7話 協力者
結局ワイルドバイソンの死体を処理したりしていたら、戻ってくるまでに数時間は掛かってしまった。
とっても、今日に関してはそこまで驚かれることをして行かなかったから、忘れられていないと思うけれど……。
まあ、何がトリガーになって功績扱いされるかわかんないから、忘れられている可能性も無くはないけどさ……。
「あら?今朝の……ワイルドバイソンは狩れましたか?」
よし!
とりあえず忘れられていないようだ!
毎回自己紹介すんの面倒なんだよ!
「ギルドの前まで引き摺って来たから、そっちで回収してくれ。あと、なんかでかいが数万頭のメスを集めて群れ作ってたから、デカいボスを狩っておいた。残ったメスは周りに散らばったと思うから、一応報告しておく」
「……はい!?」
そこからは、暫く色々と聞かれた。
俺はそこまで魔物に詳しいわけじゃないけれど、やっぱりヤバイ状況だったらしいっていうのは、サリナさんたちギルド職員の反応で分かる。
とはいえ、詳しい状況とか聞かれても、デカいワイルドバイソンのオスが、メスをたくさん囲って腰を振っていたから、それを近寄ってサクッと倒したってことしか言えない。
詳しい説明が必要だって言われても、今更なんだよなぁ……。
「あのぉ……」
白熱するギルド職員からの質問と、それに対する俺のやる気のない応答の合間を縫って、声が聞こえた。
それは、俺の横にいた奴から発せられたらしい。
このメンドクサイ事になっていそうな俺達に話しかけてくるとはいい度胸をしているじゃないか。
職員の気も引いてくれたし、言う事なしだな。
「どうかしました?」
「サリナさん、私、その群れを発見して、暫く観察していたんすよ。そして、そこの方がボスを倒すところも。ギルドに報告すれば報奨金が出るかと思ってデータを収集していたんすけれど、そこの方が解決してしまったようっすので、完全に無駄にするよりは、報告してしまおうかと……」
「本当ですか!?是非情報を頂きたいです!場所を移しましょう。奥の部屋をとってくるので、ジルさんもどうぞこちらへ!」
「結局俺もか……」
サッと帰りたかったんだけれど、どうやらそれは無理っぽい。
1時間は確実に経過するな。
めんどくさいなぁ……。
俺が、この後の事で憂鬱になりながらも移動を始めようとした時、先ほどの少女が声をかけてきた。
「あの、ジル・シュヴァリエ様っすよね?」
「……うん?そうだけど、キミは?」
「申し遅れました!私、モシュネーっていうっす!ジル様のご活躍については、以前より伝え聞いておりまして!……それであの……」
何かを聞こうとしていたのに、途中で止まってしまう彼女。
それでも我慢できなかったのか、おずおずと聞いてきた。
「どうして、こんな所にいるんすか?この国の英雄ですよね?しかも、昨日は服もボロボロで、武器も持ってなかったっす……」
「あー、それ聞いちゃう?聞いちゃうかー……。いやさ、俺のギフトってすごい強いんだけど、デメリットで60分くらいしたら周りの奴らから俺の功績に関する記憶が消えるんだよね。で、昨日、何もやっていないどころか、やっているって虚偽申告をしていたって罪で王国軍を追放されちゃったって訳。って言っても、この話を聞かせた所で、キミもすぐ忘れちゃうだろうけどさー」
新聞に載る様な内容だもん。
多分これは何かしらで功績判定されて、俺のギフトとかの情報は忘れられちゃうだろうから、別に隠す必要もない。
「あ、それなら多分大丈夫っす。私、ジルさんの事覚えているので」
「……あれ!?そういえばそうだ!どうして!?もしかして、ギフトがSだったりする!?」
「いえ、違うんです!私のギフトって、観測者っていうAランクのやつなんすけど、観測したことを他の人のギフトに関係なく覚えておけるんすよ。って言っても、普通忘れさせるギフトなんてそうそうないんで、このギフトのメインは、『ありのままを観測するために、観測対象に気がつかれにくくなる』って部分なんすけどね。今日もさっきまで、ジルさんが大立ち回りしている所をみてたっすけど、気が付かなかったっすよね?」
全然気が付かなかった。
あの時みられてたのか。
……ってなると、色々見られたくない部分も見られているな……。
「えーと、できれば色々秘密にして頂けると有難い……」
即頭を下げる。
お願いをするときは、相手によって重要視する部分は変わるけれど、この子が相手であれば、可能な限り早く真摯にお願いするべきと見た!
「あ!別に言いふらすつもりはないんすよ!?そうじゃなくてっすね……。えーと、一つ提案なんすけど……」
そう言って、彼女は俺の耳元に顔を近づけ、囁くように言った。
「私とパーティ組んでほしいんすよ」
60分だけの英雄 @mk-6
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