三番目の世界
@riiiiii77
【第1章 唯一の世界】第1話
オースマイ地区の海沿いにはリンカンという町がある。もともとリンカンは漁業が盛んであり、オースマイ地区に首都移転が行われたことにより今では交通や商業で重要な役割を担う町となった。
リンカンの郊外にあるすこし高い丘にフード付きの服を着たトンカという小柄な少年が立っていた。
「あれ、この風景見たことがあるような。あそこの船が通れるように曲げられた川や、海のために植えられた木、そしてあの独特な形をした灯台。絶対見たことある。せっかく新しい土地だとおもって期待してたのにー。」
残念だけど、正直こういうことはよくある。一昨日は、絶対登ったことがないとおもっていた山にいったのにその山の管理者に『おかえり』って言われたからね!なんで僕のこと覚えてるのさ、僕はあなたのこと知らないよ!
と頭の中で山の管理人と戦っていると、リンカンの中心にある塔から鐘が聞こえ時刻はすでに昼だと気づいた。
「あ。移動に時間を使いすぎたかー。お腹も減ったけど魚嫌いだからなあ。特に予定もないし帰るか!」
そう言い丘から降り、近くにあるミア行きの船に乗った。
ーーーーー
トンカの家があるデア地区のミアという都市は世界有数の大都市である。都市には道路や線路が張り巡らされており人や物の移動がとても活発に行われている。その分人口が多いため窃盗や事故が多く、世界で最も危険な都市と言われている。
「はあああ」
帰るべきじゃなかったかもしれない。いつも思うんだけどなんで地面がこんなに道路で埋め尽くされているんだよ。土がまったくみえないじゃん。地形がまったくわからないじゃん。なにが楽しくて外にいくのさ。
とミアへのぐちを言いながらダラダラ歩いていると五階建てのアパートの前についた。トンカの部屋はこのアパートの3階の一番奥である。トンカは窓がついていればどんな部屋でも良いらしい。トンカの両親は研究員でありほとんど家に帰らず研究所で生活しているため、トンカは一人で暮らしている。
部屋の中は地球儀や地理に関する本で埋め尽くされており壁一面には世界中の地図が貼ってある。部屋を見て分かる通りトンカは地理が大好きであり、いろいろな場所に行っているのもそのためである。
「ん、いいね!地球の肌すら見えないミアで唯一地球がみえそう!それじゃ、地球摂取できたし次行くとこでもかんがえるか」
と言い壁に貼りめぐらされた地図を見始めた。
「んー、ここ行ったけ。メモ帳には、、、書いてある。ここも、ここも、ここも、か。もしかして行けるところ全部行っちゃた?もう一回確認してみよう。この世界には僕が今いるミンル大陸しかない。そしてミンル大陸には7個の地区があって40の都市と町がある。メモ帳にはそのすべてのことが書いてある。あ、全部行ったってことか。」
いや信じたくないんだけど。いくところないじゃん!もう一度すべての都市と町まわるか?それでも別にいいんだけどな、、、。あ!ライロックに聞けばなにか良いこと言ってくれるかも。
ライロックはトンカの地理仲間でたまに二人で出かけにも行く。ライロックもミアに住んでおりトンカ同様ミアの町並みを嫌っており、理由も同じである。トンカにとって一番仲が良い地理仲間であり、お互いにいろいろな相談もしている。
ミアの町は人口が多い分広大であり、ライロックとトンカはすぐに会えるような距離には住んでいない。そのため約束をしているとき以外はパソコン上で話しをしている。
トンカは本の山からパソコンを発掘しライロックに電話を掛けた。
「あれ、でない。いつもはすぐにでるはずなのに。心配だけど一人じゃ寂しいし鬼電しよ。」
しかし10回掛けても出ず、流石に心配になり、とりあえずメッセージだけを送った。すぐには返信が来ないだろうとは思っていたが、メッセージを送った1分後に返信が届いた。
『電話かけてくるなバカ。塾行ってるんだよ。』
「え!塾行ってるんだ、知らなかった。それじゃしかたないな。塾終わるまでまつか。」
そう言い、トンカは壁に貼ってある地図を見始めた。
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