春を撮る

雨宮徠空

春を撮る

卒業を控えた三月。三年生の萊叶たちは、授業も全て終わり、学校は思い出作りの場になっていた。


 「萊叶、写真撮ろ!」

「いいよ!どこで撮る?」

結菜と莉緒が駆け寄ってくる。

「校庭とか?」

「いいねー」

昇降口で靴を履き替え、校庭へ出た。

清々しい春の風が、萊叶たちの髪をなびかせる。

「じゃーん!見て!」

莉緒の手には昔懐かしいカメラが握られていた。

「『写ルンです』じゃん!」

「じゃあ行くよ!瞬きしないでね、はいチーズ!」

「あ、ごめん。瞬きしちゃった」

「私も」

「もう、二人ってば」

「どうしてもしちゃうんだもん」

何回も瞬きしちゃうのは、まだ卒業したくない気持ちの表れなのかもしれない。

『カシャッ』

三回撮り直してようやくできた。

「はい、これ。」

莉緒が、撮った写真をくれる。

「もう卒業かー」

「寂しいね」

これから先、乗り越えられない壁が、私たちの前に立ちはだかることがあるかもしれない。

でもきっと大丈夫。こんなに素晴らしい親友たちに出会えたのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春を撮る 雨宮徠空 @amamiya-raiku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画