生かされた命
久石あまね
僕を助けてくれた六十兆の細胞たち
人間の身体には六十兆の細胞があるらしい。
僕はこの世にいつの間にか誕生していた。
自分の意志で生まれてきたのか、そうじゃないのかはわからない。
ただ、両親の愛から生まれたことは確かだ。
何不自由なく、中学生まで生きてきたが、高校2年生の時に統合失調症という精神障害を患った。
その時、心の底から生まれてこなかったらよかったのに、と思った。
両親も恨んだ。
世間から受け入れられてないと、障害者になって、初めて感じた。
世間の偏見が心に氷の刃となって突き刺さった。
自分のすべてが否定されたような気がした。
病気になって十年間は毎日死にたいと思った。
でも僕は死ななかった。
いや、死ねなかった。
単純に死ぬのが怖かったから。
この世から自分が消滅してしまったら、自分の生まれてきた意味を見つける旅が終わってしまうようで、虚しかった。
自殺でこの世から消えてしまうという現実に自分の心が受け付けなかった。
それだけはするまいと思った。
でも生きる意味も見つからなかった。
今でもそれは見つからない。
何のために生きているのかわからない。
何かの本で人間には六十兆の細胞たちが活動していると読んだ。
細胞が活動しているから生きていられるのだ。
自分が死にたいと思っても、細胞たちは活動する。
僕は大いなる力に生かされているのではないかと思った。
自分が自分を受け入れなくなっても、細胞たちは活動を通して僕を守ってくれた。
心臓や内臓は今日も動きを止めない。
細胞たちは今日も働く。
だから僕は生き続けている。
細胞たちに生かされて。
もしかしたら、僕は細胞たちに、素晴らしい未来を創れといわれているのかも知れないと思った。
だから細胞たちは僕を生かしたのだ。
生かされた命 久石あまね @amane11
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