〜深淵の大魔導師、リベルタさんは自由に暮らしたい〜

柚亜紫翼

第1話 - しんえんのだいまどうし -

それは遠い昔の出来事・・・お家の書棚で偶然見つけた大きな古い本、中を開いて魔力を通したら本から黒い煙が吹き出しました。


ずももももっ・・・


「わぁ・・・」


ももも・・・



「ククク・・・我が名はアーク・マダヨ、魔界の深淵に棲む使徒である・・・我を召喚したのは貴様か小娘?」


「・・・」


「我と契約すれば願いを何でも一つ叶えてやろう・・・但し貴様の魂と引き換えにだがな」


「魂?」


「そう、魂だ、だが魂は嫌だと我儘を言う契約者が多くての、代わりに身体の一部でもよいぞ」


「願いは・・・何でもいいの?」


「金、地位、名声・・・貴様が望むものをくれてやろう」


「僕は、膨大な魔力が欲しいです・・・」


「うむ、我の力なら貴様は誰よりも強い魔力を得、永遠の命を手に入れるだろう」


「僕は魔導士になりたいの・・・」


「そうか・・・では我に差し出す代償は何がいい・・・魂か?」


「うーん、魂は嫌だなぁ・・・魔法陣を描くのに手は必要だし・・・足が無いと旅が出来ない、目が見えないのは不便だなぁ・・・」


「最近の若い奴は皆そう言って代償を出し渋るのだ・・・貴様の前に我を召喚した者は髪の毛と抜かしおった」


「髪かぁ・・・でもハゲはやだなぁ、お父様やお母様も驚くだろうし・・・身体の一部なら何でもいいの?」


「よいぞ、切断面は傷が残らぬよう綺麗にしておいてやるから安心せよ」


「それなら・・・おちんちん!」


「あ?」


「おちんちん!」


「一つ、聞いてよいか?」


「いいよ」


「貴様、男だったのか!」


「うん、見る?」


「・・・見せなくてもよい」


「遠慮しないで・・・」


ごそごそ・・・


「見せなくてもよいと言っている!」


「そう・・・」








こうして僕は誰よりも強い魔力と永遠の命を手に入れたのです、そして長い年月が経ち、人々からは深淵の大魔導師と呼ばれるようになりました。


「騒ぎが大きくなり過ぎたな」


「僕のせいじゃないよ・・・この街好きだったのに」


「次は何処の街に行くのだ?」


「うーん、オースター帝国はもう飽きたから・・・超大国ローゼリアなんてどう?」


「よかろう、だが貴様を利用して金を手にしていたオースターの貴族どもは黙って国から逃がさぬだろう」


「今この世界に僕を止められる人間なんて居ないよ、念の為に髪を切って・・・男の格好しようかな、それなら面倒な奴らも近寄って来ないだろうし」


「ダメだ、髪は切るでない!」


「えぇ・・・何で?」


「我は貴様の長く美しい黒髪が好きなのだ」


「そう・・・じゃぁせめて服の中に隠そうか」


僕は帽子を取り金糸で刺繍された魔導士のローブを脱いで髪を束ねます、ふわりと良い香りが漂うのはローゼリア王国製の高級石鹸で毎日お手入れしてるから。


黒い高級ローブの下は白のブラウスに黒の膝下まであるスカート、革製の編み上げロングブーツ・・・ぱっと見少しお金持ちの魔導師か魔法職のハンターに見えるかな。


10代前半くらいの年齢で成長が止まってるけれど実は今年で384歳・・・。


「あ、乗合馬車が来たみたいだから・・・行こうかアーク」


僕は肩に乗っている黒い小鳥の頭を軽く撫でました。


これから行こうとしているローゼリアはこの大陸最大の国、何度か観光した事があるけど街も大きくてお店も沢山、着いたら拠点になるお家を買ってお買い物をしよう。


「楽しい事がいっぱいあるといいなぁ」


僕の名前はリべルタ・ヴィラ・・・本名はヴェルタ・ヴィーラー、元々は下級貴族家の次男でした。


ラングレー王国で大魔導師の称号を貰ったのだけど、色々と問題を起こした後(僕のせいじゃない!)、今は身分を隠して世界中を気ままに旅する魔導士です。

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〜深淵の大魔導師、リベルタさんは自由に暮らしたい〜 柚亜紫翼 @hkh

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