第2話行き

(臭い)と目を開けるとゴミ捨て場の上に乗っていた、ゲートとやらに連れ込まれたときに一瞬記憶を失ったようだが大量のゴミの生臭い匂いに意識が戻った。

「ここはどこだ、、。」気づけば夜の路地裏のゴミ捨て場。自分の知るような場所ではなかった。

「おーい。タカシ!」と高い声。

そこにはネズミがいたが以前見た時よりも大きくなっている。

そんなネズミを見て驚くタカシに「時間変動のさな。まあ無事で何よりだ!」とカカカとネズミが高らかに笑う。

自分の体を見る、小さい手。小さい足、頭はわりと大きい。

タカシは「これはどうゆうことだ!」とネズミの首を掴むがネズミが太くて掴めない。

「可愛くなって、精神的には問題なさそうだ。生身の人間がゲートをくぐったらその身に何かが起こると聞いてはいたがこの程度ならば大したことないだろうが。身も軽くなってラッキーだ。」

「ほら、これを着ろ。」衣類を渡してくれた。

自分が来ていた服がだぼだぼになっていたのでこのままでは裸同然だ。ネズミが小学生中学年の着るサイズの服を用意してくれたようだ。

タカシは素直にありがたいと思い「ありがとう。」と言ったが「これどこで用意したんだよ。」と攻め入るように言った。

「任務に取り掛かるぞ、連いてこい。」とネズミはタカシの言葉を知らんぷりした。

匂いの漂うゴミダストの中から這い出た、自分の体の軽さに驚いた。(夢にしては良く出来ている)タカシは自分を感心した。

夜の繁華街であろうか、通路ネズミの後を連いていくと角に出た。「待て、あそこだ。」とネズミが立ち止まり尻尾で指した。

工場が多いのか煙があちこちで揺らいでいる、トタンでできたビル街の中に木造の一軒の酒場らしき建物があった。

「あそこでコアの取引が行われるとゆう情報が入っている。今から潜入する。」ネズミは辺りを気にしながら言った。

タカシはため息をつきながら「コアって一体どうゆうものなんだよ。」と言った。

どこから取り出したか分からないがピコっとまたタカシの頭を警棒で叩く「声が大きい。」と半目でタカシを睨むネズミ。

「これだ。」ネズミのつけている腕時計が光って黒いルービックキューブの様なものが浮かび上がっていた。


それを見てタカシは「地味だな。」とひとこと。

「価値のあるものが宝石のように輝いているわけではない、大切なものはそうゆうものだ。」

「行くぞ。」とネズミは言った。

街お世辞にもきれいとは言えない状態で空気は淀んでいる、道端にはぼろぼろの衣服を着た路上者が帽子を深く被って座っている、「こんな子供の姿で大丈夫か?お前だって人に見られたら追い出されるぞ。」とタカシは目標地点に向かいながら言う。

ネズミはフンッとして「ここをなんだと思っているあらゆる人種、宇宙星人が集まった街だぞ。びくびくするな逆に目を付けられる堂々としろ。」

酒場の扉前に着くと看板には店の名前だろうか英語でも日本語でもなく、暗号のような文字で書かれていた。

扉を開くとそこは映画やゲームの中で見たようなウッド調のカウンター、長椅子、テーブル席もあった、酒場らしくアルコールの匂いと葉巻やたばこのにおいが充満していたが食事の香りもしなかなかに賑わっていた。

隅のテーブルにネズミが座ったので隣に座った。周りを見ると顔がハエの様な人や鼻で飲み物を飲んでいたり人型の緑の木の姿をした者やら何だか訳が分からない生物がたむろしていた。「きょろきょろするな。」と冷静なネズミ。

「ご注文は?」とテーブルに女性のバニーガールの格好をしたけだるげなウェイターが来た「ビールパンチを二つ」と慣れたように答えるネズミ。タカシはバニーガールの豊満な姿を見て目が離せなかった。ネズミが「あれはロボットだ」とあきれた様子できっぱり言った。

ロボットが去るとネズミが「あいつらだ。」とネズミの見る方向を見るとワニの顔が潰れたような顔のガタイのいい3人組が話し込んでいた。

「あのワニが?いかにも強そうだな。」とタカシ。その間にビールパンチやらという飲み物が届いた見た目はビールだ。

「腕力では勝てないからな、聞き取り調査だ。タカシお前の今愛らしいそこに気を取らせて盗聴器を付けてこい。」とネズミ。

「俺が行くのか?」とタカシ。

「俺はあいつらに面識があるあのワニちゃんたちの服にこれを付けて来ればいいだけだ。時間がない。」と小さな黒い鼻くそみたいなものを押し付けてきた。

「それが盗聴器だ、べたべたして一度ターゲットに付けば離れない」とネズミ。

タカシはイヤイヤだがゲームの内容としてはありそうで面白そうだと思った。

タカシがワニに向かおうとするとネズミがタカシの肩に手を置いて「これは遊びじゃないリアルだ。」と言った。

(そんなこれはただの俺の良く出来た夢でしかない)だが少し緊張したので気合を入れてビールパンチという飲み物を一口飲んだ。

飲むと強炭酸のような刺激だと思った次は体が熱くなって視界がパチパチといろんな色に変わって空気が抜けた風船のように元に戻った。

(こんなバカげた飲み物やっぱり夢の中のものだ。夢が冷めるまでネズミのゆうとおりにするしかないか。)

タカシはワニたちのいる方に向かっているとりあえず(このべたべたしたものを付ければ、、、)そっと小さい体でワニの足元に近づいき盗聴器を付けた。

(やった!)とタカシは一目散にネズミの方へ向かおうとしたがネズミはそこにはいない(なんだそこのちっこいの。)ワニがむんずとタカシの服を掴んで持ち上げた。

タカシは「僕は何もしてないよー、おじさんのそのかっこいい顔を見に来たんだよう」と言ったがワニが大きな鼻をはフンッと鳴らし「なんだって」と言わんばかりにその大きな口を開けた。

タカシは目を瞑り恐怖で体がちじこまった。その時、(目を狙え)と声が聞こえた。

タカシはここは夢だと思いっきりワニの目を蹴った。

ワニが「ギャー」と言ってタカシを掴んでいた手を放して目を大事そうに手で覆った。

タカシは落とされたとき尻もちをついたが立ち上がり一目散で外へ逃げた。ワニの「あのチビを捕まえろ!」と声がした。

とにかく逃げなきゃと暗がりの路地を走った、体のせいか軽くいつもより軽く早く路地を曲がったところでネズミが現れた。

「やったな!タカシ!」ハイタッチと言わんばかりに手を挙げた、タカシはその手を叩いた。

「いい加減にしろ!こんな夢はもう嫌だ!冷めてくれ!」と叫んだ。

ネズミが手でタカシの小さい口を塞ぐ「大きな声を出すな、あいつらが来てしまう。説明する、いいか。」

息が苦しくなってネズミに手を放して欲しくてこくこくと頷く。

ネズミが手を放す。タカシが一気に息を吸い込んだ。「ああ、すまなかった。無理もないよな」タカシの背中を優しく擦る。

タカシが呼吸を整えると「で、どうなってるんだ。」ネズミを睨むように見る。

「タカシ今お前は異次元の世界にいる、コアを見つけるためにな。地球を救うコアは人間にしか直接触れられない、そして異次元に行ける人間も限られているそれがお前だ。お前はなぜか分からんが17年とゆう歳月を異次元を行ったり来たりすることができる。」

タカシは訳が分からないと言ったように少しの間あんぐりとして「ま、待って。この世界やお前は俺の部屋にいた時から実在して、俺は3歳児になっちまって、、なんで3歳児なんだ。」

「異次元を渡る際体にやや負荷がかかるらしい。安心しろ脳の機能は元のままだ。」とネズミがウインクした。

「ふざけんな。」タカシがネズミに殴る。

小さくはたくような音が響くだけでネズミもいたがるような様子もなく「よしよし。仕込みは済んだ、一度私、スーのポットへ行こう。」とタカシの頭を長い尻尾でポンポンした。タカシはなんとなくむっとした。

ネズミがまた尻尾の毛を一本抜いて四角形のルートを開いた。「俺は帰れるのか。」と疑問を問う。「必ずもとの次元に帰す。」とスーのその言葉には嘘はなかったと後にも確信した。

ルートを潜ったところは温室のような空間でいろんな見たこともないような草木が生い茂っている。空気がとても美味しい、思わず深呼吸した。

ここの草木に囲まれていると自然と気持ちも穏やかになる。「ここは?」

スーが「ようこそ、ここは私の秘密基地、いろんな次元、世界から絶滅した植物たちを私が集めた。こっちだ、一息入れよう。」とスノードームの様な小屋?に案内された。

そこは昭和懐かしいような土間があった、「まあ、ここに座れ」とスーが言った先には炬燵があった。スーが小さな手で畳の上を軽くたたく。

段差の上にそれはあるので、今3歳児の俺にはよじ登れないだろと愚痴をこぼしたがひょいと段差をよじ登れた。(あれっ)と自分でも訳が分からず手を見、身体を触ってみた。

「だいたい13歳といったところか」とスー。

身体がさっきの治安の悪い路地にいた時より大きくなっている。「時空を回った少し大人びたな。」とスーがにっと大きな歯を見せて笑う。

炬燵の中に入る、しかも掘り炬燵だ。(筋金入りの日本好きだな)

「これはゲームでも、夢でもなく現実なんだな。」

「タカシ悪いがその通りだ。」とスーが立ち上がって緑茶を持ってきた。

「改めて言おう、お前は世界をつかさどる女神に選ばれた、私はデジタル警察地球を救う責務を任されお前を呼んだ。私は地球に住んだことは無いが自然をはぐくんでいる地球を愛している、頼む!共に地球のコアを見つけて欲しい」とスーは真剣に言った。

「見つければ俺は帰れるんだな」

スーは頷く。

「分かったよ、スー、女神だかは分からないがお前を手伝う。」

スーは潤んだ瞳で「ありがとう!タカシ!」とタカシの顔に抱き着いた。ふわふわの胸毛がタカシのまだ13歳の少年の顔を覆った、それは心地よくてなんだか懐かしい匂いがした。

「改めてよろしくタカシ!」とスーがネズミの手を差し伸べた。「ああ、よろしく。」とタカシ。

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行き来 ひじか ゆい @4134

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