れん@カラコン
前回のあらすじ!
パソコンが破壊されたのをきっかけに現れた不審者ことお姫様を連れ、不良たちとともに学校の裏山へ登るれんちゃん。山頂にある神社で怪しい儀式を行い、お姫様を元の異世界へ返そうとする。最後に不良へ告白するお姫様だったが、不良からはカノジョいるからと断られる。失意に沈むお姫様だったが、さっちゃんからカレシ紹介するからと見送られ、異世界に旅立つのだった。なお、不良は警察に通報され、お姫様は異世界から戻ってきた。
―――――
「みなさーん! お久しぶりですわ!」
かわいい。
堂々声を上げながらオタ部の部室の扉を開けたお姫様に、私ことれんちゃんとだんちゃん、さっちゃんの心の声が重なった。
〈さっちゃんはどうか知らないけど、私もそこに入れんのやめてくんない?〉
(え? でも、かわいくない?)
誰もいない部室を、くるくる回って見渡すお姫様。
かわいい。
が、だんちゃんからはため息が返ってきた。
なぜ?
〈なぜって、当たり前でしょ?
何のために一時間目の授業サボってここまで来たと思ってんの?〉
もちろん、お姫様から事情聴取して、元の世界に帰すためだ。
私とだんちゃんが元に戻った時、存在が消滅したり、この世界に取り残されたりするなんて後味が悪すぎる。
ちなみに、さっちゃんは面白そうだからと一緒についてきた。
「あの、さっちゃん様? 誰もいらっしゃらないようですが?」
「あー、うん、そりゃ、まだ一時間目だしね?」
お姫様に続いて部室に入ったさっちゃんは、戸惑うお姫様にやる気なさそうに答えると、椅子を引っ張り出して、お行儀悪く脚を広げて座りながら、部室に転がっていたマンガを手に読み始めた。
面白そう、というより授業がつまんないからこっちに来ただけのようだ。
「もう、さっちゃん、そんな座り方したら、いろいろ見えちゃうよ?」
「いーのよ、男どもがいないんだから。
ほら、だんちゃんもお姫様も、適当に座って」
困っているお姫様のために、私は椅子を二つ引っ張って来た。
片方に座って、お姫様の方を見ながら、もう片方の椅子をぽんぽんと叩く。
お姫様は戸惑いがちに椅子に座った。
きっちり脚を閉じて、制服のスカートを抑えているあたり、ちょっとさっちゃんを意識してるみたいだ。
かわいい。
〈はぁ、さっさと話し進めなさいよ〉
だんちゃんに怒られてしまった。
愛でるのをやめて、問いかける私。
「えっと、お姫様は、やっぱり不良さんと会うために戻ってきたの?」
「いえ、それもあるのですが、あの、その……」
恥ずかしそうにさっちゃんの方へ目を向けるお姫様。
さっちゃんはマンガから目を上げて聞き返した。
「んー? どうしたん? 言ってみ?」
「ええ、その、あの後、我が国と魔族は公正な話し合いのうえ、安全保障条約を結び、国境も定めて正式に隣国として付き合うことになりまして――」
「ごめーん、眠くなってきたからやっぱパス」
「えぇ……?」
すぐにマンガに目を落とすさっちゃん。
困るお姫様。
かわいい。
〈まあ、そうなるわね。ギャルはちょっと難しい単語が出てきたらすぐ諦める生き物だから、お姫様は諦めて〉
(だんちゃん、ここで諦めたら困るの私たちだよ?)
だんちゃんは納得しているが、このまま終わるわけにもいかない。
何とかして、話を続けようと口を開く。
今の私は潤滑油です。
「あー、要は、平和になったんでしょ? 良かったね?
それで、どうしてこっちに?」
「ええ! それでですね!
ワタクシ、このままだと魔族と政略結婚することになりますので!
さっちゃん様にカレシさんを紹介していただこうと――」
「よし任せなさい! このさっちゃん様が何とかしてあげよう!」
お姫様の話の途中で、いきなり立ち上がったさっちゃん。
そのまま、マンガを放り捨てると、スマホをすさまじい勢いでいじり始めた。
困るお姫様。
「ええ……?」
「まあまあ、さっちゃんに任せとけばきっと大丈夫だよ?」
(……大丈夫だよね、だんちゃん?)
