だん@度胸

前回のあらすじ!

 不良にあこがれ留学してきたお姫様と合コンに挑むれんちゃん。だが、合コンの相手は超魔王や勇者(笑)でテンションバリ下り状態に。爆弾処理をするれんちゃんに救いの手は延ばされ、有名大学生と高偏差値高校生のおかげで盛り上がり、お姫様もモンスターを動物に変える芸を披露。合コン後、お姫様は彼氏を見つけたが、処理できなかった爆弾として、(笑)が残ったのだった。

―――――


 悲報から始まったホームルームの後。

 私ことだんちゃんは、元勇者(笑)のもとに群がる不良どもを眺めていた。


「おい、どこのもんだコラ」

「なんて呼ばれてたんだコラ」

「なんか悪いこと自慢してみろコラ」


 語尾がコラで統一されるのが実にバカっぽくて不良らしい。

 不良どもに囲まれた元勇者(笑)は、見事にビビっている。

 まさに猛獣の中に放り込まれた兎状態。


(うーん、助けてあげたほうがいいのかなぁ?)

〈は? なんでお姉ちゃんが助けるのよ?〉

(だって、ほら、あの(笑)くんが来たのって、一応、私がきっかけみたいだし)


 変なところで律儀なお姉ちゃんである。

 そういえば、ひめちゃんがゲームから出てきた時も、「あっち(異世界)」へ帰そうとしていた。

 結局、ひめちゃんは勝手に「こっち」へ戻って来て合コンに走ったのだが。

 私としてはもう放っておいた方がいいと思う。

 私たちが元に戻れば、異世界とのつながりとやらも切れるだろう、たぶん。


〈だいたい、嫌なら自分で異世界とやらに帰るんじゃないの?

 アイツ、なんか変な魔法使える設定なんでしょ?〉

(うーん、でもやっぱり気になるし、オタ部の勧誘ってことで、声をかけてみよう)


 不良の群れへ平気で歩き出そうとするお姉ちゃん。

 が、その前に教室の扉が開いた。

 入ってきたのは不良A。


「おい! 何ビビってんだテメェ!」

「はっ! はい! ごめんなさい!」

「ごめんなさい、じゃねぇ! そこはビビってねぇ! だ!」

「は! はい! ごめんなさい! ビビってねぇです!」

「はー、お前、ほんとお前、ちょっとこっち来い!」


 そして、(笑)を連れて去っていった。

 そういえば、さっちゃんも(笑)の転校を不良Aから聞いたって言ってたっけ?


〈あの合コンの後、仲良くなったのかな?〉

(そうっぽいね。それより、面白そうだし追いかけてみよう)

〈あ、ちょっと?〉


 止める間もない。

 お姉ちゃん(と私)は不良Aを追って、教室を後にした。



 ―――――☆



 たどり着いたのは、オタ部の部室だった。

 扉越しに怒鳴り声が響いている。


「おいテメェ、何やってんだ!」

「は! はい! ごめんなさい!」

「ごめんなさい、じゃねぇ!

 不良は謝らない! 謝るのは悪いことした時だけだ!」

「は! はい! ごめんなさい!

 不良は謝らない! 謝るのは悪いことした時だけ!」

「だから! ごめんなさいはいらねぇ!

 不良は謝らない! 謝るのは悪いことした時だけ!」

「はいっ!

 不良は謝らない! 謝るのは悪いことした時だけ!」


(おお、すごい、だらけるだけのオタ部が、体育会系のノリに!)

〈ちょっと感動するトコずれてない?〉


 ワクワクしながら、しかしお姉ちゃんに扉を開く様子はない。

 どうやら、このまま遠くから観察する方向で行くようだ。


「よし! じゃあまず、最初の目標は他校への殴り込みだ!

 つーわけで、これからお前には引きこもりの不良から殴り込みができる不良になってもらう!」

「こ、これからですか? あの、授業とかは?」

「あ? いいんだよそんなもんは!

 不良は授業なんて受けない! 受けるのは体調不良になった時だけだ!」

「は! はい!

 不良は授業なんて受けない! 受けるのは体調不良になった時だけ!」


(おお、すごい! 引きこもりを脱出しようとするなんて!)

〈だから、感動するトコずれてない?〉


 おなじ引きこもり同士、何か通じるものがあるんだろう。

 ぜひともお姉ちゃんも引きこもりを脱出……はしなくていいや。

 余計なことをせず、そのまま引きこもっていてもらいたい。


「いいか! 殴り込みに行くのに喧嘩の強さはいらねぇ!

