ヒナちゃんは、爪先立ちをしてでも知りたいお年頃~大好きな姉たまを知らず知らず、ヤリチンから救っている可愛い恋のキューピッドの話って需要ある?【カクヨムコン10短編】

尾岡れき@猫部

第13話 姉たまが彼氏たんを家につれてきたのら!

 お姉たまが、彼氏たんをつれて来たのでふ。


「……なんだか、ドキドキするね」


 彼氏さんはソワソワしている感じが、可愛い。こういう時は堂々と振る舞うのが、彼氏たんの務めだと、ママも言っているの。


「今は、両親もお出かけしているし。陽菜もお昼寝してるから」


 甘いのですよ、姉たま。保育園でお昼寝しないランキング、栄えある最優秀賞を獲得したヒナちゃんを、舐めたらあかんぜよ、でしゅ。ぺろん。


 お姉たまと、彼氏たんはソファーで横になっておりましゅ。お昼寝布団から脱走を試みた、ひなちゃんは、現在ソファーの背もたれ側から、様子をうかがってる所ナウなのでしゅ。

 でも、このままじゃ何も見えない。

 ソファーのヤツが、きしきしと言いやがります。


「ぎゅってしてほしいなぁ」

「どうしたの? 甘えっ子だなぁ」

「甘える私は嫌い?」

「むしろ、俺にだけ甘えてほしいよ」


 み、見えない。

 見えないけれど――。


 なんでしゅか、この茶番は。

 保育園のオママゴトだって、もっと緻密な設定があるというのに。


「……じゃあ、そろそろやろうか?」


 ヤる?


「もう……?」

「でも、時間がないんでしょう?」


 時間がにゃいのら?


「そ、そうだけど……」


 姉たまが、花も恥じらう乙女になっています! これは一大事です!

 ヒナちゃんの見ていたテレビを無理矢理変えちゃう悪魔はドコにいったのでしゅか?


「ひゃんっ」


 おっと? これまでに聞いたことがないくらい、艶めかしい声を出す姉たま。本当に同一人物なのでしょうか?


 でも――この声は、聞いたことがあるのら。あれは、毎週土曜日。あの日に限って、ママはヒナちゃんを早く寝かせつけようとするのでしゅ。

 それは良い。

 それは、良いのら。


 ――陽菜も、早く弟か妹が欲しいでしょ?


 親の期待に応えるため、ヒナちゃんは「はいあい」と素直に答えるの。なんて、良い子なのら。大魔王ひなちゃんが欲しいのは、暗黒世界。来るべき、その世界では大人も子どももおねしょするのら。これで、ヒナちゃんも恥ずかしくないのら。

 もしくは、モフモフのわんこ

 弟にするなら、わんこが良いっ!


「あぁ……そんな、いきなり!」

「でも、触れないと、できないでしょ?」

「そ……そうだけど、あぁっ」


 お姉たまが声をあげるのでしゅ。普段のキリッとしたお姉たまからは、まったく想像できない。姉たま、悶えて、溶けてしまっているのら。


「痛いっ、痛いっ、痛いっ」

「初めてじゃないでしょう?」


「痛いのは、痛いの! もっと優しくしてよ!」

「そんな優しさ、いる? きっとすぐ良くなるから。もっと進みたいしね」

「そ、それは――」


 姉たま、もう病みつきということなのら?

 痛いのは最初だけって、保育園の親友マブダチ、カノちゃんが言っていたけど。正確には、カノちゃんのお母さんが言っていたみたいだけど。あれはウソなのら?


「痛みがあるというのは、体が素直に反応している証拠だよ。ほら、ね」

「んっ、あぁっ、や――」


 むしろお姉たまは喜んでいるのら。これは、あれだ。マナブ君のパパとママと一緒なのかもしれない。マナブ君は、毎週金曜日の夜らしい。ただ、ちょっと違うのは、ママさんが鞭をもって、パパさんのお尻を叩くと言うのら。


(そんなにマナブ君のパパさん、ワルい子なのら?)


 実際、姉たまは、どうなんだろう?

 頭脳明晰、快刀乱麻、冴え渡る推理。その名は、名探偵〝ひなたん〟としては、真実を確かめるしかない。いつも、真実は一つか二つか三つ。全部、つかみ取り、任せてなのら。


 名探偵ひなちゃんは、良いことを思いついたのら。

 折りたたみ式の踏み台があるのら。これをセットして――それから、踏み台に立つのら。


(……と、どかない)


 ひなたんは、だからといって諦めない。

 名探偵は、完全犯罪を絶対に達成するのら。


 えっしょ。

 ひなちゃんは、知っている。

 普通に見えないのなら、爪先立ちをしてみたら――身長がのびるの、ら。


「……陽菜?」


 姉たまと。それから、彼氏さんと目が合いまちた。


 それから、なぜか踏み台のやつが、ぐらぐらしやがるのです。

 根性出せ、踏み台!


 お前は、ヒナちゃんに踏まれたぐらいで、音を上げるのか?


 違うだろう!

 踏み台!


 お前は踏まれるために生まれてきたのだ!

 君は、暗黒世界を統べる魔王ヒナちゃんの忠実なシモベとして、これからも踏まれ――。





 ぱたん。

 踏み台のヤツ、根性なしなのら。


 あっさり、閉じてしまいやがって。


 バランスを失ったヒナちゃんは、頑張った。なんとか、転ばないようにしようと頑張ったのら。でも、世の中には無駄な抵抗というものがあると。社会は意外に世知辛いのだと。今、ひなちゃんは学んだのら。





 世界は、クルクル回る。

 カモン、暗黒世界!






「ひ、陽菜? 痛っぁぁぁぁぁぁっっ!!」

「痛いの~!」

「……なんで陽菜が降ってくるの? 痛いのはお姉ちゃんの方なんだけど! 泣きたいの、私だから!」




 そう言われても、涙が引っ込まないのら。

 サナちゃんなら、こういう時、「痛いの痛いの飛んでいけっ」ってナデナデしてくれたら、あっという間に消えちゃうのに。



「ぴーーーーーーーーーーんっ」


 と泣くひなちゃんを、姉たまは文句を言いながらも抱きしめてくれるから――姉たま、しゅき。ひなっちゃんは、姉たまにきゅっと抱きついた。




 彼氏たんが、この時、姉たまにマッサージをしていたと知るのは、もう少し後のになってから。





________________



【登場人物紹介】


陽菜…3歳、好奇心旺盛な女の子。将来は、暗黒世界の大魔王を目指す。姉たまと、お隣のヒロ君が大好き。世界一、世界最大絶世美魔女(パパ談)


姉たま…19歳、大学生。その大学のテニスサークルで、彼氏たんと出会った。恋愛初心者だから、彼氏たんに騙されそうになる。幼馴染みのヒロ君が気になっているが、無自覚。テニスサークルでストレッチと称して、彼氏たんがマッサージをしてくるが、ヒロ君の方が上手い。


ヒロ君…姉たまの幼馴染み。同じ大学の別の学科で、軽音部サークルに所属。同じサークルの部長さんと良い感じになっているが、姉たまにずっと片想いしている。そして、もっているモノはなかなか。陽菜ちゃんも一目いちもくを置いている。


彼氏たん…姉たまと大学で出会う。ヤリサーで有名なテニスサークルのエース。(主に女性関係の方で)

寝取られ願望あり、他の男が彼女をムチャクチャにするのが好き。滾る。しかし、モノは短い。そして、いつも陽菜ちゃんに邪魔をされる。






――今回はこのへんで――


【おちまい】

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