第10話
「あー!わかったごめん。5分待って!」
よかった通じたみたいだ。ホッとする私とは逆に、ドアの向こうではバタバタと慌ただしい動きを感じた。
女の人の少し怒った声と、なだめる男の声。
そしてきっかり5分後にとても綺麗なお姉さんが、乱れた髪を直しながらドアを開けて目の前に現れた。
私の方をチラリと見てから、微かに笑みを浮かべて玄関に向かって行く。大人の余裕をなぜか感じてしまう。あのお姉さんが……あの声を?いやいや!変な想像しちゃいそうで怖い。ダメダメ!雇い主の個人情報に入り込んではいけないけど、顔が赤くなってしまう。こら葵!しっかりしろ!
頬をパチパチ叩いて気合いを入れていたら
「どーぞー」って
妙に緊張感のない声が私を呼んだ。
抱きしめられたら‥‥‥‥すり抜けろ! 真紗美 @miodama
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