 不良は度胸だ! 度胸があれば何でもできる!」

「はい! 不良は度胸! 度胸があれば何でもできる!」

「よし! じゃあ! 度胸を付けるため! まずは授業受けに行ってこい!」

「え? 授業受けるんですか!? 俺不良ですけど?」

「そうだ!

 センコーが一生懸命授業している真っ最中に!

 教室の前の扉から堂々と入って!

 椅子にふんぞり返ってこい!」


(おお! これは中々鬼畜な難易度!)

〈感動してないで、さっさと離れたら? 二人とも出てくるわよ?〉

(ふふん。甘いよだんちゃん。私には魔法があるんだから!)

〈え?ちょっと待ちなさ……!〉


 止める間もない。

 さんざん失敗したにもかかわらず、平気で魔法を使うお姉ちゃん。

 扉を開けて出てきた不良Aと(笑)は、お姉ちゃんを前にしても何も反応することなく、教室へと向かっていった。


(これぞ、透明化の魔法!)

〈これぞ、透明化の魔法! じゃないわよ!

 またなんか変なこと起きないでしょうね!?〉

(もう、だんちゃん、ちょっと心配しすぎだよ?

 こういう分かりやすいのは大丈夫だって。

 それに、せっかく練習する機会なんだし)


 ああ、練習したかったんだ。

 まあ、相手が(笑)だしいいか。

 変なことが起こっても、勇者パワーとご都合主義で何とかするだろう、たぶん。


「よし、じゃあ気張っていけ」

「押忍!」


 納得しいているうちに、教室前。

 (笑)は不良Aと無駄に熱血な何かを交わした後、勢いよく扉を開いた。

 もちろん、底辺高の先生はその程度ではうろたえない。

「えーじゃあ、次のプリントを見てください。ここは――」

 と、(笑)を完全に無視して、誰も聞いていない授業を続ける。


 ちょっと挙動不審になりながら、頑張って大股で自分の席へ向かう(笑)。

 が、そこへ野球ボールが飛んできた。

 慌ててかわす(笑)。


 そのかわしたボールを、後ろで先生が畳んだ傘で打ち返した。

 打ち返されたボールが、盛大に(笑)の後頭部に突き刺さる。

 気合で踏み止まる(笑)。

 何事もなく傘を広げながら授業を続ける先生。


 そこへ容赦なく野球で遊んでいた不良の一団から「おいちょっとそのボール拾ってくんね?」と声がかかる。

 涙目になりながらボールを拾って投げる(笑)。

 なぜか金属バットで打ち返す不良球団。

 顔面にボールを受ける(笑)。

 不良球団は更に容赦なく「ヤベ、勢いで打ち返しちまったわ」「馬鹿じゃねぇの」「おーい、もっかい拾ってくんね?」などと盛り上がる。

 今度は直接ボールを手渡す(笑)。

「おう、助かったわ! これお礼な!」という声とともに、不良球団からお菓子やらカップ麺やらダンベルやらを渡される(笑)。


 両手いっぱいにお礼を抱えながら、今度こそ自分の席へ戻る(笑)。

 一生懸命お礼の山を鞄に詰め込む(笑)。

 何とか座りなおして、机の上に置いてあったプリントに向き合う(笑)。

 が、不良Aの言葉を思い出したのか、慌てて足を広げてふんぞり返る(笑)。


 もちろん誰も突っ込まない。


 むなしく進む授業を、ふんぞり返ったままの姿勢で受け続ける(笑)。

 疲れてきたのか、プルプル小刻みに震え始める(笑)。


「あー、それでは、授業はここまでとする」


 そうこうしているうちに、授業が終わってしまった。

 チャイムと共に出ていく先生。

 律儀にもふんぞり返り続ける(笑)。

 後ろからぶん殴る不良A。


「痛い!? 何するんすか!?」

「何するんすか!? じゃねぇ!? 何やってんだテメェ!」

「ええっと、授業を受けてました!」

「違ぇ! お前がやってんのは! 度胸を付ける特訓だ!

 ふんぞり返って授業受けるだけじゃ意味がねぇ!

 いいか!

 もう一度言うが!

 お前がやってんのは!

 度 胸 付 け る 訓 練 だ !!」

「はい!

 俺がやってるのは!

