短歌集2024
籔田 枕
短歌集2024
#haiku
まるまると肥えたる蜘蛛や跳びはねむ
#tanka
甘そうなみかんからなくなってゆき ざ、ん、こ、く、なチキンのレース
"ちゃお"を買うことだけ楽しみにしてた頃に戻りたいです毎月
大切な人を失いましたでもよりそばにいる気がして不思議
ワイプって誰のためにあるんだろう共感しなきゃいけないような
わたくしの名前を呼んでくれたから忘れられない思い出がある
意味のない会話ほど時間が経って意義となるから朝は寒いねえ
すきなのでだいすきということがただあなたに伝わればそれでよし
ネイルしたけどキラキラしてる爪に慣れなくて落とした 腹痛い
恋文と脅迫状は紙一重 放課後ひとりで図書室に来い
シルバニアファミリーシルバーニアファミリー年季の入った人形が住む
夢なんてないけど先生になると言って親を安心させてた
女版二郎はパンケーキのタワー そこへクリーム チョコもたっぷり
新しいことへの好奇心よりも胃もたれがする"歳"というもの
きっとおれみたいなやつにいじめられたんだ虚勢で吃音隠して
まだ少し傷ついている辛口の歌を聞いても反論ばかり
大スターとかではなくて社会的底辺にいるアーティストたち
言い寄られることなく話を盛り上げる一石二鳥の恋愛相談
もう二度と北海道には帰らないそれがせめても花向けだから
疑うの見るかい僕の心臓をいつでも取って差し上げるけど
世界への恨みを原動力にした君 ガス欠になったら呼んで
パンクしたタイヤで走りレッカーを呼ぶ羽目になる程のものぐさ
植物の微弱な毒を虫が得てそれをカエルが食べる『芸術』
しげしげと恋文を書き奉るすべては恋のなせる業なり
愛車というほど愛してないけれど手放してから気づくと聞くし
「お茶する」のお茶はいつからコーヒーに取って変わられたのか かなしい
古くなり存在意義を失ったお菓子を集めて作ったおうち
たそがれてゆく雪の日の空に似たぼんやりとした雲の陰なり
二年ほど切らないでいた髪を切る 大丈夫です もうザックリと はい
逃げ癖がついてしまってもう遥か彼方に理想の自分がいる
ストレートロングヘアーで従順で馬鹿な女じゃなくてすまんな
1位しか勝ちではなくて粉々のまま渡される銀色のやつ
寝たらそのまま永久に目覚めないと思うほどの疲労と眠気
覚えてろそのうちおまえよりわたしのほうが幸せになってやる
星1の英霊なので落ちていた手袋そばに引っかけておく
ボロボロにならなきゃ誰も私に「頑張ったね」って言ってくれない
推しという言葉がなくて助かった でなきゃあの時帰れなかった
「すき」という心にもない語を添えて身を守りつつ燃やす戦法
急かされて手に汗握る今にでも肩を叩かれる気がして 窓
バラバラになった時計を舟の揺れだけで組み立てるような奇跡
立つ角を潰していった割り切れぬもの 丸く収めるということ
「このごろはご遺体も不足していてね」ジャムでも作るような解剖
先生の本を読みつつ夜が明ける薔薇色に染まりゆく装丁
もう全部神様のせいにして逃げて笑えたならばどんなにいいか
心地よい風を浴びていたら帰るのを忘れてしまった柴犬
工程が多くて厚塗り感もなくだけどナチュラルメイクっていう
こんな時くらい兄ぶらせてくれよ自分で選んだ家族を作れ
つい勘違いしてしまう脇役の僕も光のもとにだなんて
ジューシーなオレンジを引き立てるブルー自分らしくいられますように
星たべよアンドロメダ座ペガスス座みなみのうお座さいごは地球
開封後早々に捨てられるシャーペンの消しゴムみたいな前戯
一刻も早く大人になりたくて手に汗握る急かされながら
ここは金星で地球は亡びたと聞かされたのでもう一度寝る
意味もなく眉毛を抜いた手に沿って抜けるからただ眉毛を抜いた
お気に入り登録された写真その 両隣も見る申し訳なくて
恋なんて心に余裕がないうちはできっこなくて右下を見る
私がひとりになっちゃいそうな時、手招きをしてくれる友達
石橋を叩きまくって壊しては「ほらね、壊れた」などという人
青い球抱えたイルカのキーホルダーこれが僕らを繋いでたっけ
十個入り卵パックを買ったのでわたしは生きなければいけない
爪をとぎました高級バッグでね なんも反省してなくてすき
犯人はおまえか! しょーがないねも〜 お風呂だよ はは 逃げられないよ
ジャケットの中のあなたを汚したくなくて開けられぬままのCD
警察に知らせるなって書いてある脅迫状の差出人は
おさしみに「ハッピー きみはハッピー」と励ましてから棄てる毎晩
何を捨ててでも隣に座ってただろう出会いが遅かれ早かれ
一生のお願いが使えたとしてあなたで全部使ってもいい
どんぐりの中には虫がいると聞きポケットをひっくり返す孫
ひとりでもいいけどきみが穏やかに笑っていてくれればうらうら
正解のない問題を口喧嘩しながらバッタバッタ倒そう
おれにしておけよおまえの朝が来るのを傍らで見ててやるから
目で好きと訴えているまだ言えば遠くなってしまいそうだから
いいことがあった真っ昼間のシラフ今こそ好きを伝えるチャンス
料理するたびにわたしを思い出せきれいなシンク研いだ包丁
繰り返し思い出すあの日あなたがもつれるように笑う姿が
ひとことで言えば好きってことだけど学術的な論文もある
電燈をともした汽車はやっと或郊外の停車場へ着いた
歌えても喋れはしないロボットのように口からアザレアを吐く
椎(しい)の木が一本斜めになつているヒトラーに吹き飛ばされまいと
恋愛の砂漠の中でもがいてるサボテンの花言葉は「偉大」
機関車の真似をしているこどもたち軌道を持たずまれに跳ぶらし
世の中を良くすることが労働という お前のはただの隷属
楽しみを作って待てば一年は長い 静かに蟹食べる孫
大掃除大人になれど学校の宿題のごと滑り込みかな
短歌集2024 籔田 枕 @YabutaMakura
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