夜職の学び

勤務終了後、タイムカードを切った後に再びミーティングが行われた。


その時点でボクの頭は「早く帰りたい」という言葉しか浮かんでいない。


MTGがはじまるとスタッフ一人一人の反省会が行われる。


主任たちの態度が一変したことに驚いた。さっきまで屈託なく笑顔で話していた彼らが、真剣な表情で売上や同伴についてスタッフに指摘を始めたのだ。


「クリスマスは決まったイベントだから、準備をしっかりしよう」


それに対し、他スタッフも真剣に自身の課題と今後の戦略をスパスパと話す。


お前ら、やってることがオープン〇ウスかよ。


彼らが口にする「準備」とは、もちろんお客様を迎える準備ではなく、お客様を店に連れてくる準備のことだった。


この一日を通じて分かったことがある。


同じ「お客様に楽しんでもらう」という目的を持っていても、そのための手段が全く異なるということだ。


ターゲットの違いなのか、それとも文化の違いなのか。


歌舞伎町ここでの「サービス」は、根本から異なる価値観に基づいていると感じた。



そんなこんなで、ようやく退勤。久しぶりに新宿の朝をシラフで迎えた。


ゲロまみれなわけでもなく。見慣れた街並みも、働いた後では少し違って見えた。


まぁ、いい社会勉強になったと思おう。帰りの電車で店長に退職の旨を送信し、そのままブロック。


こういうのはスパッとやめないと後が大変だからな。正直、この仕事でお金なんてもらえないので、給料に関してはもらわなくてもいい。


とんだ一期一会になったものだ。歌舞伎町。やはりいくなら客としてのみ行くべき街である。


たまにはこんな経験もいいものだと思って、明日からまた職を探そう。


しばらくはタイミーで食いつなぐかぁ。


とはいえ、おかげさまで大学最後の冬休みはこの一夜を境に生活リズムが見事に崩れてしまった。


みんなも夜職をするときは、しっかりと業務を割り切るんだよ。


お兄さんとの約束だ。


以上、夜職レポートでした。

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クリスマスイブの夜を歌舞伎町で過ごした話 名▓し @nezumico

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