 度 胸 付 け る 訓 練 で す !!」


 叫ぶ二人。

 なぜか教室から拍手が沸き上がった。


「おし、じゃあ俺たちが手伝ってやるよコラ」

「これからお前は度胸(笑)だコラ」

「つーわけで、なんか悪いことしてこいコラ」


 そしてあっという間に不良に囲まれる(笑)。

 そのまま、どこぞへ連行されていく。


(ねえ、だんちゃん、不良さんたち、どこ行くか分かる?)

〈分かるわけないでしょ? 何するかわかんないから不良なんだから〉

(うん、じゃあ、追いかけてみよう)


 あ、やっぱり追いかけるんだ。

 もはや諦めた私は、何も言わずに、透明なまま走り出すお姉ちゃんを眺めることにした。



 ―――――☆



 不良の一団が向かったのは、なぜか学校の裏山だった。

 スマホをいじりながら歩く不良Aを先頭に、ぞろぞろと山を登る不良たち。

 その後ろを歩きながら、首をかしげるお姉ちゃん。


(うーん、みんなどこ行くんだろ? また神社かな?)

〈さあ? さっき悪いことしてこいとか言ってたから、何かするんじゃない?〉

(何かって?)

〈さあ? 落書きとか、集団徘徊とか?〉

(よし、そんなことしたら、お姉ちゃんが責任をもって魔法で止めてあげよう!)

〈練習もほどほどにしときなさいよ?〉


 そんな会話を脳内でかわしているうちに、不良の一団は「不良A参上!」と落書きされた看板の前で止まった。

 不良Aが看板の前で叫ぶ。


「よし! これから第一回! (笑)の歓迎会兼度胸試し大会を始める!」

「「「「うぉおおおお!」」」」


 響き渡る不良の歓声。いつの間にか、(笑)の度胸付ける訓練は歓迎会兼度胸試し大会に変わったらしい。


「あの、とりあえず叫んでみたんすけど……」

「度胸試しってなにすんだコラ」

「なんでわざわざ山なんか上ったんだコラ」

「ちゃんと許可とってんのかコラ」

(そうそう、ホントに悪いことだと止めるからね?)


 上から、疑問の声を上げる(笑)、不良ども、お姉ちゃんの順である。

 不良Aはうなずきながら答えていく。


「おう、とりあえず叫べたのは成長だ、喜べ(笑)!

 何するかっつーと、この先にオープン前のサファリがあるから、そこに突入だ!

 それから許可の方は安心しろ!

 経営者がちょーさんで、せっちゃんの遊び相手だから、OKとってもらった」


 ああ、あの後、超魔王って動物園始めたんだ。

 動物たちは責任をもって何とかするとか言ってたけど、こういうことだったのね?


 一人納得しているうちに、送迎バスが来た。

 乗り込む不良たち。

 出発したバスを走って追いかけるお姉ちゃん。


〈あ、魔法で追いかけるんじゃないんだ〉

(もう、だんちゃん、あれ、バスはバスでもマイクロバスだよ?

 いくら透明だからって身体が当たったりしたらバレちゃうじゃない!

 サファリの場所も分かんないから、瞬間移動するわけにもいかないし!)


 文句を言いながら、山道を駆け上がる。

 さすがステカンストのゲームアバター。

 バスの後を追いかけても、まったく息が切れない。

 あっという間に、開園前の動物園に着いた。

 迎えにできたのはいつぞやの超魔王とモンスター。


「うむ、よく来た。歓迎しよう」

「……!!(手を振って歓迎している)」


「あ、どーもよろしくッス!」

「よろしくお願いしまッス!」

「ッス!」

「……」


 律儀に挨拶を返す不良たち。

 挨拶は大事。

 不良の鉄則だ。

 が、(笑)は超魔王に抵抗があるのか、黙ったまま。

 当然、怒られる。


「おい、お前も挨拶しろよコラ!」

「イテッ! よ、よろしく……お願いします」

「うむ、よく来た!」


 小突かれてようやく挨拶する(笑)にどこか満足そうにうなずく超魔王。

 悔しそうな(笑)を置いて、話は進む。


「話は聞いておる!

 なんでも、家に帰ろうとしない(笑)を不良A殿が説得して!

 家に帰ったら帰ったで、母親に泣かれて!

 そこを、不良A殿が間を取り持って!

 (笑)は高校の再デビューを決意したとか!

