誰も不幸にならないウルトラハッピー婚約破棄の一部始終

野々宮友祐

誰も不幸にならないウルトラハッピー婚約破棄事件



「ノア・マオス! 貴方との婚約を破棄いたしますわ!」

「ほぁあ」


 春。長い冬が明けて草が元気にもさもさ伸びて、お花がなかなかの見頃になった頃。ズーン王国の王城では春を祝う宴が盛大にひらかれていた。

 国内の貴族は揃って参加し、自慢の娘やら息子やらドレスやら領地の特産品やらアピールするのに忙しい。さっき王様王妃様もご登場なされたのでご挨拶の列に並ばなくちゃならないし、せっかくココまで来たんだからお城の美味しい料理だって食べたいじゃない?

 そんなこんなで、ああ忙しい忙しいと動き回る貴族たち。それでもギスギスした雰囲気にならないのは、近隣諸国いわく「なんかふわふわしてる」という国民性のおかげだろう。


 で、王様王妃様へのご挨拶が一通り済んだあたりでなんか始まった。


 あの一段高いところで下の方をピッと指さしているのは、この国の王女様であるアメリア・ファレエント様ではなかろうか。

 んで、そのピッと指さされた先にいるのは、その婚約者のノア・マオス侯爵令息……だと思われる。王女様そう言ってたし。最前列あたりにいる人しかたぶん彼の姿は見えてない。


「ノア! わたくしずっと貴方との婚約が不満で仕方なかったのよ! だってこんなにも美しくてスタイルも良くておまけに頭もいいわたくしに! 貴方なんか釣り合わないわ!」


 あっ、自分で言っちゃうんだ。


 貴族たちは思ったけれど、口には出しませんよ、もちろん。

 でもまぁ、言いたいことは分かる。確かにアメリア王女はとっても顔がいい。ぱっちり大きなトパーズ色のお目々に、つやつやの頬、ふっくらとした唇、すっと通った鼻筋。椿のような深い赤色の髪がとっても絵になる。人気の絵師が描いた王女様の絵姿なんか飛ぶように売れる。


 それに比べて、その婚約者であるノアといえば。

 男性の平均身長が一七五センチくらいのこの国で、それよりだいぶ低い。一五〇センチ位しかないんじゃなかろうか。もちろんアメリア王女より低い。全然低い。むしろそのへんの子供より小さい。そして顔が可愛い。くりくりのまあるいおめめに、ふくふくのほっぺが小リスみたいな男である。


 そんな二人なもんだから、まわりからしたら「やっぱりなぁ……」とか「そうなるよなぁ……」の気分なのである。

 マオス家といえば文官家系で、ノアも優秀だから婚約者としてはよかったんだけどね、見た目以外。


「わたくし、こちらのダニエル・フォクス伯爵令息とあらたに婚約するわ!」


 そこですっと登場したのはキラキラしい王子様然とした若者だった。

 高身長、高顔面偏差値。王女様と並ぶととっても絵になる。そうそう、王女様と婚約者といったらコレよコレ。招待されていた画家がさっそく大興奮しながらスケッチをはじめたぞ。そのくらい見た目お似合いのカップル。


 でもさ、フォクスって言った?

 あそこの息子さんっていったら確か……。


「私、ダニエル・フォクスはこの度王女殿下と結ばれることとなりました。つきましては、私が結んでいたルイーズ・グリーズリ辺境伯令嬢との婚約は取りやめとなります」


 えぇぇえ〜〜〜!?

 これには会場の貴族たちもどよめいた。

 だってそれってつまり、この二人ったらお互い婚約者がいる身でありながらアレソレしてたってことでしょう? いやだわそんなの、なんて破廉恥なのかしら。

 いやいや、今問題なのはそこじゃない。一番の問題は……。


 ズゥン……。会場が揺れた。物理的に。

 地震か? と思ったところでもう一度、ズゥン……ズゥン……。

 あっ、これ地震じゃない。コレは……。


「ルイーズ嬢……」


 王女様の隣で、ダニエルが呟く。その視線の先、いやもう視線なんか辿らなくても分かる。野次馬貴族たちのその向こうから歩いてくる一人の女性が、知らぬ人は一人もいない、かの有名なルイーズ・グリーズリ辺境伯令嬢その人だ。


