ゆ〜 @WGS所属

宿雪

雪はとけない。


**


「また来ないのかよ!?」


外食へ行くのは寒いし金もかかるから、と食堂で遅い昼を食べているときだった。

芽城めじろが騒いだが周りに僕ら二人以外いないのでセーフ。


「ごめんね〜」

「断ったの何回目だよ?」

「百回くらい?」

「そんな誘ってねーよ!! ってか俺そんな遊び人じゃねぇよ!」

「お〜、自分で言ったー」

「もしかしてまだ……? なぁ雲雀ひばり、そろそろ忘れたら?」

「んー、わかってるんだけどね?」

「なら今日の合コン来いよー。いい機会チャンス逃すぞ〜」


雲雀殺ひばりころし。

そんな言葉が頭に浮かぶ。


「今日はあいにく予定があってさ、また今度誘ってよ」


春になってヒバリがさえずるようになってから振る大雪。


「はーいはい、俺は知らないからなー」

「とか言って芽城は僕のことほっとけないんでしょ?」


ヒバリとはミスマッチな雪。


「……っ、うっせぇ!! ただの人数あわせだし?」

「そっかー、とかどーでもいいもんねー」


あいつの眉がピクッと動いた。


とかとか綺麗事だもんなー」

「あーあー、お前はなんで俺がこうも優しくしてやってんのにそんな事言っちゃうのかなぁ〜?」

「そーゆーとこですよ〜? 彼女に友達のはなししまくるから彼女できないんです〜」

「運命の相手とか? 一目惚れとかぁ? 信じてる人に言われたくないなぁ?」

「「アハハハハハハ……」」


二人の乾いた笑い声が響きわたる。

中庭には青空の中、枯れ木が2本植わっている。

なぜ常緑樹にしないのだろう。見ていると余計に虚しくなるじゃないか。


「……はぁ、俺、彼女欲しい。これほんっとに切実」

「じゃあ、彼女に友達の話するのやめればいいのに……」

「なんか言ったか?」

「え〜、何だろー?」

「そうだよなぁ? ……あ、雪」


初雪だ。

真っ白で、綺麗で。

だけど、この様子だと直ぐに少しずつ溶けていなくなってしまうだろう。

あの人のように。

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