第8話 強硬派と交戦派

「何を言うのですか?今こそ、魔法亡き後、魔族達を徹底的に追撃し、壊滅させるべきです。それこそが、将来の禍根を断つという事ではありませんか?」

と真っ先に異を唱えたのが、大国の一つであるスピン王国、その女王ポリア・ポドルスだった。

 原作では、勇者の力を奪ったマックスに同調、慢心して魔族領に侵攻、アルバートと超絶美少女達が味方した女魔王の反撃に大敗するのである、女王ポリアは。原作では、権力欲いっぱいの、残酷な、民を虐げる、何らいい所のない女という事になっていて、敗北後アルバートを助けた国の王女が、代わって女王の位につき、彼女は哀れ断頭台の露と消えることになっている。

"ちょっとというか、かなり違うんだよな・・・。"とマックスは彼女との交渉で感じた。彼女とじっくり話すのは、この時が初めてだった。


 彼女は魔族の追撃、壊滅を主張するが、ニーナの部族等魔王討伐に参加した魔族部族は、その対象とはしていない。彼らとの和平、提携、さらに恒久的和平、交易にも熱心でさえあった。

 彼女の主張は必ずしも間違いとは言えないし、悪逆非道、侵略、領土欲に走っていると言うわけではなかったし、そもそもニーナの魔族部族でも他の魔族たちとの和平交渉や共存には二の足を踏む声が多かった。強大な魔王という存在に強制的に抑えられていないと魔界はまとまらない、部族間の対立はなくならないのが今までの魔族の歴史だったからである。


 それに、旧魔王の部族を中心に徹底抗戦派が結集されていた。その中心になっているのが、旧魔王の妃であるネイサア・ローゼンだった。彼女は、魔王のつい最近の妃であり、人間型魔族だったが、その魔力が強いこともあり、かなりの部族が結集し彼女はそれをまとめていた。かなり彼女は好戦派であり、平和共存など交渉できるような状態ではないとニーナの部族長達は思っていたし、勇者にも言っていた。


 というわけで、マックスにとっては、というわけでと

どうしてなるのか文句を言いたいところ大であったが、スピン王国女王ポリア・ポドルスと魔族徹底抗戦派・好戦派旧魔王の妃であるネイサア・ローゼンの説得をまかされることになったのである。

「すまない。マックス。君ばかりに無理をさせて。」

と頭を下げる勇者アルバートに、"そうだよ。俺は嫌だー。"と心の中で思いつつ、

「まあ、何とかやってみるよ。」

と弱弱しく笑ってマックスは引き受けたのだった。"だって、あの顔みたら、断れなかったんだい。"

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