 きっと、素晴らしく熱いやり取りがあったことだろう!」

「!!(私、感動しました、という感じで涙を流しながら空を見上げている!)」


 あ、そういう流れだったんだ。

 高校再デビューはいいが、それが底辺校で不良だなんてお母さんが泣くぞ?


(だんちゃん?

 だんちゃんも底辺校でギャルやってるよね?)


 何か言っているお姉ちゃんを置いて、動物園に入っていく一行。

 超魔王が止まったのは、うさぎ小屋の前だった。


「まずは初級編! 兎さんに餌をあげてみようの回だ」

「!!!(兎さんカワイイ、と言うかのように飛び跳ねている)」


「ええっと、兎さんっすか?」

「あの、俺ら度胸試しに来たんすけど?」

「大丈夫っすか?」

「おい真面目にやれよ」


 抗議する不良に盛り上がるお姉ちゃん。

 ちなみに最後のは(笑)で、失礼なこと言うな、と不良Aにぶん殴られている。


「安心せよ。これは度胸試しの準備のようなものだ。

 まあ、騙されたと思って、まずは檻に入って、この乾燥人参を差し出しがいい」


 人参を渡される(笑)。

 不承不承という体で受け取り、檻に入る(笑)。

 一斉にうさぎに飛びかかられる(笑)。

 指をかじられ、腹に蹴りを入れられ、顔面に○をされる(笑)。

 悲鳴を上げて檻から転がり出る(笑)。


「なに兎に負けてんだコラ」

「のんきに転がってんじゃねぇぞコラ」

「もっぺん入ってこいコラ」


 不良に殴る蹴るの暴行を受ける(笑)。

 再び檻に放り込まれる(笑)。

 またも兎から暴行を受け泣きながら転がり出る(笑)。

 再び不良にボコされる(笑)。


 以下、無限ループである。

 モンスターが何か言いたそうに手を挙げた。


「?(止めなくていいんですか、というように(笑)を指さしている)」

「ふむ。確かに怪我をしては危険か?」


(あ、大丈夫だよ? 私が練習のついでにこっそり治すから)


 そこへ、お姉ちゃんが回復魔法を使う。


「いや、よく見れば、さほど問題なさそうだな。

 流石は元勇者。もう少し続けよう」


 再び檻に放り込まれる(笑)。

 またも兎から暴行を受け泣きながら転がり出る(笑)。

 再び不良にボコされる(笑)。

 回復魔法で強制回復される(笑)。


 お姉ちゃんもなかなか酷いことをする。いいぞもっとやれ。

 が、数十分もすれば飽きたのか、不良Aが超魔王へ声をかけた。


「あー、ちょーさん、なんかコイツこれ以上やっても無駄そうなんすけど」

「ふむ。では次に進むとしよう。中級編、肉食獣エリアへ突入だ!」


 超魔王が指さした先には、「この先! 猛獣注意!」の看板が見えるエリア。

 盛り上がる不良たち。


「おし行くぞコラ!」

「よし! 今度こそ度胸見せろコラ!」

「兎に負けっぱなしで終わるんじゃねえぞコラ!」


 不良に引きずられていく(笑)。そのままサファリ用の車を通り過ぎ、餌満載の業務用小型トラックの荷台に放り込まれる。

 不良たちは、超魔王と一緒にトラックに乗り込む。

 トラックを走って追いかけるお姉ちゃん。

 たどり着いたのは草原エリア。

 トラックから出て荷台の餌と(笑)を放り出す超魔王と不良たち。

 当然のごとく殺到する猛獣たち。

 当たり前のように猛獣に餌やりを始める超魔王と不良たちを置いて、悲鳴を上げて逃げ出す(笑)。


「おい逃んなコラ」

「ちゃんと餌やり手伝えコラ」

「寅蔵の面倒見るのと同じだぞコラ」


(ねえだんちゃん? 寅蔵って?)

