしれないよ


 ・ゆーあって初めて聞いた名前

   ↳初投稿らしいです!

 

 ・初投稿ってがち⁉

   ↳えまじ?

    凄すぎ!


 ・転調きれい

   ↳ロ長調→ニ長調→イ長調

    転調ってなに?


 ・ピアノめっちゃすき!

   ↳ですよね!


 


「ねえ、この曲知ってる?」


「なにこれ? 知らない」


「昨日アップされた曲なんだけど、めっちゃいいの!」


「ホント? あ、サムネだけみたことあるかも」


「聞いてみてよがちでいい曲だから」


「うん!」


 ――え?


「あー、その曲私も聴いたよ! めっちゃ良かった!」


「だよねー!」


 ――え?


「お前何聞いてんの?」


「tulipって曲」


「あ、俺も一瞬だけ聞いたわ」


「なんで一瞬なんだよ、フルで聴け」


 ――いや、違う。


結愛ゆうあはこれ聴いた?」


 ――きっと何かの……。


「結愛?」


 目の前にはクラスメイトの顔が近くまであった。クラスメイトの瞳から私の顔が反射しているのをしっかり確認できるほど。


「え? ああ、なんの話?」


 私は即座に笑顔を作って、ぎこちない返事をした。


「なんか結愛最近ボケーっとしてるよね」


 彼女は笑いながら言う。


「最近寝不足だからかも」


 私は適当に嘘を言ってごまかした。


「結愛のこれ聴いたことある?」


 彼女は派手なピンク色のスマホを私に向ける。映っているのは「tulip」という曲のMVだった。


「ん? 初めてみたかも」


 これも嘘だ。


「昨日出た曲なんだけどさ、めちゃくちゃいい曲なんだよね!」


 私のその言葉を聞いて、胸が少し痛んだ。


「そうなんだー。後で聴いてみるね!」


 私はまた無理やり笑顔を作って、彼女に明るく振舞う。ここ数年で、笑顔を作ることが得意になった。


「おはよう結愛」


 後ろから声をかけてきたのは私の友達の真音だった。


 私より少し背が高くて、ハーフアップの髪型が特徴的な子。


「おはよー」


 私はあくびをしながら挨拶を返す。


「眠そうだね」


「うん、バイト忙しかったからなあー」


 ぐいーっと伸びをしながら私は言う。


「お、結愛今日は来たの?」


 今度は横から、クラスの中でもよく喋る男子の瀬名が話しかけてきた。


「あんた寝ぐせヤバいよ」


「え、まじか」

 

 瀬名は自分の髪を触りながら驚く。


「ちゃんとしないとだらしないよー」


 私は笑いながら彼をからかう。


「遅刻寸前だったからしかたないだろ」


「だったら早く起きろよ」


 私たちはいつもこうやって馬鹿みたいな会話をして、学校を過ごして、なんとか乗り切っていた。


「♪~」


 瀬名は機嫌がいいのか鼻歌を歌い始めた。


「なに歌ってるの?」


「ん? tulipって曲。知ってる?」


 瀬名は爽やかな笑顔を浮かべて私に言った。また、胸が痛む。


 どうして。どうしてこんなことになっているのだろう。まるで私が増殖したみたいだ。


「うん知ってるよ。クラスのみんなが噂してた」


 私はいつもよりも穏やかに答えてしまう。


「俺も昨日聴いてさ、ハマっちゃった」


「うん。いいよねその曲」


 本当は、いい曲なんて何一つ思っていない。ただの死にたがりが書いた曲だって、知っているから。


「作曲した人ゆーあって言うんだって。結愛とゆーあって同じじゃん。もしかして結愛がこの曲作ってたりする?」


 ——!


 私は瀬名に顔を見せないように、下を向いた。私の顔は、きっと絶望しているから。後悔した。こんな分かりやすい名前で投稿するんじゃなかった。


 私がこの曲を作ったって瀬名とかクラスメイトに知られたら。きっと、また私は一人ぼっちになる。


 余計に、死にたくなる。


「結愛? 大丈夫?」


「——え?」


 私ははっと我に返った。目の前には心配そうにのぞき込む瀬名がいた。目が合いすぎて、近くにいすぎて、すぐ目を逸らしてしまう。


「もしかして体調悪い?」


 瀬名の気遣いに、ほんの少し顔が熱くなる。


「……心配させちゃってごめんね。ちょっと保健室行って来るね」


 私は普段よりも小さく、低い声で瀬名に言った。


 私は小走りで教室を出て、冷え切った廊下に出た。


 バレたくなかった。あの曲を私が作ったことを。あの曲はただの恋愛ソングじゃないことを。


 私が死のうとしていたことも。

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ゆーあ@3253 tulip ここあ とおん @toonn

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