 男性よりも頭二つ三つくらい飛び出た長身。美しく結われた金髪の下のぶっっっとい首。丸太のような腕、ストレートラインドレスのスリットから覗く人の腰くらいありそうな脚。


 脂肪? いいえ、―――― 筋 肉 で す 。


 世界最高の標高と名高いムルプス山脈のような僧帽筋。大きな大きな大胸筋はドレスをはちきらんばかり。まるで崖のように聳え立つ大臀筋。シルクの布地に浮き出たバッキバキにキレッキレのシックス、いや、あれはエイトパックだ……!!


 盛り上がった筋肉で横幅は女性二人分、成人男性が見上げるほどの巨大な、まるで山のようなご令嬢、それがルイーズ・グリーズリであった。


「ダニエル殿……我は聞いておりませぬが」


 ゴゴゴ……と幻聴が聞こえるような、地鳴りのような声だった。でっけぇ筋肉達磨が、地鳴りのような声を出しながら、地響きを鳴らせて歩いてくる。彫りが深すぎて影になった目の、瞳だけがギラリと光ったまるでデーモンのような表情で。

 あっ、ビビリで有名なラービッツ子爵が泡吹いて倒れた!

 あとご令嬢としての口調はそれでいいの? と思った者もいたけれど誰も口には出さなかった。英断だね。


「ああ。この場で大々的に発表しようと、アメリア殿下と策を練っていたからな」

「なにゆえ」

「わたくしとダニエルは運命の相手ですの。……そう、あれは昨年の冬至祭でのこと――――」


 さすが王女殿下、魔王のようなご令嬢相手に堂々とお話してらっしゃる。あそこにいるバンビナ伯爵なんか当事者でもないのに子鹿のように震えているというのに。


 回想に入った王女様いわく、お互いパートナーを伴って参加した去年の冬至祭で出会ったらしい。普通だね。


「お互いを一目見て、わたくしたちは思ったのです」



「――――なるほどね、と……!」



 運命の相手に出会った感想って「なるほどね」でいいの?

 と、まわりで聞いていたご令嬢たちは思った。もうちょっとなんかあるんじゃない?


「それから私とアメリア殿下は運命を受け入れ、連絡を取り合い今日この日、婚約を破棄する宣言をしたというわけさ」


 そう言って寄り添い合う二人は、なるほど、運命という言葉がぴったりなお似合いのカップルに見えた。けれど、それでは運命でなかったと言われた方は……。


「そうそう、私達が婚約をすると、君たち二人が余ってしまうだろう? そこで、アメリア殿下から君たちへ素敵な知らせがある」

「ノア・マオス、ルイーズ・グリーズリ。王女命令よ。あなた達二人、婚約を結びなさい!!」


 そ、そんな横暴な……!

 これには流石に貴族たちはざわついた。婚約者のいる身でありながら、運命などという便利な言葉で身勝手に振る舞ったあげく、余った者同士を無理矢理にくっつけるなどと。

 それはあんまりにも、その二人が可哀想ではないか。


 というより……。

 その二人のうちの片方は、山で出会ったら魔獣と勘違いされ討伐隊を組まれ、夜に行き合ったら魔王と間違われ街を恐怖のどん底に突き落とし、もちろん戦闘に関しては無敵の強さをみせドラゴンでさえ素手で首をへし折る事で有名すぎるルイーズ・グリーズリである。

 もう片方は、遺伝的に背が低い事で有名な一族の、その中でも小さく、ちょこまかちょこまか動き回って仕事をする姿はまるでコマネズミと言われるような、ちっちゃ可愛い無害の象徴であるノア・マオス。


 だ、大丈夫……!?

 いやいや無理だって。そんなのヘビに睨まれたカエル、ヒグマに踏み潰される野ネズミ。赤子の手をひねるよりも前に頭から一飲みにされて終わる。ほら見てよあの身長差。ノアを縦に二人並べるよりルイーズ嬢のほうが大きいよ。

 

 まるで死刑宣告されたような空気の中、いままでずっと黙っていた当事者二人がカタカタと震えだした。

 そりゃそうだろう、あんなムッキムキ。取って食われそうだもんな。ルイーズ嬢はなんで震えてんの? 武者震い?


 そんな周りの心配をよそに、二人は震える声で同じ言葉を口にした。


 

「「よ、よろしいのですか…………!?!?」」


 ん?

 貴族たちが一斉に首をひねった。


「僕とルイーズ様が婚約だなんて……! 筋力で空も飛べそうな背筋も聳え立つ上腕二頭筋もゴリラなんか比じゃない大腿四頭筋も世界が乗ってそうな大殿筋も巨木みたいな腓腹筋も、もう言葉では言い尽くせないくらい存在のすべてがかっっっっっこいいルイーズ様と一生一緒にいれるってこと!?!?」


「我とノア殿が婚約とは……! 砂糖菓子のような丸い瞳、白く傷一つない手、赤子の如きふわふわの髪、小動物を思わせる小さくそれでいて俊敏に動く身体、まさに地上に舞い降りた天使としか言い表せぬ愛らしいノア殿と、合法的に添い遂げられる時が来ようとは!!!!」


 二人してすっげぇ早口で一気に、しかも同時に捲し立てるもんだから高音(ノア)と低音(ルイーズ)のハーモニーが見事だねって事以外みんなあんまりわからなかった。わからなかったけれど、二人の言葉を聞き取ったらしいどこかの誰かが「んブッフぉぉッ!」と盛大に吹き出した。



 さて、その吹き出した人の正体は何を隠そう王妃様なのだけれど、貴族たちはまさか王妃様がそんな事するなんて思っていないので気づいていない。

 唯一、それを知っているのは隣りに座っている王様のみ。王妃様が笑いをこらえてポーカーフェイスしながらバイブレーションしているのを横目で見ている。

 

 王様、内心にっこにこであった。

 王様は王妃様にベタ惚れしている。どこが好きって、実はとってもゲラなところ。笑いの沸点低すぎ。あと笑い声が「ンダァッハッハッハ!!」なところ。これは王様しか知らない事だけれど、まったくもって淑女らしからぬ山賊みたいな「ゲハハハハハハハ!!ダヒ〜〜〜〜ッ!!!」という下品極まりない笑い声。好き好き大好き。

 今ココでこんなにバイブレーションしているということは、自室に戻った瞬間に笑い転げるに違いない。山賊みたいなダミ声で。それが聞けそう、それだけでこのよくわからん婚約破棄劇場を始めた王女にはご褒美まであげたい気分なのである。


 そもそも、アメリア王女の相手なんてどっちでもいい。

 第一王子と第二王子はもう結婚していて、それぞれ右派と左派の有力貴族からお嫁さんをもらっている。アメリア王女の相手であったノアのマオス家は中立。ダニエルのフォクス家も中立。

 フォクス家はマオス家よりも家格は低いけれど、それを補えるだけの財力がある。よって同率。婚約は王女が幼い頃になんとなく家格が上だからとノアにしただけだから、ほ〜んとどっちでもいい。


 たぶんそれをアメリア王女もわかっている。

 だってあの子、馬鹿じゃないもの。自分で頭いいって言っちゃうような子だけど。


「お父様! ご許可いただけますわよね?」


 くるりと振り返って、サムズアップにウインクまでつけてきたアメリア王女に、王様はイイヨ〜〜〜と腕で大きく丸を作って花丸満点をあげた。


「という事で、ノア、幸せになりなさい!」

「ほんっっっとにありがとうございます! アメリア様もどうかお幸せに!」

「こちらこそありがとう。貴方のおかげで金持ちのイケメンゲットよ!」


「ダニエル殿、感謝いたしまする」

「幼い頃からの付き合いで、ルイーズ嬢の好みを熟知していたから成せたんだ。お互いに幸せになれる道が見つかって何よりだよ」


 ここまで来たら、もう周りの貴族たちも理解した。

 ドロドロギスギス愛憎劇じゃなくて、とっても仲良したちによるハッピーサプライズってことね。

 なぁんだ、よかったー!