〈学校で飼ってる土佐犬の事ね〉

(そっか……)


 なにかちょっと残念そうなお姉ちゃんを置いて、事態は進む。

(笑)が逃げた方を見て、超魔王が餌やりの手を止めたのだ。


「いかんな。むこうはアナコンダやマムシもいる本格的に危険なエリアだ。

 あれは上級編であるからな。少し様子を見てくる。

 もんちゃん、皆の様子を見ておくのだぞ?」

「!!(了解しました! というかのように敬礼している)」


「すみませんッス!」

「お願いします!」

「アイツ、助けてやってください!」


 不良に声援を受けながら、(笑)を追いかける超魔王。

 お姉ちゃんもそれに続く。

 が、超魔王は見失ったのか森の中で立ち往生。


(仕方ない、私が「探し出す魔法」で何とかしてあげよう)


 何か怪しげな魔法を使うと、どういうわけか(笑)の居場所が思い浮かぶ。

 お姉ちゃんはその方向の木の枝を折った。

 不自然な音に歩き出す超魔王。

 そうして進む先に森の中で倒れた(笑)が。


「大丈夫か? 蛇に噛まれたりしてないだろうな?」

「だ、大丈夫だ! これはただ木の根に足を取られて転んだだけだ! だいたい! 俺には毒無効のスキルがある!」


 手を振り払って起き上がる(笑)。

 超魔王はため息をついて応急セットを取り出した。


「そんなことで強気になるな。

 毒は効かなくとも小さな怪我くらいするであろう。

 そして、小さな怪我でも手当てをするのがこの国では普通だろう。

 少なくとも、お前の母親はケガをすれば悲しむだろうよ」

「……す、すまない」


 謝りながら消毒液とばんそうこうを受け取る(笑)。

 超魔王はうなずきながら続けた。


「礼には及ばん。そも、今回の件は貴様の母親から頼まれてな。

 長年離れた我が子が帰って来た。

 何とか社会復帰させたいが、今から通わせてやれるのは底辺高くらいしかない。

 心配だから、息子を助けてくれないか、とな」


 背後からアナコンダに組み付かれながら、超魔王の言葉に俯く(笑)。

 超魔王は目を反らしながら続けた。


「そこで提案だ。

 このサファリではオープニングスタッフのバイトを募集しているのだが、ここで働く気はないか? 貴様の学校の生徒をはじめ、高校生も何人か登用している。懇切丁寧な研修、社員登用制度あり、時給も相場の倍だ。貴様も、動物やお客様との触れ合いを通じ、多少はマシになるだろうよ」

「俺に、で、きるだ、だろうか?」


 蛇に締め上げられながら、苦しそうに答える(笑)。

 超魔王はあくまで現実を見ないようにしながら続けた。


「不良A殿も言っていただろう。度胸をつけろ、と。

 ワシが思うに、度胸とは恐れず実行する力だ。

 まずは恐れずやってみることだな」

「わかった。よろしく頼む、いや、よろしくお願いします!」


 手を差し出す超魔王。

 その手を取る(笑)。

 空気を読んで、そっと魔法でアナコンダを引き離すお姉ちゃん。


「あと、母さんの相談にも乗ってもらったみたいで、ありがとうございます!」

「それも、礼には及ばん。

 元々、貴様の母親とはしーちゃんに教えてもらったマチアプで出会ったからな。

 なかなか若い母君であるな。積極的に男との出会いを――」

「……やっぱ俺、異世界帰るわ」


 魔法でアナコンダをけしかけるお姉ちゃん。

 逃げ出す超魔王と(笑)。


(だんちゃん、私たちも帰ろっか)

〈そうね。魔法の練習も十分できたみたいだし〉


 魔法の効果なのだろう、十匹、百匹と増えるアナコンダに追いかけられる超魔王と(笑)を置いて、私たちはサファリを後にした。



 ―――――☆



 後日。

 学校のホームルームは、またも悲報から始まった。


「えー、(笑)だが、昨日付で転校することになった。

 なんでも、留学するとのことだ」


 いっせいに上がる不満の声。

 そんな中、さっちゃんが話しかけてきた。


「ねえねえ、だんちゃん、知ってる?」

「知らなーい」

「もうすぐ、近くにサファリができるらしいよ?」

「あ、それは知ってる」

「じゃ、そこでちょーさんともんちゃんが働いてるのは?」

「うん、それも知ってる。ゴメンね?」

「じゃあじゃあ、ちょーさんと(笑)のお母さんが再婚するっていうのは?」

「それは知りたくなかったかな?」


次回予告!

 すっかり不良校になじんだれんちゃんはお姫様や(笑)のせいで受けられなかった授業を受ける。先生から与えられた課題を無事クリアし、カップ麺を食べるれんちゃんだったが、バッファローに吹き飛ばされるのだった。

※ 次回は、1/10(金)投稿予定です。

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れん@だん すらなりとな @roulusu

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