果てしない空の下で

高橋健一郎

第1話

果てしない空の下で


夏の陽が沈むころ、君のことを思い出した。

あの頃の君は、まるで強い光を放つ太陽のようだった。

だけど、風が吹くたびに、僕の手のひらから

その光がこぼれ落ちていく気がしたんだ。


昨日の記憶は遠くなり、

触れられると思ったものは、

まるで蜃気楼みたいに揺れて、どこかに消えてしまう。


それでも、僕はこの道を歩いていく。

果てしない空の下で、

影が細く長く伸びるのを感じながら。

それはまるで、明日へと続く道しるべのようだ。


明日のことなんて誰にもわからない。

だからこそ、僕は今この瞬間の風を感じていたい。

流れていく時間は、

優しくもあり、時に容赦なく全てをさらっていく。


だけど、君が残したものは確かにそこにある。

夕暮れの空に滲んだ影が、

まるで灯火のように、明日を静かに照らしている。


そして僕は、

果てしない空の下で、もう一度歩き出す。

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果てしない空の下で 高橋健一郎 @kenichiroh

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