〈そこで不安になるくらいなら、適当に大丈夫とかいうのやめなさいよ。
まあ、大丈夫かどうかは合コンの結果次第じゃない?〉
あ、合コンする気なんだ。
知らないうちに合コンする流れになっていることに驚く間もなく、さっちゃんがスマホから顔を上げた。
「ひめちゃん、好みのタイプとかいる?」
「こ、好みのタイプですか? それはその、やはり勇者様が……」
「勇者って、前、なんか出てきた勇者(笑)みたいなの?」
「いえ、あのような偽物ではなく、以前の不良様のような方のことで――」
「あー、うん、つまり勇者そのものじゃなくて、肩書ね。
ま、ステータスは大事よね。
おけおけ。任せて」
そしてすぐにスマホをいじるさっちゃん。
と思ったら、今度は電話をかけ始めるた。
「あ、せっちゃん?
今日合コンするんだけど、呼べる男っていない? ステ重視で。
とりあえずマチアプでテキトーに一人釣ったんだけど。
え? こっち? 今は三人」
と思ったら、またスマホをいじり始めた。
が、すぐに顔を上げる。
「じゃ、放課後になったら、カラコン行くから」
(からこんって?)
〈カラオケ合コン。カラオケ行くよ~って意味ね〉
なるほど、私の知らない世界だ。
ひとり納得していると、お姫様がおずおずと手を上げた。
「そ、その、あの……不良様はいらっしゃらないんでしょうか?」
「んー? あいつら?
彼女いるから望み薄だと思うけど?
一応、声かけとく?」
おずおずとうなずくお姫様。
かわいい。
(よし! 私も可愛いお姫様のために頑張ってあげよう!
ということで、だんちゃん! 合コンのレクチャーよろしく!)
〈あー、それは大丈夫。だって――〉
「じゃ、ひめちゃん、合コンのお勉強しよっか?」
「は、はい! さっちゃん様! よろしくお願いします!」
さっちゃんによる合コン講習が始まった!
―――――☆
そして放課後。
授業をさぼってみっちり合コンの勉強をした私とお姫様は、さっちゃんと一緒にカラオケ店まで来ていた。
「ええっと、部屋に入ったら、まず席に着く前にお相手を観察して、それから……」
「はーい、ひめちゃん、そうやってマニュアルに頼るの禁止ね」
「きゃっ!? だ、大丈夫ですわ。高度な柔軟性をもって臨機応変に――」
不安なのか、勉強した内容を必死に繰り返すお姫様。
そこに抱き着くさっちゃん。
かわいい。
〈そういうお姉ちゃんは大丈夫?〉
(うーん? あんまり大丈夫くないかも?)
かくいう私も緊張していた。
流石リアル。ランダム要素満載かつ一定の攻略法がないなんて、とんでもない難イベントだ。これがゲームなら、これから戦闘が始まるんだなーとか、スチル付イベントだなーとか、いろいろ分かるのに。
〈ゲームでやったから大丈夫ってならなかったのは褒めてあげるわ〉
(もう、私、そこまでゲーマーじゃないよ?)
私は現実と創作物の違いが判る系のオタクなんだ。
そんな抗議の声を上げながら、さっちゃんとお姫様とカラオケ店に入る。
お店の人によると、もう相手は来ているらしい。
案内された部屋の前で、さっちゃんが扉に手をかける。
「じゃ、開けるよ~?」
「き、緊張の一瞬ですわ」
声に出すくらい緊張しまくりなお姫様。
かわいい。
おかげでこっちの緊張がほぐれた。
そして、さっちゃんが扉を開けた先には、一斉に立ち上がる三人が――
「え、ええっと、その、勇者(笑)です」
「わ、吾輩は超魔王で……」
「……」
いや、二人と一匹が、いた。
なにせ、相手は勇者(笑)と超魔王と、超魔王のお付きらしき人型モンスターだったのだから。
うなずくさっちゃん。
「うーん、これはTBS」
(だんちゃん、TBSって?)
