燈栄二さんの、ソフトBLの短編です。
わたくし、燈さん、ずっと男性だと思っていましたが(サッカーのお話書いているし)、女性と分かって、この作風に納得致しました。
この、登場人物の心のひだを、細かく拾って描写を重ねていくのは、しかも、激しい言辞や体の動きなしに、何気ない日々の生活と情景から読者に伝えてくるのは、細やかな女性ならではだなあ、と思ってしまいました。この静かな心情の流れが、燈さんの、独特の持ち味です。
ストーリーは、戦争で両足を失ったアルバート、左目を失ったオリバー、そしてアルバートの元恋人ケイティ。この三人は、学生時代、アルバートがサッカーのスター選手いだったころから一緒にいましたが、オリバーはアルバートを愛していることを、ずっと隠し続けていました。
戦争で傷ついて帰って来た、アルバートとオリバーはともに暮らし始めますが、そこには、ケイティの影が色濃く立ち込めます。
そして、ある日、アルバートが、思い切って、あることを告げるのです。それがクライマックス。
ストーリーより、この男性二人の心ふれあいを感じ取るところに主眼がある小説ですね。BLは普段読まないわたくしですが、この作品は、心に残る佳作でした。
みなさんもどうぞ。
二人は同じ家に住む。戦争でアルバートは下肢の機能を、オリバーは右眼を失った。
失ったものはそれだけではない。
アルバートの恋人であり、オリバーの友人であるケイティは爆撃により亡くなっていた。
互いを気遣いながら送る暮し。
喪失を抱えたまま過ごす変わらない日々。
ただオリバーは心に一つの思いを隠している。
アルバートへの、伝えられない思慕だ。
ふとした時に、アルバートの見せた涙でオリバーは気づいてしまう。
アルバートの心には、いまもケイティいることを。
その場所に自分が入り込むことは、ないという事実を。
胸の奥に新たな喪失と沈鬱を押し込みながら、いつも通りに過ごそうとするオリバーにアルバートは言葉をかける────話があると。
失ったモノは返らず新たに得るものはない。
それでも日々は続く。
本作のなかには、凪いだ水面のような毎日。穏やかな陽だまりのなかの静謐な時間が綴じられています。
開けてみるのは、いかがでしょう?