第2話 空腹の貧乏神 ①
― 即席で作った食事 ―
咲はむっとして顔をしかめていた。
「信じる信じないは自由だけど・・うち、もう一週間何もたべてないの!お腹減りすぎて死にそう・・・・」
「えっ!!一週間?なんでそんなに食べてないんだ?」
一朗が驚いて聞くと、咲はため息をついて話し始めた。
「前の住人が3週間も帰って来ないもんで、冷蔵庫の中の食べられる物も底をついてしまったし、元気が出なきゃ・・・うちの力も半減し影響力も弱くなるんだ」
「それって、ただ君が怠けていただけじゃないの?」
一朗は呆れながらも、なぜか放っておけない気持ちになった。
「わかったよ。とりあえず何か作るから待っていろ」
そう言った瞬間、咲は押し入れからぴょんと飛び降り、嬉しそうに笑顔で部屋の中をくるくる回って見せた。
咲のその無邪気さにトゲトゲしていた心も、ほんの少し和らいでいく一朗だった。
「卵、玉ねぎに、パックごはんと・・・ソーセージがあったはず・・・これで何とかなるか」
まずパックごはんを湯煎し、温まったごはんに溶き卵を少しずつ全体に回しかけ、はしで混ぜながらごはんにからめる。
ごはんより細かく切った玉ねぎとソーセージを加えてと・・・。
大きなマチ付きのビニール袋から中華鍋とおたま、サラダ油を出していよいよ炒め始める。
「水道、電気、ガス早めに手続きしていて良かった」とぶつぶつ言っている横で、
美味しそうな匂いに我慢しきれない様子の咲は、あふれ出てくるよだれを拭きながら慣れた手つきで調理する一朗と、フライパンのなかのご馳走を交互に見ていた。
「最後に醤油を回しかけて・・・と」
辺りは醤油がいい感じに焦げた香ばし匂いが漂ってきた。
「すごいじゃん!!」
咲は興奮気味に一朗のお尻をポンポンと叩きながら、まるでおあずけをされている犬のように出来上がるのを待っていた。
数分後、テーブルの代わりの段ボール箱に白いタオルを敷き、コンビニでもらってためていたスプーンを用意したら、出来立てホヤホヤのチャーハンを紙皿に盛って、咲の前に置いた。
「はい、できたぞ」
「一朗~~最高!!天才料理人じゃん」
「これくらい、誰だってできるだろ」
一朗は軽く返したが、咲の嬉しそうな顔を見て料理に対して何か熱い思いが湧いてくるのを感じていた。
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