〈
合コンが始まった時、相手メンバーがいまいちだった時に出てくる言葉ね〉
私の知らない世界だ。
だが、のんきに感心している場合でもない
なにせ、お姫様が抗議の声を上げたのだから。
「さっちゃん様! 私は、このような魔族となどと!」
「うん? ひめちゃん、帰る? もうちょっとで不良ども来るけど?」
「いえ、大丈夫です! 問題ありません!」
が、すぐに強くうなずくと、一番端の席に移った。
そしてすぐにスマホを取り出していじり始める。
さっちゃん直伝、余計な男は話しかけるなオーラだ!
ちなみに、スマホはこのカラオケ店に来るまでに買った。
戸籍とかは魔法で何とかしたらしい。
「じゃ、他のメンツが来るまで、テキトーに盛り上がっといて―」
そしてさっちゃんもお姫様の隣に座ると、スマホをいじり始めた。
なんだろう。
自然な動作なのに、お姫様以上に話しかけるなオーラが出ている。
私も戸惑いがちにさっちゃんの隣に座った。
男の子?達も慌てて座る。
「……」
そして広がる沈黙。
気まずい。
〈気まずい、じゃなくて! ほら! こうなった時はどうするか、さっちゃんに教えてもらったでしょ!〉
(そ、そうだった)
私はとりあえず不良さんたちが来るまでの時間を稼ごうと、とりあえず目の前のモンスターさんに話しかけた。
今の私は爆弾処理係です。
「ええっと、日本語、っていうか、言葉、話せる?」
「……!(目の前で手を交差させてバツを作っている)」
どうやら話せないらしい。
「そっかー。隣のちょーさんとはどうやって喋ってるの?」
「……!!(一生懸命手足を動かしている)」
どうやら頑張って身振り手振りで伝えているらしい。
「ふーん。大変だねー?
あ、何か飲む? おやつもあるよ?」
メニューを渡すと、何度も頭を下げるモンスターさん。
どうやら感謝しているらしい。
よく見ると泣いていた。
泣きながら注文している。
「あれ? 泣くほどうれしかった?」
「! ! (一生懸命うなずいている!)」
「そっかぁ。喋れないのにカラオケ連れて来られるくらいだもんねー?
職場がブラックだと大変だね?」
「! ! !(一生懸命うなずいている!!)」
そんな感じで盛り上がっていると、今度は隣から超魔王が話しかけてきた。
「あー、その、なにか誤解されたような気がするのだが、吾輩は随行を指示しておらんぞ?」
「あら? そうなんですか?」
「う、うむ。吾輩たちはそこの勇者(笑)に強引に連れてこられただけだからな。
職場がブラック、というのは、そ奴は今は勇者に調略されて王宮勤めだからであろう。人間の社会は通勤も大変で、朝早くから夜遅くまで働かなくてはならなかったり大変だからな」
異議を唱えたのは超魔王。
勇者(笑)に視線が集まる。
「い、いや、俺は、その……」
タジタジな勇者(笑)。
これはよくない。
せっかくのカラコンの空気が悪くなってしまう。
私はなんとか話を変えようとして、
「ごめーん! さっちゃん、遅くなっちゃった!」
「うぇーい! 男連れてきたよ?」
「きゃはは! すごーい! コスプレパーティみたーい」
さっちゃんの友達らしきギャル三人が入って来た。
ついで、そのギャルが呼んだであろう、男の子三人も入って来た。
「うぃーす」
「あ、お邪魔します」
「俺もコスプレしてこりゃよかったかな?」
この間の不良さんA(今回は一人だ)と、きっちり制服を着た真面目そうな他校の生徒、ラフな格好の大学生らしき男の人だ。
さっちゃんの「じゃ、席替えもかねてテキトーに座ってー」との声で、それぞれ好き勝手に移動していく。
「しーちゃんです!」
「すーちゃんです!」
「せっちゃんです!」
「あ、不良Aっす!」
「高偏差値生です!」
「有名大学生です!」
「うぇーい!」×たくさん
そして、短い自己紹介の後、乾杯。
すぐに、盛り上がり始めた。
「えー、おじさん、すごいコスプレじゃん?」
「う、うむ。これは闇の谷のドラゴンの骨で作った鎧で――」
「きゃはは! そんなのここに着て来てんの? うけるー!」
ギャル二人に挟まれる超魔王。
ちょっと嬉しそうだ。
「おお、こっちのコスプレもやべー」
「……!?(困惑して頭をかいている)」
「ねえねえ、喋れない設定まで再現してるとかスゴくない?」
不良Aとその彼女らしきギャルに遊ばれるモンスター。
ちょっと嬉しそうだ。
「ああ、貴女がひめちゃんさんですね?」
「よろしく」
「え、ええ、よ、よろしくお願いしますわ」
「感謝してよねー? このメンツ揃えるの頑張ったんだから。せっちゃんが」
なにかステータスをもってそうなイケメンに囲まれるお姫様に、それを見守るさっちゃん。
(うーん、まさに合コンって感じだね?)
