第5話 バレちゃった!?
——同棲生活4日目 某日木曜日 13:00——
木曜日の13時からはミーティングの時間だった。
部内の全員(オンライン含め)集まって、進捗管理を行う。
『今日の進捗会議を始めます。まずはアジェンダは~』
僕がつけているイヤホンから大神主任の声が聞こえた。
先ほどまで昼食で作った中華飯を仲良く食べていたんだけれど、それはこのオンラインミーティングで繋がっている人たちは誰も知らない。
ちょっと寂しいと思いつつも、逆を言えば二人だけの秘密の様でドキドキしてもいた。
ちなみにマイクは基本ミュートで大神主任だけが話すだけなので、僕らはなんとかバレずに過ごせる。
……そう思っていた。
〈虎川〉『なぁなぁ、ウサちゃんよ』
〈宇佐美〉『なんですか、先輩。その呼び方やめて欲しいです』
不意にミーティングを聞いている虎川先輩が個別チャットを打ち込んできた。
画面では大神主任がプレゼンテーションを共有しながら説明しているが、僕は虎川先輩のことが気になっている。
〈虎川〉『オレさぁ、すごく食器とかに詳しくってよぉ』
〈宇佐美〉『結論から先に行ってくださいよ』
〈虎川〉『主任とオマエが持っているカップが同じなんだよ。オマエ、前はそんないいもの持ってなかっただろ?』
その時、僕は慌てて同じカップを使っていたことに気づく。
確かに画面で説明する主任のビデオ画面と、僕のビデオ画面には同じカップが映っていた。
〈宇佐美〉『え、ええっと……その……これ、は!?』
〈虎川〉『付き合っている、という前に同棲ってやつかぁ? これは社内恋愛になるんじゃなぁいかなぁ』
文章からでも厭らしいいつもの虎川先輩の様子がうかがえる。
だけど、それよりもどういう風に答えていいかわからなかった。
黙っていても好転はしないだろうけど、バレてしまった状態のことについて、まだまりあさんとは相談してもいない。
「以上でミーティングを終わる。質疑応答に移るが、マイクをオンにして聞きたいことがあれば聞いてくれ」
今のタイミングで質疑応答は不味い、個別チャットで
「しゅにーん。質問でーす。宇佐美と同じマグカップを使ってますけど、同棲してるんですか?」
「なぁ!?」
虎川先輩の質問にまりあさんは顔を真っ赤にして驚きの声をあげてしまう。
それは同意を示すものであることははっきりしており、ミーティングの他のメンバーも驚きの表情を浮かべていた。
「それについては、業務以外だ。すまないがここで終わりとする」
画面をオフにして、チャット画面も閉じたが仕事用のオンラインチャットツールにいろんな人からの通知が集まってくる。
僕はそっと、ノートパソコンを閉じて、一息入れることにした。
そうしていると、寝室のドアが開き、まりあさんがそっと顔をのぞかせてくる。
「藤十郎くん、私にもコーヒー淹れてほしい……」
いろいろ考えなきゃいけないこともあったけど、この時だけは可愛いなと思ってしまった。
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読んでくださりありがとうございました。
あと1話か2話で終わりになります。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
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