雪の女王のいない一月
沙月Q
または会員制の粉雪
雪の女王がお出ましになった。
「♪少〜しも寒くなくね〜」
口ずさむのは下界のはやり歌をアレンジした自らのテーマソング。
「へへー……」
集まった水の精たちがぬかづく。
「さて、いよいよ雪の本格シーズンが始まるわけですが、水の精から粉雪会員への登録者が激減しております……」
仕切り役の水の精が報告した。
「あらー、そうなんだー。さびしくね?」
ギャル語で反応する女王。
「やはり、会員費を値上げしたのが大きいかと……」
「でも、みんなきれいなサラサラパウダースノーになりたいでしょ〜?」
水の精たちに呼びかける女王は第一級の美しさを持っていたが、金についてのガメツさは特級だった。
「た……確かになりたいんですが先立つものが……」
「またベタ雪や豪雪になって人間たちに嫌われるのも心苦しく……」
精たちから挙がる声を聞き、女王はホホホと笑った。
「人間に嫌われるのが嫌なの? だったら色々工夫すればいいんじゃな〜い? パンがなければケーキを食べればよろしいのよ〜!」
意味不明の提案をした女王は、集まった粉雪会員費を豊満な胸元におさめると、玉座の裏へ去っていった。
「わらわは『呪術廻戦』ファンパレやって寝るわ〜。課金費用もできたし〜。ではみなさん、また来年〜」
残された水の精たちは困惑した。
「お隠れになってしまった…」
「どうする? このまま寒くなったらまたベタ雪で豪雪だぞ?」
「工夫かー……なんか、人間に喜んでもらえそうな仕掛けをすれば……」
長時間に及ぶ会議の末、水の精たちは結論に至った。
やがて、強い寒気が空を覆ったある日……
空から無数の雪ダルマが降ってきた。
大人たちはパニックに陥り……
……子供たちは大喜びした。
完
雪の女王のいない一月 沙月Q @Satsuki_Q
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