年末年始、飲みすぎないようにしよう
白川津 中々
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年末年始の暴飲暴食がたたり意識不明で搬送された俺は改造人間になっていた。
「節度を守れぬ人間は人間でいる意味無し。その強靭な肉体で世のため人のために社会貢献するがいい」
傍に佇むプロフェッサーテンパランスと名乗る人物からそう告げられた俺は「キレそう」と呟き診察台を叩くと粉微塵となった。あ、ガチのやつじゃんと驚きと喜び。これだけの力あったら法的拘束力から解放されるなと思い部屋の壁をぶち破って街に参上。気に入らない老若男女を殺人的暴力で制裁しつつリカーに入りリシャールをがぶ飲みするも、まずい。
「五体五感を弄ってある。もはや人の喜びは感じられん」
脳に直接響くプロフェッサーテンパランスの声。なんてこったと頭を抱える。俺の喜びは酒しかなかった。それを禁じられたというのはつまり、地獄。この世に存在している意味がない。絶望の淵に光ったのは破壊と殺戮の狂気だった。それからしばらく意識はなく、気がつけば鉄屑だらけになった知らない街にいた。見るも無惨な退廃状態。恐らく、俺がやったのだろう。現状を把握し、荒廃した大地に腰をおろして空を見上げると、太陽が眩しかった。
こんな日はビール。いやスパークリングワインとフルーツを楽しみたいなと思ったが、もう二度とあの至福は味わえない。悲しみにくれ叫ぶ。しかし、声は誰にも届かない。ただ一人、俺だけが苦しんでいる。
酒だけが人生だった。
他には、なにも……
年末年始、飲みすぎないようにしよう 白川津 中々 @taka1212384
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