p5
頭痛でトウジは目を覚ました。
床から身を起こす。
どうやら気絶していたようだ。
参ったな。
頭に手をやるとコブができていて、手が真っ赤に染まった。
血かと思ったが、なんのことはないただのインクだ。棚から落ちたときに誤って瓶を落として被ったのだろう。
机の裏に瓶が落ちていた。どうやら瓶だけは頑丈で割れなかったようだ。
ふと目が止まって、机の上のスノードームを掴んだ。
球形の世界に雪が舞う。
あの頃はまだよかった。
これは子供の頃クリスマスに買ってもらったものだ。思い出が昨日のことのように甦る。
父が生きていた頃はヒロアキと母と何の不安もなく子供時代を生きてきた。
ホワイトクリスマスにプロポーズしてミカコと結婚した。この世で一番幸せな男だと思った。
仕事が忙しくない頃はユタカにあたることもなかった。
どうしてこうなってしまったのだろうな、とため息をつく。
でもこの山荘にいる間に関係を修復したい。いや、きっとすると思った。
次の瞬間。
突然扉が開き部屋に誰か入ってきた。
トウジが手にしたスノードームが手から滑り落ちて砕け散る。
頭に衝撃が走って。
視界が白く染まる。
ホワイトアウト 錦木 @book2017
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます