マスターボード
「記憶障害というか…」
「まぁ、前世の事を覚えていないのは誰だってそうでしょう。転生魔法を使ったとしても、記憶を継承できた前例がないのですから」
転生魔法の使用された前例はあるのね…。
「…さてと…シルヴィからお話は聞いていると思いますが、ここは医務室です。私は医務室長のリスティアと申します。お見知りおきを、マスター」
「あぁ…おう」
「ここはマスター専用の医務室ですので、好きなように使っていただいて構いません」
「え?それじゃあ他の人達の医務室は…」
「ありません。我々は生物の枠を超越した生物ですので、生と死の概念がそもそも存在しません。たとえ傷ができてもすぐになくなるので、そもそも医務室の需要が無いのですよ」
(あぁ…確かに、シルヴィが首を刎ねられてもすぐに治っていたっけな…)
間違いなく、人間ならあれで致命傷だっただろう。
「…それじゃあ、結局…何なんだ?君らは…」
「そうですね…前世のマスターは、我々の事を怪異と呼称していました」
「怪異…」
伝承で伝えられている伝説の中にも、怪異が登場する物語はいくつも存在している。その中で、怪異はとても恐ろしく描かれていることが多い。
「それって…伝承とか伝説とかに出てくるあの…?」
「…恐らくは。…まぁ、国を4つや5つ消し飛ばせば伝承くらいには残りますか…」
「国を5つ…え?」
「…そういえば、シルヴィはどちらに?」
「え…あれ、本当だ。いなくなってる」
さっきまで隣に居たと思ったのにな…。
「…まあ良いです。それよりも、自室には行かれましたか?」
「いや…先に医務室に連れてこられたから…」
「左様でしたか。ではマスターの自室まで案内いたしますね。そちらで軽く問診もさせていただければ」
「あぁ…分かった」
リスティアの後ろに続いて、前世の俺の自室に向かう。
とても未来的な白い空間。これだけ広大な空間だというのに、使っているのはたったの5人と言うのが、なんとももったいない気がしてならない。
なんて事を考えている内に、俺の部屋に着いたらしい。
「こちらです」
そう言われ扉に手を掛けるが、開かない。どうやら鍵がかかっているらしい。
前世の俺もそんなに不用心ではなかったらしい。
〈〈
〈〈
〈
〈
〈
〈〈
〈
〈
〈〈
「…パスコードは…」
〈〈
…なんで思い出せたんだろうか。…良く分からないが取り敢えずこれでロックは解除できたはずだ。
〈〈
「…パスコードは覚えてらっしゃったのですね」
「…何でかは分からないが思い出せたみたいだな」
パスコードを入力してから再び扉に手を掛けようとすると、扉が独りでに横にスライドした。
「おわっ…!?」
「自動ドアですよ、マスター。手を挟まないようにしてくださいね」
「あ、おう…」
リスティアからの忠告を頭に留めて部屋の中に入る。
部屋の中はなんというか…未来を感じさせるようなデザインになっている。
大きなガラスがはめ込まれた窓。そこから見える絶景は凄まじいもので、雄大な自然を一望できる。
「
「
「この窓の向こうに見える景色は実際に見える景色ではなく、ここからは遠く離れた場所の景色を投影しています」
「…はぇ?」
何を言ってるのか全くもって理解ができない。これが…実際に見える景色ではない?
「…まあ、とりあえずそのお話は後で致しましょう。少々問診にお応えしていただきたいのですが」
「あ、あぁ…そういえばそうだったな」
■
リスティアからの問診を終え、彼女は医務室へと戻っていった。それと入れ違いにシルヴィが、何やら黒い石板を持って俺の部屋に入室してきた。
「マスター、こちらを」
「…これは?」
「マスターボードです」
シルヴィが差し出してきたのは、一見ただの石の板だ。ただそれにしては軽い。角は刺さらないように丸く削られており、本当になんの用途に使うのか分からない物となっている。…そのはずなのに、やはりこれも、どこか懐かしい雰囲気を感じる。
「…これ…なんだ…?」
映像が浮かび上がって…。
『〈
『〈
「この声…
『〈
「………。………」
頭の中に浮かんだ言葉を、マスターボードに入力してみる。
———He who seeks, explores and pursues freedom.
―——It is he who does not know true freedom.
『〈———
『〈
『〈
『〈
『〈
無機質な女性の声が、何やら淡々と言葉を告げていく。
『〈———
――――――――
作者's つぶやき:これがしたくてこの小説作ったまであります。
いいですよね…この…何て言えばいいんでしょう、形容が難しいですがこの…このかっこよさ、なんか分かりませんか?
してこのマスターボードくん。大きさ的には230×165 ×7(mm)くらいの寸法だと思ってもらえば。iPad(第10世代)より若干小さいくらいでしょうかね。
機能的にはこう…3Dホログラム的な物で3次元空間上に最大15個まで画面を表示することができます。
あと
———He who seeks, explores and pursues freedom.
―——It is he who does not know true freedom.
これは『自由を求めるものは本当の自由を知らないよ』的な事が書いてます。…まあ、当たり前のことですよね。知らないから求めてるんだよって。
――――――――
よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!
前世で俺が作ったらしい組織に復帰して色々する話 ますぱにーず/ユース @uminori00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。前世で俺が作ったらしい組織に復帰して色々する話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます