クールな彼氏は、実はバカ?
羽弦トリス
クールな彼氏は、実はバカ?
私は韓国焼き肉屋のバイトをしている。
歳は19歳女性。周りからは、ナミと呼ばれている。
月島ナミと言う名前だからだ。
今夜は15名様の団体客が19時から宴会を開く。
バイトリーダーの西園寺君は、テキパキと仕事を進めて、団体客の準備に取り掛かっていた。
西園寺君は、私の彼氏。
でも、バイト先では彼氏が先輩で指示を受ける。
容姿端麗で、頭も良い大学生。
「月島、まだ、割り箸が並んでねぇぞ!」
「はい。すいません」
「西園寺さん、この鉄板どうしましょうか?」
「田島、そこの薬剤液の入った入れ物に沈めていて。閉店後磨くから」
「分かりました」
19時。
団体客が店内になだれ込んだ。50代の同窓会らしい。
生ビールと、ハイボールが次々と注文される。
この団体客以外にも、客はいるのだから、ホールはあたふたしていた。
西園寺先輩は、無駄な動きなどせずに仕事をこなしていた。
『あぁ〜、カッコいい。でも、西園寺君は私のもの』
と、ナミは厨房で洗い物をしていた。
2時間経って、団体客は2次会があるらしく出て行った。
西園寺は、慣れた手つきで、食器を片付けていた。
厨房に食器を運ぶ途中、
ドゴッ!
「いってぇ」
「どうしたんですか?先輩」
と、田島が尋ねる。
「椅子の脚に、つま先ぶつけちゃった」
「痛そうですね」
22時閉店。
閉店後も作業は続く。洗い物をして、鉄板を薬剤から取り出し焦げた場所をヘラで落とすのだ。
ガラン
「いってえ」
「どうしました、西園寺さん」
「鉄板をつま先に落としちゃった」
私は西園寺君は意外と面白い人なのかも知れないと思った。
いつもクールなのに。
椅子の脚につま先ぶつけて、鉄板をつま先に落とす。
ドジだな。
バイトが終了すると、何人かで白木屋へ向かった。
所詮大学生だ。バイトしていても、安居酒屋が安心なのだ。
行く道中、西園寺は派手に転んだ。
「大丈夫ですか?先輩」
「田島、ありがとう。大丈夫。つま先に何か引っ掛かった」
「え?何もありませんよ。段差もないし」
「オレは足を上げたはずなのに」
「西園寺君、お年寄りみたい。何もないとこでつまずくなんて」
その日以来、西園寺君はクールでは無く、ドジだと認知された。
西園寺は未だにクールを装っている。
分かった。この人、バカなんだなと、私は思った。
終
クールな彼氏は、実はバカ? 羽弦トリス @September-0919
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