【カクヨムコン10短編】雪の思い出

マクスウェルの仔猫

雪の思い出

 私は、小さい頃からずっと思っていた。


 雪のようになりたい、と。


 はかなげで、真っ白で。

 透明感があって、美しい。


 そして誰もが、目を留めずにいられない。

 そんな雪が羨ましかった。

 




















 でも。


 雪は、もういない。




















 

 ねえ、雪。

 崖から落ちた時は痛かった?


 でもね?

 でもねえ?

 勘違いしないで?


 あの時ね?

 神様の声が聞こえたの。


「背中を押せ」って。


 双子なのに私よりもキラキラしてたから、私よりも愛されてたからきっといけなかったのかもね。だってさ、顔も性格もやる事も同じなのに雪だけがみんなに愛されてたのっておかしいと思うの。


 きっとお姉ちゃんの見てないところでズルしたんだよ。お姉ちゃんの悪口を言ったり、雪の着物をつくろう振りをしてぐさぐさにしたとか雪ばっかり可愛がるおばあ様のキツイお薬を雪のご飯にまぜたとか告げ口をしたんでしょ?


 そんな事ばっかりするから神様のお怒りにふれちゃったんだと思うの。でもでも、お姉ちゃんすっごい頑張ったんだよ?雪の事を守ろうと懸命に抵抗したの。でも神様には逆らえなかったの。すっごくしつこく頭の中で命令するんだよ?





















 今しかない突き飛ばせ落とせこの機を逃すなお前が雪だ、押せ、押せ、押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ、って。





















 そこまで嫌われてたらしょうがないよね、可愛そうな雪。ごめんね、助けてあげられなくって。


 でも、後の事は任せて?

 

 お姉ちゃんがちゃああああああああああああんと!雪になってあげる。それで雪の分までいっぱいいっぱい、いーっぱい!幸せになってあげるから見守っていてね。


 雪。


 私の為に生まれてきてくれてありがとう。生まれ変わっても、絶対絶対絶対絶対、またお姉ちゃんの妹になってね? 


 うふふ。

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【カクヨムコン10短編】雪の思い出 マクスウェルの仔猫 @majikaru1124

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