 ほっとして、誰からともなく拍手が沸き起こった。新たな二組のカップルを皆があらあらまぁまぁと微笑ましく見守って、楽団がいつもよりちょっとゴキゲンなワルツを奏でだす。


 アメリア王女とダニエルが手を取り合ってダンスホールへと向かっていく。ノアたちにウインクを残して。


 王女様カップルは、さすがの優雅さでくるくると舞う。これぞ王道、美男美女。文句の付け所のない完璧な見た目。絵師が瞳孔かっぴらいてこのダンスを描きとめんと一心不乱に筆を動かしている。もはやパーティーの最中だとか気にしてない。ふわりと広がるドレスの裾、首元で燦然と輝くジュエリー。


 その一点の曇りもないジュエリーに、ふいにシャンデリアの光が跳ねた。


 反射した光はドリンクを給仕していた使用人の目に入り、ふらついた使用人はグラスを落としかけたがすんでのところで貴族の青年に抱きとめられた。


「……エミリー?」

「まさか、ジョシュア様……?」


 幼い頃使用人の娘に恋をした青年と、母の再婚で秘めた恋心をそのままに仕えていた屋敷を出なければならなかった娘の再会であった。

 

 ところで、このジョシュアがエミリーを右手で抱きとめた際、左手に持っていた皿の上からプロシュートが飛んでいった。飛んでいった先は、会えば喧嘩ばかりしているジラーフ男爵とゼブラータ子爵の元だった。二人の手にはゼブラータ領産のメロン。メロンの自慢をするゼブラータ子爵にぐぬぬとなりながらも二人同時に口に入れようとしたそのメロンの上に、プロシュートはぽとりぽとりと着地した。


「「おっ、おいしい〜〜〜〜!!!」」


 メロンを口に入れたはずなのに、まさかの塩気。その塩気がメロンの甘さを引き立たせ、さらには青臭さを見事に消し去っている。その塩気の正体はまさかのプロシュート、そしてそれはまさかまさかのジラーフ男爵が新たに名産品とせんと紹介するため持ってきていたプロシュート。

 お互いいがみ合っていた二人はがっちりと握手をし、ここに新たな料理が誕生した。事業提携もした。実は傾きかけていた二家はこのおかげで家計がもちなおすこととなる。


 そして美味しい料理があるとそのあたりに人々が殺到し、ぎゅむりと押し出された青年が壁際にいたご令嬢を壁ドンしてそこから素敵な恋が芽生え、壁をドンしたその拍子に隣のカーテンが揺れそこに付着していた植物の種子がアルコール度数の高い酒に入ったことでインスピレーションを得た薬師が後に画期的な新薬を開発し、薬師が大慌てでパーティ会場のドアを開けたことに公爵家のおじいちゃんがびっくりして飛び上がったらストレッチにちょうどよかったらしく腰痛が改善し、元外交官だったおじいちゃん公爵が元気になって現役世代をバリバリ鍛え上げた結果諸外国との貿易協定を次々と締結しズーン王国は貿易立国として百年も二百年も栄える超大国となったのであった。めでたしめでたし。



 

 マァそれはともかく話を戻して、

 

 王女様たちにウインクされたもう一方の本日の主役たち。ひとつ頷き返し、すっと片膝をついた。ルイーズが。


「踊っていただけますか?」

「はい、喜んで……!」


 いや逆では? なんて野暮なことを言うような者はいない。

 そういうカップルもいるよね、うんうん。

 手と手を取り合った二人はダンスホールで優雅に一礼をし、踊りだす。倍以上ある身長差をものともせずに。


 う、浮いてるーーー!?

