妄想カフェ店員

尾長律季

第1話 常連さん

「先輩。何、にやにやしてるんです?」


「あの2人、何かが始まりそうなの!?2人とも常連さんだし……妄想が、はかどるっ」


「妄想って。お客さんに失礼ですよ」


「例えばさ———」




【男性「あの、すいません。相席と……少しの間、荷物、見ていてもらえませんか?」


女性「あ、はい……」


 女性は、戸惑いながら答えて、男性がお手洗いに行くのを見送る。数分後、男性が戻ってくる。


男性「お待たせ、というか、荷物ありがとうございました」


女性「いえ」


男性「ふふっ」


女性「な、なんですか?」


男性「いや、こっちに戻る時に、あなたが僕の荷物をじーっと見ていたから、本当にずっと見ていてくれたんだなと思って」


女性「あ、あのすいません。見ていたほうがいいのかなって。……ずっと見てなくても大丈夫ですよね」


 女性は照れながら、もごもご話す。そんな彼女に興味が出てきた男性は、自分の連絡先をコースターの裏に書いて、女性に渡す。】


「そして、女性は嬉しそうに……って、どうした後輩」


「いや、展開早いな。先輩。私なら、その男性に対して警戒しまくりですよ」


「嘘でしょ。だって、お互い、同じ店の常連さんだよ?」


「だとしても、話すのは初めてなんですよね?」


「あそっか!……他人で妄想するの難しいな」


「先輩、妄想より手を動かしてください。もう少ししたらお客さん増えるんだから、そこのカップとかお皿とか洗っちゃってくださいね」


「よし、わかった。次は、こんなお客さん来るかも編だ!」


「話聞いてます?」

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妄想カフェ店員 尾長律季 @ritsukinosubako

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