くつちた、すにーかー、パンプス、ハイヒール

世楽 八九郎

くつちた、すにーかー、パンプス、ハイヒール

――つま先は、つぉらを見てた


 お父さんダダは豆粒みたいに可愛いかぁいーねって言っていた

 靴下くつちたやぁなの!


――つま先は、グッ、としなって駆けだしたい


 ママに追いつかれて、ママを追い抜いて、そのうちママは追いかけてこなくなった

 お揃いのすにーかーよりも、お気に入りのスニーカーが出来た


――つま先は、三角形の内角をぐにゅぐにゅさせて解は求められない


 あの人を指す羅針盤はあからさまで、こっちに向いて欲しくて、見られたくない

 初めて履いた、内側の擦れたパンプスは、まだ、捨てられない


――つま先を、まっすぐ、前に向ける


 履き慣れないハイヒール――叔父さんが言うにはピンヒールで精いっぱい前を向く

 しきりに頷くこの人は呑気にこっちの苦労を知りもしない 先行きはちょっと不安

 少しの間、パパとママとの水入らずは椅子に腰かけて、小休憩

 じじとじぃじ祖父たちばばとばぁあ祖母たち来てくれたみんな友達に同僚たち

 私はなにを期待されているのだろう 私はどんな期待に胸躍らせているのだろう

 空を指してた羅針盤の針はゆらゆらとふらふらと揺蕩いていた

 その針を私の正面に向ける まっすぐに

 さあ 行こう

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くつちた、すにーかー、パンプス、ハイヒール 世楽 八九郎 @selark896

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