第6話 メイドたちの争奪戦

「...参ったな...」


 まさかメインヒロインが全員面接に来るなんて...。


 さて、ここで何が起こったかを説明しよう。


 まず、メインの話ではお母さんが病に伏してそのまま死ぬ予定だった。

その後、主人公は妹であるユーリとともに、貴族達と争いながらも自分たちも貴族になる...というのが基本的なストーリーだった。


 しかし、俺が二人を泊めて薬をゲットしたことにより、病は完治。

結果的に、主人公が貴族たちと争う展開はなくなり、村でひっそり暮らすしていた。


 そんな時に、メイド募集の張り紙を見つけた主人公の妹が出稼ぎのような形で面接を受けに来た...ということだ。


 続いて、エリス・リージュ。

彼女も本筋では貴族と争う主人公と出会い、同じ母を病で失ったことをきっかけに、恋に落ちて、そのまま結婚となったのだが、この世界では主人公は村に籠っているので城下町で出会うこともなく、普通に生活していた。


 そして、彼女の母は病は治ったものの、働くことが難しいため、彼女がお母さんの分も働かなければならず、そのタイミングでメイド募集の張り紙を見つけて、面接を受けに来た...ということらしい。


 3人目のノア・ハイシュ。

 設定では主人公のクラスメイトであり、ダークエルフの女の子だが、そもそも学園に通っていない主人公との接点は0。

 それに伴ってか、彼女も元の世界とは違う不遇な人生を歩んでおり、街に買い物をしにきたところ、誘拐され奴隷小屋で売られていたので、 俺が大金を払ってダークエルフの村に返してあげたのだが...。

まさか恩返しにやってくるなんて。


 最後は主人公の幼馴染であるルビア・アンジュラット。

 元々は主人公と共に村で過ごしていたが、後に貴族の隠し子であることが判明。

そのため、10歳の頃に貴族が彼女を引き取りに来た。

 本来なら、貴族のパーティで主人公と運命の再会を果たすが...当然、この世界ではそんなことはない。

 貴族の中でも権力が強いおっさんに無理やり結婚を迫られていたところを助けたのだが...。

まさかうちのメイドの面接を受けにくるとは...。


 もちろん、メインヒロインの彼女たちを突っ張れるわけにも行かないので、とりあえず全員に合格を言い渡し、住み込みで働いてもらうことになったのだが...。


「朝は私がご主人様を起こします」

「いや、私が起こします!」

「あっ...いや...私が起こしますよ...」

「私が起こすのが合理的だと思いますけど」


 さっそく、誰が俺を起こしにくるかで喧嘩が勃発していた。


「...いや、俺朝苦手じゃないから。別に起こしに来なくていいよ」


 そんな俺の言葉は彼女達には届いていないようで、無視して言い争いをする。


 すると、パンと手を叩いて注目を集めてからシュリが険しい顔で全員を睨む。


「...メイドとはこの家に支えるということです。それを理解できていないようですね。はぁ...全く...困りましたね」と、一端のメイド長的な雰囲気を醸し出す。


「「「「申し訳ございません」」」」と、全員謝る。


「アイン様がおっしゃったように、アイン様はここ2年、私が起こしに来る前に起きています。なので、わざわざ起こす必要がありません。...それぞれ事情があってアイン様に感謝をしているのは分かりますが、私情は抜きにして、メイドとしてアイン様に貢献することを一番に考えてください」


 そうして、全員に喝を入れて、それぞれに仕事を与えると、シュリと部屋で2人きりになる。


「...全く...困ったもんですね」

「まぁまぁ...悪気があるわけじゃないからさ。許してやってくれよ」

「...へぇ?メイドが5人に増えた途端、ずいぶん余裕がある立ち振る舞いをしますね。あの4人とどんな関係になろうと私には関係ありませんが、出来れば節度を持って、面倒なことにならないようにしてくれると助かります」

「...そんな見下した目で言わなくても、変な関係になるつもりはないよ」

「アイン様がそうでも、彼女たちはどうでしょうね」


 それから、俺は部屋に篭って増えたお金の使い方を考えていた。


 設定通り、自国の金の価値は暴落し、隣国の金の価値が上昇したことで、我が家は相当に潤っていた。


 ただ、この先の展開については俺も知らない。

つまり、立ち回り一つでこの座は簡単に陥落する。


 さて、どうしようかな...と思っていると、部屋をノックされる。


「...ん?」と、扉を開けるとそこにはエリスが立っていた。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091743290705


「こういうのはダメだって分かってるんですが...、あの...これどうぞ」と、クッキーを手渡される。


「おぉ、クッキー。ちょうど小腹空いてたんだよね。ありがとう」

「い、いえ...//こ、これぐらいなんでもないです...//」と、お辞儀をしてそのまま去っていくのだった。


 うん、幸せだ。

 

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乙女ゲーの没落貴族に転生したので、原作&前世知識で無双してたらメインヒロイン達がメイド候補としてやってきた【挿絵有】 田中又雄 @tanakamatao01

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