雪乃の使命

               ♦

「日向くん」

「な、なんだい? 氷室さん」

 雪乃と陽太が向かい合う。

「このスマホで撮影して欲しいの」

「さ、撮影? な、なにを?」

 雪乃から差し出されたスマホを受け取った陽太は困惑する。

「……私の仕事ぶりを」

「し、仕事ぶり?」

「日向陽太! 消えてもらうぜ!」

「うわっ⁉」

 中肉中背の黒いスーツを着た男が日本刀で斬りかかってきた。

「そうはさせない……『氷剣』!」

「!」

「ひ、氷室さん……⁉」

 男の日本刀を、雪乃は氷で出来た剣で受け止める。雪乃は陽太に対して呟く。

「撮影……」

「あ、ああ、うん!」

 陽太がスマホを構える。雪乃が笑みを浮かべて、頷く。

「結構……はあっ!」

「があっ⁉」

「邪魔が入ったか! ならばてめえごと!」

 雪乃は中肉中背の男を斬り伏せる。後ろから飛び出してきた小柄な男が拳銃を構える。

「……『雪玉』!」

「‼」

 雪乃が雪で出来た玉を投げて銃口を塞ぐ。

「『雪手裏剣』!」

「ぐあっ⁉」

 雪乃が投げた雪状の手裏剣が小柄な男の額を捉える。小柄な男は仰向けに倒れる。

「ちっ! ならば俺が!」

「『雪槌』!」

「⁉」

「まとめて飛んでいきなさい……はあっ‼」

「ごあっ⁉」

 雪乃は自らが発生させた、雪状の大きな槌を勢い良く振りかざし、突進してきた小太りの男を殴りつける。小太りの男は、他の二人の男を巻き込んで遠くにまで飛んでいく。

「ふう……ざっとこんなもんね」

「え、ええ……」

 スマホを構えながら、陽太は唖然とする。雪乃が笑いかける。

「ああ、もう撮影は大丈夫」

「う、うん……」

 陽太がスマホを差し出す。雪乃はお礼を言う。

「ありがとう」

「ど、どういたしまして……あっ!」

「え?」

 雪乃が首を傾げる。

「ちゃ、ちゃんと撮れているか、確認してみて……」

「ああ、そうね……」

 雪乃がスマホを確認する。

「……」

「………うん、ちゃんと撮れているわ」

 雪乃がふっと笑う。

「よ、良かった~」

 陽太がほっと胸をなで下ろす。雪乃が頭を下げる。

「あらためて……ありがとう」

「い、いや、良いんだけど……そ、それよりさ、さっきの連中は何?」

「あなたを狙った刺客」

「し、刺客⁉」

「そう、私の使命は主にあなたを守ること」

「し、使命⁉」

 聞き慣れない言葉が続き、陽太は驚く。

「説明するより体験してもらう方が良いと思って♪」

「氷室さんは……」

「雪乃で良いわ、陽太くん」

「ゆ、雪乃さんは『サムライ』か『ニンジャ』なの?」

「いいえ、私は『オンミョウジ』よ」

「お、陰陽師?」

「そう、『氷雪の陰陽師』。私に課せられたもう一つの使命は、世界が狙うあなたを守ることによって、オンミョウジをワールドワイドな存在にすること……重要な使命だけど……」

「せ、世界が狙っているの⁉ 俺を⁉」

「南国宮崎は私にとっては暑すぎる!」

 陽太と雪乃がそれぞれ己の頭を抱える。

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氷室雪乃は使命に燃える 阿弥陀乃トンマージ @amidanotonmaji

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