第4話

 自分の部屋に戻り、窓辺に足を伸ばして腰掛け、月明かりの中で城下を見下ろしていると、扉が開く音がした。

「……ラファエル様が何故あの方を特別だと思われるのか……今日、お会いして初めて理解しました」

 片膝を立て、頬杖をつき、外を見たままラファエルは応える。

「……そう」

 アデライードはラファエルの周囲に、見慣れない孤独の影を見つけた。

 太陽の帝国、フランスの寵児。

 あの地では誰もがラファエルを愛し、好きになる。

 抗えないほどの引力で、この人は人を惹き付ける。自分もその力に導かれて、修道院を出たからよく分かる。

 しかし、ラファエル自身が誰かに、これほど惹き付けられている姿は、アデライードでさえ見るのは初めてのことだった。だがその理由が今日、確かに分かった。

「ラファエルさま。ネーリ様を決して手放してはなりませんわ。あの方は守り抜いて差し上げなければいけない方です」

 かつて彼女はラファエルに出会った時、同じことを想った。

 数奇な運命で結びつけられた因縁があるから、ラファエルと自分はそうなのだろうと思ったが、ネーリとはアデライードは何の関係もない。それでも同じものを感じとった。

 彼は、ラファエルと同じ特別な人間なのだ。

 アデライードは深く一礼すると、寝室を後にした。

「……わかってる」

 一人になってしばらくしてからラファエルは小さく、呟いた。

 月の光に輝く、柔らかな金髪を彼は指で掬い上げる。



「誓うよ」



【終】

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