〈ああ、うん、私たちを除けばね〉
「……」
そして私とだんちゃんは、勇者(笑)と向き合っていた。
会話はない。
〈さっきみたいに、何か話しかけてあげたら?〉
(うーん、でもあれは、「俺には異世界にもっといい女がいるし」とか考えてそうな顔だし)
うつむいてなにか一人の世界に入り込んでいる勇者(笑)。
オタクの私としては共感できる光景だ。
パーティにボッチが放り込まれたらこうなる。
私だってこうなる。
〈そんなオタクの理屈で合コンが台無しになったらどうするの?
ほら、ひめちゃん助けると思って!〉
(う、うん、そうだね。
ちょっと心が痛むけど、頑張って話しかけてみよう!)
「あの」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@!?」
奇声を上げて立ち上がる勇者(笑)。
うん、気持ちは分かる。
急に異性に話しかけられたら、ボッチはそうなる。
私だってそうなる。
が、一同からはいっせいに声が上がる。
「おお、今の必殺技っぽい?」
「勇者コスだしそうじゃね?」
「ねーねー、他になんかないの?」
そして一斉に絡み始める。
真っ赤になる勇者(笑)。
もちろん真っ赤になるだけで何もできない。
「え、あ、いや、その……」
〈あーあ、合コンで一番やっちゃいけない反応ね〉
(ちょっと、だんちゃん。ダメだよ温かい目で見守ってあげなきゃ)
私の心の中のフォローもむなしく、あっという間に冷めていく周囲の目。
誰も勇者(笑)に文句は言わないが、代わりに何事もなかったかのように勇者(笑)を放置してそれぞれ別個に盛り上がり始める。
「ちょーさんは何かできないの?」
「な、なに? 吾輩か? む、むう、モンスターを召喚するくらいなら……」
「え? そんなのできるの? やってヤッテ!」
ギャルにせがまれモンスターを召喚する超魔王。
出てきたのは、ぬいぐるみサイズの小さなドラゴン。
「キャーかわいい!」
「すごいすごい」
「これこれ、取り合うんでない。もっと出してやるから……」
一斉に盛り上がるギャル。
調子に乗って次々とモンスターを召喚する超魔王。
「ねえねえ、モンちゃんは何かできないの?」
「……!?(自分を指さして首をかしげている)」
「そうそう、モンスターだからモンちゃん。
ねえ、何かできないの?」
「あー、無茶ぶりだけど大丈夫か?」
無茶ぶりするギャルにフォローしようとする不良A。
が、モンちゃんは「大丈夫」というかのように立ち上がって、
「……!(なにか気合を入れるポーズ!)」
なんと分裂した!
モンちゃんが小さいモンちゃん×2になり、それがまた分裂してさらに小さいモンちゃん×4になり、
「えええ? すげえ! どうなってんだ?」
「ちょーさんの手品よりすごくない!?」
「む、ならば吾輩のとっておきを――」
次々と召喚されるモンスター。
次々と増えるモンちゃん。
「ひめちゃんはなんかできないの?」
「え? ワタクシですか!?」
それを見てお姫様に無茶ぶりするさっちゃん。
高偏差値生と有名大学生も「無理しなくても」などといいながら期待した視線を向ける。お姫様はちょっと困っている風だったが、真っ赤になったまま固まっている勇者と目が合って、何か決断したような顔になる。
(だんちゃん! あれはオタクを見て、「こうはなりたくない」「引きこもり卒業しよう」って目だよ!)
〈あーうん、お姉ちゃんも早く引きこもり卒業してね?〉
だんちゃんがなにか酷いことを言っているが、手を握り締めて気合を入れるお姫様を見てどうでもよくなった。
かわいい。
「で、では、僭越ながら……!
