第3話 山岳部の那須

おっとっと。もう足を上げるのも大変。何?わざわざ寝っ転がってしなくても、座ったままでもできる?……そこに気がつくほど賢くなって、じいちゃんは嬉しいぞ。ついに、わしのつま先が追い越されたか。良いことじゃ。つま先の大きさは命に関わるからな。なんでかって?そりゃ、見つかりやすさじゃ。


じいちゃんの友達にナスというやつがおってな、そいつは山岳部じゃったんじゃ。おぉ、もう辞書も引けるのか。すごいの。えらいの。そうそう、その漢字で合ってるぞ。その那須が冬山に登った時のことじゃ。もちろん冬だから雪は積もってるし、準備は万端にせにゃいかんし。万が一の時に備えてあらかじめ届け出ることも必要じゃ。結果的にはそれが良かったんじゃな。


那須が山に入ってから大雪になってしまった。天気予報?もちろん調べて行ったとも。ただ、その頃は今ほど当たらなくてな。雪山に閉じ込められて、食料もつき、テントも吹き飛ばされた。なるべく風の届かないところに避難していたようなんじゃが、あっと雪に覆われてしまったのじゃ。


吹雪が止んでみんなが捜索に出かけた時。白い雪の上にポツンと黒いのが見えたんじゃ。急いで駆けつけると那須の登山靴。慌てて掘り出されてなんとか助かった、というわけじゃ。ひっくり返ってても見つけられるように、つま先は大きい方が良いのがわかったかな?雪山に行かなきゃ良い?まぁ、そう言うでない。冬の山もいいもんだぞ?わしの足が元気になったら一緒に行こうか?それまでは、わしも元気にしていような。

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