つま先

つま先

ハラッハラッハラッ。

『降って来ましたね』

『はい。御兄様』

専属侍女として御仕えさせて頂いております御嬢様は、兄君（あにきみ）であらせられます帝国騎士（ライヒス・リッター）様が御通いになられていられます学校への入学を目指して試験勉強に励まれていられますが。本日は在校生であらせられる帝国騎士（ライヒス・リッター）様と共に、書店（ブーフ・ハンドリング）にて参考書を御買い求めになられましたが。帰り道に雪が降って来ました。

『御兄様』

『何ですか？』

帝国騎士（ライヒス・リッター）様と御嬢様の兄妹（けいまい）は、金髪（ブロンデス・ハール）と瑠璃之青（アツーア・ブラオ）の瞳をされていられます、絶世の美男子と美少女でもありますので。御嬢様に専属侍女として御仕えさせて頂いております私は、常日頃から心底よりの誇りを感じつつ、及（およ）ばず乍（なが）らも忠勤（ちゅうきん）に励（はげ）まさせて頂いております。

『御耳を拝借（はいしゃく）したく思いますわ。御兄様』

『解りました』

歩みを止められまして、妹君（いもうときみ）による御話に耳を傾けられています帝国騎士（ライヒス・リッター）様に対して。御嬢様がつま先を伸ばして耳元に口を当てて話される兄妹（けいまい）の御様子は、本当に仲睦まじく美しいと心底より強く感じます。

『目立たないようにするなら構いませんよ』

『有難う御座います。御兄様♪』

兄君（あにきみ）であらせられます、帝国騎士（ライヒス・リッター）様による御許しを得た御嬢様の笑顔は、本当に御美しくて専属侍女として御仕えさせて頂いております栄誉に、改めて喜びを感じます♪。

『貴女も来なさい』

『はい。御嬢様』

帝国騎士（ライヒス・リッター）様と御嬢様の後を、三歩下がり付き従っておりました私ですが。近付くように御命令を受けまして、御二方の直ぐ後ろに控えさせて頂きました。

『雪が降って来た事もあり、通りには私達だけしか居ません』

帝国騎士（ライヒス・リッター）様が、御美しい瑠璃之青（アツーア・ブラオ）の瞳にて、周囲を観察されてから話されますと。

『はい。御兄様。魔法障壁（マーギッシェ・バリエーレ）』

兄君（あにきみ）であらせられます帝国騎士（ライヒス・リッター）様と同じく、天から根元魔法の素質を授かりし選良（ディ・エリーテ）であらせられる女魔法使（マーギエリン）いの御嬢様が、不可視の魔法障壁（マーギッシェ・バリエーレ）を、雪除けとして私達の周囲に展開されました。

『見事ですね。貴女が合格して同じ学び舎で根元魔法を学べるようになるのが、兄として非常に楽しみです♪』

優しい笑顔にて妹君（いもうときみ）を御褒めあそばれた帝国騎士（ライヒス・リッター）様に対して、御嬢様も満面の笑みを御浮かべになられまして。

『有難う御座います御兄様。とても嬉しく思いますわ♪』

このように仲睦まじく御美しい兄妹（けいまい）に御仕えさせて頂ける私は、世界一幸せな侍女であると心底より思います♪。