第2話

入り口全体の溶接を外すのに、ある程度時間がかかったが、誰にも気づかれることはなかったようだ。

鉄板はそれなりの大きさがあるが、わりと厚みは薄かった。

そのため想定よりも早く切断できたし、倒すときも静かに倒すことができた。

――これでよし。

中に入る。

懐中電灯を照らそうとしたが、その必要はなかった。

小さな工場のほぼ真ん中に、それはいた。

赤いワンピースを着た少女。

その身体がうっすらと光っている。

懐中電灯を点けるまでもない。

――幽霊だ。

子供の頃からオカルト大好きな俺だが、幽霊を見たのは初めてだった。

普通の人間なら怖がるところだろうが、俺は逆にうきうきしていた。

幽霊少女が言った。

「あら、ここに人が来るなんて、久しぶりね」

「君は」

「私。私はここに住んでいるのよ」

「君は幽霊なのか」

「もう死んでるから、そう言うことになるわね」

その時、どさりと音がした。

見れば俺の足元に、なにか横たわっている。

よく見るまでもない。

それは俺自身の身体だった。

「えっ?」

「あらあ。あなたも死んだみたいね」

「えっ!」

「ここは霊界よ。つまりあの世。もともとは強い霊道だったんだけど、いつの間にかあの世の一部になったのよ」

「……」

「あの世に生きた人間は、いられない。だからあなた、死んだの」

俺は焦った。

そして外に出ようとしたが、俺の身体は転がったままだ。

少女が笑いながら言った。

「外に出ても無駄よ。死んだ人間は二度と生き返らないわ」



       終

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