【第1章 唯一の世界】第2話
『本当にすべての地区にいったのか?記憶が間違っているだけじゃないか?』
塾がおわったライロックはすぐに僕と通話を繋いでくれた。今回は音声通話だからライロックの顔や表情は見えないけど多分眠いんだと思う。声が少し小さいしいつもよりゆっくり話してる。
「僕のメモ帳には全部の地区と都市について書いてあったよ。メモ帳こそが僕の記憶だよ。」
『まあそういうなら信じるが。でも少し困ったな。この大陸はそこまで広いわけじゃない。長期休みに大陸一周ツアーがあるぐらいには狭いからな。』
ライロックが言う通りミンル大陸はそこまで広いわけではなく、言っちゃえば狭い。比較したわけじゃないけど地図を見たらすぐに分かるもん。だって僕でも鉄道を使えば、簡単に端から端まで1週間でいけちゃったし。
「もう一回全部をまわって細かいところまで見てきてもいいんだけど、なんかさ、ほらさ。」
『気持ちはわかる。新しい土地に行きたいんだろ?』
「そう!」
『しかし行くって言っても新しい土地なんて海を埋め立てて作るしかないな。それか、東の大森林に行くか?』
「えーーーーーー。」
トンカ達が住んでいるミンル大陸は海に囲まれている。なので船で物資を輸送できる沿岸部の地区や町は栄えておりさらに大陸自体も小さいため貨物列車を使えば大陸中どこでも行け、それぞれの地区単位でみれば貧富の差が小さい。しかし小さい大陸ではあるが線路や港が全くない地域もある。その地域が大森林である。
大森林はミンル大陸東西の沿岸部に位置している。大森林に生えている木の樹高は平均で100mを超えている。大森林には未知の生物が生息しており、大森林を開拓しようとする計画を何回も妨害をしてきた。簡潔にまとめると、「入っちゃいけない場所」である。
『随分消極的だな。そんなにいやか?』
「だって入った人みんな死んでるんだよ!嫌だよ!死にたくない!」
『大森林について知ってる人はいないんだよ。入った人だけが大森林について知れるんだ。魅力的じゃないか?』
「それはそうかもしれないけど、、、。そしたら西の大森林のほうが安全じゃない?なにかあったとしても軍隊がたすけてくれるんだし。」
西の大森林には東の大森林とは違い軍隊が配備されている。そのおかげで西の大森林の近くに住む人達は安心して暮らしているが、なぜ西にだけ軍隊が配備されているのかはだれもしらない。
『西でも問題ないが。あの軍隊は人を大森林から守っているんじゃなく大森林に人を入れないためっていう説もある。』
「ライロックー、それは陰謀論って言うんだよ。大丈夫だよ、問題ない。僕が保証するよ。」
『まあ、わかった。今回はいつもとは違うからこれからのことは明日にでも会ってはなさないか?俺も眠いし。』
「りょーかいです。また明日、ばいばい。」
『それじゃ。』
別れの言葉を言うとすぐにプツンと画面が消えた。
ライロックは切るのがはやいなー。でも西の大森林に行く、っていう結論もでたことだしよかったよかった。ミアは大陸の西側だから東の大森林に行くことになってたら移動が大変だ。そういえば明日の集合場所決めてなかった、やば。すぐにかくにんしないと。
そうしてパソコンを再び起動し、寝てるライロックにメッセージを送った。返信はその2分後にきた。
ーーー 次の日
トンカはミアの中心にある大公園でライロックを待っていた。トンカはミアが嫌いなため隣の地区で待ち合わせをしたかったがライロックが連れてきたい人がいると言うのでしかたなくミアの中心で待つことになった。
「あ、ライロック!」
ライロックは周りの人達よりも少しだけ身長が高いためすぐに気付けた。
「少し遅れた、申し訳ない。」
「全然だいじょうぶ!ところでもう一人は?」
「今家を出たらしい。まだかかるみたいだから、どこかの店にでも行くか。」
「いいよ。僕お金もってないから奢ってね。」
「わかった。」
トンカとライロックは大公園をでて少し狭い道にあるコーヒー店に入った。
「これは僕がコーヒーを飲めないことを知っての嫌がらせ?」
「コーヒー飲めないなら奢れるものないな、申し訳ないが。」
「そういうところ好きだよ。」
ライロックのブラックコーヒーにミルクたくさん入れれば僕でも飲めるんじゃないか?
「で、西にはいつ行く?俺はいつでもいいけど。」
「僕もいつでも良いよ。でもあと2ヶ月で雪もふるし積もる前にはいきたいね。」
「そうだな。あとはコンパスがいつ行きたいかだな。」
「あ、もしかして今から来るのコンパス?そしたら嬉しいな。コンパス頭いいしね。」
「変な方向にだけどな。」
「ん?コンパスあれかな。いつもの荷物持ってきてるし。」
目の前の道に顔も見えないほどたくさんの機械をもった人がコーヒー店のドアを開けようとしていた。
「あれってお店の中いれてくれないんじゃ。」
「すみません!お客様!そのような荷物をもって当店に入るのはお控えください!無理やり突っ込まないでください!壊れます!」
「あー。」
みれば一番上の機械がコーヒー店の天井にめり込んでいる。
「やめてください!これ以上は通報しますよ!」
「え!!ちょ、まっ! あ!トンカ!ライロック!助けて〜。」
機械の山から聞こえてくるコンパスの声を聞いて、コンパスを追い出すために僕らは席を立った。
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