異世界戦争

藍無

第1話 転生

私はの名前は根城はるか、17歳のふつうの高校生__だったはず。

今、鏡に映っているのは、光に当たると透き通るように美しい金髪に緑色の瞳で、緑色のドレスを着た少女だ。これって、転生ってやつかな?

ちょっと待って、私、たしか道路を歩いていたら青信号なのに車が飛び出してきて、ひかれて、何か意識無くなったんだよね。もしかして、死んだのかな?それでこの体に転生した、ていう感じかな?

それにしてもどうしよう、外燃えているんだけど。

そう思い、私は窓から外をじっと見つめた。

建物が燃え、混乱し、逃げ惑う人々、空から攻撃する魔法使いたち。

うーん、これって、戦争的なやつなのかな?

その次の瞬間、頭にズキッ、と痛みを感じた。

誰かの記憶が流れてくる。

科学、戦争、兵器。

王族、敵国、殺害、頭脳、兵。

そうだ、私の名前はノア・ウィリオス。

ティアシス王国の第一王女だ。

そして今は敵国_フィシオス王国との戦時中。

年齢は、13歳。

そして、好きな教科は理科。

随分と科学分野が好きだったみたいで、机の引き出しの中にも科学について書かれている資料が大量に入っていた。

見てみると、書いてあるのは前世の中学や高校で習ったことばかりだった。

うーん、前世では常識だけどすごい発見みたいに書いてあるな。

この世界ではそんなに科学技術とかが発展していないのかな?

「ノア。」

そう言って、ドアをノックする音が聞こえる。

この声は今世の先ほど流れてきた記憶からすると、私_ノアの三つ上の兄、カナタ第二王子だ。

「はい。」

私はそう言ってドアを開けた。

そこには、白髪に落ち着いた緑色の瞳の少年_カナタが立っていた。

「ノア。今日は一つ言いたいことがあってきたんだ。」

なんだろう。

確かカナタ兄さんと私は記憶によると仲が良かったみたいだ。

「明日から私は敵国との戦争の総司令官として王城を出陣しなければならない。だから、そのことを今日のうちにノアに伝えておこうと思ってな。」

「そうですか。」

「ノア、大丈夫か?泣いているぞ?」

「え?」

私、泣いているの?

なんで?

そんな特に悲しいなんて思わないのに。

ノアの体が悲しいって思っているのかな。

私は今あったばかりだからそんな特に悲しいとか行かないで、とか思わないんだけど。っていうか、絶対泣いちゃだめだよね。

戦時中ならしいし、行かないで、とか言ったら絶対殺されちゃうとかそういう感じだよね?どうしよう。

速く涙止まらないかなー。

そう思っていると、カナタ兄様はハンカチを取り出して、私の瞳から勝手にあふれる涙をぬぐってくれた。

「ありがとうございます。」

私はそう言って、泣いている姿を見られないようにカナタ兄さまに背を向けた。

「どうして、こっちを見てくれないんだ?」

いぶかしげにカナタ兄様がそう言った。

「だって、泣いている姿なんて見られたくないもの。」

私はそう言って、先ほどもらったハンカチでなぜか止まらない涙を拭いた。

「そうか。でも、必ず生きて帰ってくるから、安心しろ。」

そう優しい声で言って、私の頭を温かい手でなでた。

「当たり前じゃない。必ず生きて帰ってくることなんて。」

私はそう言いつつも、止まらない涙をふく。

「ああ、そうだな。じゃあ、またな。」

そう言って、カナタ兄様は部屋を去っていった。

その後ろ姿は、なぜか前世の事故で死んだ弟の最後に会った姿と重なった。

私は急いでその風景を頭から振り払った。

そんなことない。

カナタ兄様は帰ってくる。絶対に。

弟はたまたま運が悪かっただけ、だよ。

そうだよね?

自分の大切な人や自分は、当たり前のように明日を生きているところが想像できるけれど、それはきっと当たり前ではないんだ。

そしてそれは、誰かを失ってからではないと気づけない。

それに、弟だって私みたいに異世界に転生しているかもしれない。

それで、新しい生を楽しんでいるかもしれない。

そうだ、そうじゃないか。きっと、そうに違いない。

だから、大丈夫だ。

お父さんも、お母さんも、どうしているかな?

私がいなくなって大丈夫かな?

泣いていないかな?

そう考えると止まったはずの涙がまたあふれてきた。

いや、大丈夫だよ、きっと。

私が泣いてどうするんだ。

大丈夫、きっと大丈夫。

でも、少しでも早くカナタ兄様に生きて無事に帰ってきてほしいのは事実だ。

前世の記憶を取り戻す前のノアには随分優しかったみたいだし。

どうしたら、早く帰ってくるかな。

そういえば、ノアって理科が得意分野なんだっけ?

だとしたら、何か武器とかを作って一秒でも早くカナタ兄様が帰ってこれるようにしよう。少し、敵国の人がかわいそうだとは思うけど、先ほどの燃えている街や逃げる人に攻撃していた様子からして、この国には容赦なく攻撃しているようだし仕方がないことなのだ。

私はそう思い、紙とペン、それから本をとりだして武器の構造の図を書き始めた。

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