【第1章 唯一の世界】第3話

 コーヒー店の天井にめり込んだ機械を引きずり出しコンパスを外に追い出した。僕達は頼んだ物のお会計をして大公園に向かった。


「ここなら天井もないし迷惑もかからないはず。」

「ありがとうー。警察呼ばれて学校退学されるところだったよ。」

「気をつけろよ、コンパス。」

「はい。」


 ライロックの目線を受けてコンパスは少し頭を下げた。

 

 コンパスは僕とライロックの共通の友達でミアにある電気系の学校に通ってる。コンパスは実はすごく頭が良くて研究発表会ではいつも賞を取っている。コンパスの両親も僕の両親と同じ研究所で働いてるんだけどコンパスの両親は休みのときは家にいるらしい。あとたまに自慢してくるんだけど、クラスのなかでもモテてる方らしい。


「そういえばライロックから聞いたんだけど、一緒に西の大森林に行きたいの?」

「うん。新しい研究の題材でも探しに行こうとおもっていたところなの。」

「行くのは大森林だよ。電気とはまったく関係なさそうだけど。」

「私も最初は大森林のことなんて興味なかったよ。でも西の大森林の近くに住んでいる友達から面白そうなことを聞いてね。大森林からこの世界には存在しない石波せきはを受信したらしいの。」

「存在しない石波?」

「そうなのよ。私も大陸中巡ってその石波を探しに行ったけど結局西の大森林の近くでしか受信できなかった。」

「石波って人工的に作れないのか?」

「今の技術じゃムリね。まず石波っていうのはこのセーウンっていう石から出される波なの。」


 と服に入っているポケットからセーウンという石を出してきた。セーウンの大きさ

は大人の手のひらぐらいで色は鮮やかな青をしている。


「なんでポケットから出てくるんだ。」

「1日中石波を受けていれば波の気持ちもわかるかもしれないでしょ。でこのセーウンから出される石波は基本的に同じ周波数なの。」

「そしたら、西の大森林から石波のとは大きくズレた周波数を受信したってこと?」

「そう!だからその正体を突き止めに行く。それが私が西の大森林に行きたい理由。」

「なるほど。僕も一緒に探しに行く。」

「うん。よろしくね。」

「理由はわかったがお前が持っているその機械はなんだ。」

「あ、これは使えなくなったから修理してもらおうとしたの。全部私の私物だから懐が少し痛くなるわね。て、それはどうでもいいでしょ。」


 この量の機械をすべて自腹でなおすんだ。こんなお金どこから出てくるんだろう。僕もお金ほしい。


「それじゃ、西の大森林に行くのはこのメンバーでいいな。 で、いつ行くかだ。」

「コンパスはいつ行きたい?」

「そうね。月末までには終わらせておきたいから、来月の初めの方でどう?」

「いいよ。」「問題ない。」


 来月のはじめか。忘れないようにしっかりメモしとかないとね。メモ帳が僕の記憶だ。


「そういえば西の大森林にはどうやって入るつもり?」

「軍隊の人がいるらしいからお願いして入るつもり。」

「それで入れるの?東の大森林に入った人は見たことあるけど西の大森林に入った人は聞いたこともないよ。」

「え、」

「まずそこからだな、どうやって入るかだ。軍隊がお願いして入れてもらえるとは思えない。どこか抜け道を使う必要があると思う。」

「そうね。多分だけどあそこに入るには地区長クラスじゃないとむりだとおもうわ。一般人は持ってのほか。抜け道を探すしかないようね。」


 ライロックとコンパスが下をむいてむずかしそうなことを考え始めている。僕なんてなにも言ってないのに。とりあえずどこか落ち着けるような場所に。


「ねね、公園で考えるのもアレだしどこかのお店に入らない?」

「いいね、私もなにか飲みたかったところなの。」

「そこの喫茶店なんてどうかな。」

「いいね!私このままじゃ入れないし機械たち修理に出してくるね、それじゃ。」


 そう言い機械を軽々と持ち上げ狭い道へと走っていった。


「それじゃ行くか。」

「うん!」


ーーー


 結局結論が出なかった。3人で抜け道を探すってなってコンパスの友達に頼んで話し合いは終わったんだっけ。メモ帳にも書いてないから何も覚えてない。喫茶店を出たあと3人でどこかのお店に行こうとしてコンパスが2回ナンパされたことは覚えてるんだけどなあ。


 トンカは家に帰ると西の大森林の周辺の地図とそれについて書かれた本をだしてなにかヒントを見つけようとしていた。しかし、特にこれといったヒントは見つからずにそのまま寝てしまった。

 次の日、特に予定もないので西の大森林の周辺にあるムーン地区のマーロウという町に行ってみた。


 マーロウには線路が1本しかなく主に牧畜で生活を行う町だ。これといったモニュメントはなく町の中央にある大きな噴水がある程度だ。特徴もない町だがトンカはこの町が好きで暇なときはよく来ている。

 マーロウの西側にある牧場の羊を見ながらボーとしているとライロックからメッセージが届いた。


『ムーン地区にあるファピという丘に来い。』


 ライロックもムーン地区にいたんだ。暇だし会いに行こ。そういえばライロックってメッセージだとよく口調かわるなー。

 

 羊にお別れの餌を与えて、トンカはマーロウからさらに西にあるファピという丘に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三番目の世界 @riiiiii77

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