最終話 僕らのこれから
——同棲生活4日目 某日木曜日 15:00——
休憩時間となり、僕らはリビングのテーブルで互いに向き合う。
10分休憩のうち、5分くらいじっと黙ってしまった。
カチカチカチという時計のなる音だけが静かな空間の中に響く。
「えーっと、どうしましょうか?」
「そう……だね。ここで変な風にごまかしても、ね」
相変わらず顔を真っ赤にしたまりあさんが、困ったように口ごもる。
僕はここまで来たのであれば男を見せる時だと思った。
「まりあさん! あの……僕は、このまま公表していきたいです。ずっと、入社したときから好きでした!」
「藤十郎……。ありがとう、私のような女に見られていなかったものに告白してくれたのは嬉しい」
「じゃ、じゃあ!」
「だが、今はおいておこう。今日のミーティングで発表したプロジェクトが一番大事だ」
「そう、です、よね……」
僕はまりあさんの言葉に俯いて、気持ちが落ち込む。
確かに仕事が重要なのもあるから、大きな問題を起こすわけにはいかないのもわかった。
でも、やっぱり気持ちの通じなかったことが寂しい。
「間違ってほしくはないんだが、ここ数日キミと一緒に過ごして健康にもなったし、よく眠れるようになったのは事実だ」
「はい?」
僕は意外な言葉に顔をあげてまりあさんを見た。
その顔は赤いままで、腕を組みながらもじもじとしている。
「だから、これからも私の為に朝の味噌汁を作ってほしい」
「そのセリフは僕の方が恰好つくんですけど……」
「細かいことは気にするな。それではあくまでもいったん治療の経過観察のために私の家に来たということで今日は乗り切ろう。そして……」
「そして?」
「今度の土日は本格的な同棲のために、いろいろ買い出しにいくぞ」
「は、はい!」
単純だけども、僕は素直に喜んだ。
僕らのこれからはきっと明るい。
———————————————————————
読んでくださりありがとうございました。
いい感じになったので、今回はここでキリとさせていただきます。
ネタが浮かんだから、番外編など追加していければとは思います。
最後までご覧いただきありがとうございます!
↓カクコン10参加作品まとめ↓長編もあり。
https://kakuyomu.jp/users/masato_tachibana/collections/16818093090845723952
【短編】バリキャリ肉食系主任(♀)はヘタレな草食系部下(♂)と仲良くしたい 橘まさと @masato_tachibana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます