第2話 色恋は時には人を強くするんだよ
「これからは、厳しい戦いになる。色恋沙汰はなしだぞ。」
魔界、というより魔族の領域の手前というくらい近いコクタイ地方ホウシャ市の酒場で10人以上のグループが酒を酌み交わしていた。酔って、騒ぐというより、皆緊張した面持ちだった。その中で、20歳くらいの逞しい騎士が、ジョッキのビールを飲み干し、ドンとテーブルに置くと、テーブルを見渡して、そんなことを言った。グループの1/3以上が女だったから、何となくわかった、彼の言わんとすることは。そして、彼らは、明日にでも魔族の領域に足を踏み入れることになっているのである。何故?魔王を倒すためである。現在の魔王は、度々人間の国、亜人の部族を襲撃して、甚大な被害をもたらしているだけでなく、大々的な侵攻も計画しているという。それを阻止する、魔王を倒すことで。どうして彼らが、というと、このグループのリーダー、アルバートが認定された勇者だからだ。そのチームの面々は皆、その任務に相応しい、選ばれた精鋭達である。
「まあ、その話はさておいて。」
と真面目そうで、かなり地味な顔立ちの若い男が言った。
「おい、俺の話を聞いていたのか?」
その質問に、その男マックス・プランクは無視して、"ふん。自分は女と付き合っているくせに。"
「勇者様は、この3人の誰が一番好きなんだ?」
と勇者アルバートに唐突に問いかけた。
「え?そねそんなことは・・・。」
「な、何言ってるの?」
「わ、私はべ、別に・・・。」
「ちょ、ちょつとー?」
と勇者と3人の女達は慌てて否定しようとした。
「なあ、色恋沙汰は人間を弱くもするし、強くもするものなんだ。俺は、守る者を得て弱くなるような勇者様ではないと思っている。そうなるような男だったら、魔王は倒せないさ。大体、勇者様が3人を好きで、3人が勇者が大好きなのは一目瞭然だよ。あ、わかっていないと思っていた?わからないわけないだろう、モロばれたよ。勇者様は善人だから、3人のうち1人を選べないだろう?全員貰ってしまえ、妻にしろ。女達も遠慮するな。このまま、告白もできず、思いを伝えられないなんて嫌だろう?出発は明後日だ。お前ら、今日初夜しろよ。」
と一気にマックスは言い放った。真っ赤になって下を見ながら、勇者アルバートに告白しているヴェラ、エレン、ポーラを見ながら、"あー、俺の好み、ど真ん中ストレートなんだよな。堪らないな―。本当は、全裸の彼女達を後ろから抱きしめて、上にして、四つん這いにして愛して、それを勇者に見せつけるはずなんだよなー。"と心の中で悶えながら、彼は4人を部屋に追い立てた。
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