四がアップされてから四日ほどの間に閲覧数は伸びた。そのほとんどは一の頃から見ている者達で、おかっぱの子供がどのタイミングから映り込んでいるのかなどを確認したり、丁寧に潰されているとはいえ、枝葉などから地方の特定が出来ないかと細かく見分しているからだった。

 閲覧数が伸びればこれまで見ていなかったもの達の目にも止まる。その中の幾人かが、コメント欄に「壊していいんだ」「自分も壊したい」などとコメントを残した。コメントした内のほとんどは、「壊していいんだ(やらないけど)」「自分も壊したい(やれないけど)」であって、問題はないだろう。ただ、その中に、本心でありそうな子供がちらほらといそうなのが、問題であった。

 だからそれらのコメントが散見され、それに初期から見ていたのであろう大人たちが止めた方がいいと返事をし。しかしアカウント主は沈黙を貫いて、五日。

 五、とか書かれた動画がアップされた。


 部屋である。

 カーテンが閉め切られ、暗い。電灯もついていないのだろう。暗く加工されているわけではなく、本当に暗い。カーテンの外から光が入り込んできていない。今は夜なのか、日が暮れた後なのか、陽が昇る前なのか、曇りの日中なのか。それらの情報は得られない。

 ノイズが走る。じ、じ、と、ゆっくりと数度に分けて、丁寧にノイズが走った。

 ベランダだろう、カーテンがしっかりと閉じられている。カーテンの上からも、下からも、脇からも。採光はない。そのカーテン前には丸テーブル。暗くてよく分からないが、畳敷きの部屋なのか、ベッドは見当たらない。

 鴨居には、直にハンガーが掛けられている。服が吊るされているものと、吊るされていないもの。

 それから。それから。

 床に、人が倒れ伏している。

 うつ伏せなのだろう。顔は見えない。腕や足は変な方向にねじれている。しかし血は出ていない。確かに画面は暗いが、そういう、血の池のような、エフェクトはかけられていなかった。

 音はない。そういえば冒頭からずっと、音は流れていない。

 まるで静止画のようなその部屋が、ただ映し出されているだけだった。

 少しずつ、少しずつ。

 カメラが引いていく。男に寄っていくわけではなく、男から引いていく。

 部屋を出て、板の間と、小さなキッチンを通り抜けて。

 ドアが閉まって、動画は終わった。


 正確には閉まったドアの所に大きく、注意書きが出た。

 曰く、この動画はフィクションであること。祠を破壊してはならないこと。それがあなたの持ち物でない限り、他の誰かの物であること。他者が所有するものを壊していい訳がないこと。

 この動画はフィクションであるが、この国において祠は神様のお家であること。誰だって家が壊されたら悲しいし腹が立つ。

 腹が立った神様は、きっと、人間を許さないだろう。


 注意書きはそう結んで、動画は今度こそ本当に、終わった。

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K9udrMHi 稲葉 すず @XetNsh

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