 なんとノアを腕の筋肉だけで軽々と持ち上げたルイーズはダンスのホールド姿勢を崩すことなくステップを踏み出した。宙ぶらりんのノアは「ああっナイス二頭……チャモランメ……!」なんて言ってる。王妃様のバイブレーションが強まった。ところでルイーズ嬢が履いてるピンヒールの耐久力すごいな。


 ルイーズ嬢がくるりとステップを踏んで回転する。ぶおん、と遠心力でノアの身体が振れる。相変わらずノアは「大胸筋詰まりすぎぃ密密の密です〜!」とかなんとか言って気にしちゃいない。どういうことなの。そのうち、ぶおんの遠心力でノアの革靴が片方すっぽぬけた。


 ぴゅーーーーんと飛んでいった革靴は窓を抜けて、テラスに抜け出したはいいもののモジモジしちゃって進展しないカップルの女の子の方の背中にぶち当たった。ぷちゅりと唇と唇があわさる音。

 

 文字通り背中を押した革靴は失速してテラスの真下に落っこちて、そこにあった蜂の巣を落とした。びっくりしたのは蜂だけではない。その下にいた男性もまた、突然落ちてきた蜂の巣と革靴に仰天した。じつはこの男、今夜国王を暗殺せんとやってきていた殺し屋だった。突然蜂の大群に攻撃された男はなす術なく撤退、その途中で衛兵に捕縛された。


 捕縛の際に男が暴れに暴れ、最後の悪あがきと衛兵の乗っていた馬になぜか掴んだまま離していなかったノアの革靴を投げつけた。馬は駆け出して、暗い夜道をずんずん進んで、王城の裏手の森に入り込んだ。鞍に革靴をひっかけて。

 さてこの森、迷いの森と呼ばれていて決して入ってはいけないことになっている。なぜなら古代の魔法の力が残っていて、いろいろなところによく分からない物や魔法やトラップがたくさんあるから。

 そんな森を、馬は進む。途中でがさごそと藪を突っ切り、何かを踏んで鞍の上に何か落ちてきて、それにびっくりしてまた進む。遺跡のようなところに出て、そこの床の紋章の真上に乗った瞬間紋章の魔法が作動し馬の姿は光の中にかき消えた。



 

 さてこちら、隣の大陸のガーデナー聖皇国。の、隣にある魔族の支配している広大な森の魔王城。

 そこでは今まさに勇者様御一行と魔王が戦闘中であった。勇者様御一行の戦況は最悪。魔力も体力も尽き果て、剣も折れてしまった。


「トドメだ、勇者よ」

「――――くっ……」


 魔王の右手に魔力が宿る。ゴォッと風が巻き起こって、勇者様御一行は覚悟を決めて目を閉じた。そのとき。


「ヒヒィーーーン!!!」


 なんか馬がでてきた。

 緊張感漂う両者の真ん中に突然の馬。

 あっけにとられる勇者様御一行と魔王。緊張感とともに魔王の右手の魔力が霧散した。


「あっ、あれは……!」


 その馬の背中に注目してみよう。鞍の上になにか乗っているではないか。キラキラ光る真っ白なそれは、まさか失われたという伝説の防具と聖剣…!?


「この靴の中を見て!」


 鞍に引っかかっていた革靴の中には、食べればHPもMPも全回復するという幻の木の実が入っていた!


「みんな! これを食べるんだ!!」


 そんなこんなで、剣と防具を手に入れ体力も魔力も回復した勇者様御一行は魔王を打ち倒したのであった。

 勇者はその後故郷に帰り、幼馴染と結婚。聖女は浄化された魔王と恋に落ち、魔王城周辺を魔族領とし魔族を二人で統治した。

 馬はというと聖皇国に一緒に凱旋し奇跡の馬と讃えられ、鞍に刻まれた所有者の名前からズーン王国の衛兵が判明し衛兵は聖皇国の聖騎士となった。衛兵の頭上には終始 ? が浮かんでいたが誰も気にしなかった。

 衛兵の証言から遡って、事の発端であるルイーズ嬢とノア(靴の持ち主)は奇跡の聖人として特別褒賞が授与された。新婚旅行も兼ねて行った聖皇国の表彰式ではルイーズが新たな魔王だと勘違いされる場面があったが筋肉で制圧したので些事である。ノアの「肩にちっちゃい装甲馬車乗ってる〜!!」という謎の歓声が響いた。



 そうして魔族の脅威もなくなり、空は青く晴れ渡りでっけぇ虹がかかり世界に平和が訪れたのであった。




 〜 Happy End 〜

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