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 頭痛でトウジは目を覚ました。

 床から身を起こす。

 どうやら気絶していたようだ。


 参ったな。

 頭に手をやるとコブができていて、手が真っ赤に染まった。

 血かと思ったが、なんのことはないただのインクだ。棚から落ちたときに誤って瓶を落として被ったのだろう。

 机の裏に瓶が落ちていた。どうやら瓶だけは頑丈で割れなかったようだ。


 ふと目が止まって、机の上のスノードームを掴んだ。

 球形の世界に雪が舞う。

 あの頃はまだよかった。

 これは子供の頃クリスマスに買ってもらったものだ。思い出が昨日のことのように甦る。

 父が生きていた頃はヒロアキと母と何の不安もなく子供時代を生きてきた。

 ホワイトクリスマスにプロポーズしてミカコと結婚した。この世で一番幸せな男だと思った。

 仕事が忙しくない頃はユタカにあたることもなかった。

 どうしてこうなってしまったのだろうな、とため息をつく。

 でもこの山荘にいる間に関係を修復したい。いや、きっとすると思った。



 次の瞬間。

 突然扉が開き部屋に誰か入ってきた。



 トウジが手にしたスノードームが手から滑り落ちて砕け散る。

 頭に衝撃が走って。

 視界が白く染まる。




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ホワイトアウト 錦木 @book2017

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