ワタクシ! 魔物使いの力がありますの!」
お姫様はレースのついた可愛いハンカチを取り出すと、近くにいた超魔王が呼び出したドラゴンに被せた。
そして、お姫様がハンカチを取り除くと、そこには、兎が一匹。
「ええ!? ひめちゃんすごい!」
「わーすごい! 可愛い!」
「え? 今のどうやったの!?」
一斉に盛り上がる一同。
お姫様はにっこり笑うと、次々とドラゴンや分裂したモンスターを可愛い動物に変えていった。ちょっと得意げだ。
かわいい。
〈かわいいのは良いけど、そろそろ帰る用意しといたほうがいいわね〉
(え? なんで?)
〈なんでって、そりゃ――〉
「学校の先生ですか! オタクの生徒が――」
「すみません、すぐに追い出しますので」
〈ほら、先生が怒鳴り込んでくるから〉
そりゃそうか。
きっと誰かが通報したんだろう
おとなしいモンスターと違い、動物たちは鳴き声を上げたりする。
カラオケ店で動物なんて、通報されても文句は言えない。
「さっちゃん、せんせー来たみたい」
「よーし、じゃ、撤退戦ね!」
「避難経路は確保済みだよー!」
すごい。みんな慣れてる。さすが底辺校。
私たちは立ち上がると、一斉に逃げ出した!
―――――☆
お店から離れて、近くの公園。
めいめいに固まりながら、いかにも合コンの後という雰囲気で集まっていた。
「あ、連絡着いたよ。
有名大学生が先生誤魔化して、お店にお金払ったって。
お店からは出禁くらったみたいだけど」
「んー、あそこ便利だったんだけどなー」
「す、すみません、ワタクシのせいで……」
「あはは、大丈夫だよ、店はなんていくらでもあるし」
お姫様を慰める、さっちゃんと高偏差値生。
「あれ? ちょーさんとモンちゃんは?」
「ああ、山の方に走ってった。
動物たちは責任をもって何とかするって言ってたな」
「面白い人だったね―?」
「私、今度パパ活誘ってみようかな?」
いつもの学校と同じように盛り上がる、不良Aとその彼女とギャルとたち。
(さっちゃんから教えてもらってたけど、合コンって後が大事なんだね?)
〈そ。こっからペアを探したりするんだけど、今回は探すまでもないわね?〉
だんちゃんの言葉通り、高偏差値生とお姫様をおいて、さっちゃんがこっちにやって来た。右手で私の手を取りながら、みんなに向かって左手を振る。
「じゃ、私はだんちゃんと帰るから、あとよろしく~」
「んー、じゃ、私たちも帰ろ?」
「そだねー、また明日ー」
ぞろぞろと解散していくギャルたち。
それを見送りながら、私とさっちゃんも帰路に就く。
「……」
「あー、お前も帰れば?
かーちゃんとか、待ってる人がいんだろ?」
不良Aに慰められている勇者(笑)を見ないようにしながら。
―――――☆
後日。
学校のホームルームは、先生が告げる悲報から始まった。
「えー、この間、転校してきたトーキテさんだが、昨日付で転校することになった。
転校先は高偏差値高校とのことだ」
いっせいに上がる悲鳴。
そんな中、さっちゃんが話しかけてきた。
「ねえねえ、だんちゃん、知ってる?」
「知らなーい」
「あの後、勇者(笑)って勇者廃業したらしいよ?」
「え? 廃業したって、どうなったの?」
「さあ? 私は不良Aに聞いただけだから……だんちゃんも分からない?
つーか勇者って廃業できるもんなの?」
「ん~? どうだろ?
最近は追放されたり魔王になったり、いろいろあるみたいだけど……」
首をかしげる私とさっちゃんだが、すぐに先生が連れてきた生徒を見て納得した。
「静 か に し ろ お 前 ら ぁ!
代わりに! 転校生がいるから! 紹介する!
次回予告!
転校生(笑)は、不良Aの舎弟となり、立派な不良となるべく修業を始める。感動した他の不良たちの協力を得て、(笑)はサファリパークへ挑む!
※ 次回は、1/8(水)投稿予定です。
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