奈々と健二郎

これは、〝あき〟が知らないサイドストーリー。



「奈々、待って。話したい事がある。」



「私は、ないよ。」



「俺はある。お願い。聞いて欲しい。」



「なに。どうせ、新しい彼女でも…」



出来たんでしょ?と聞こうとした奈々の声は、かき消された。



「俺、奈々が好きだ。」



「え?」



「付き合って…ください。」



「彼女いるんじゃないの?」



「居ないよ。ずっと居ない。ずっと奈々一筋だった。」



「嘘だよ。じゃあ玄関前でキスしてたのは?抱き合ってたのは?彼女出来たって報告は?」



「嘘ついてた。そうすれば、奈々が俺に意識を向けてくれると思って。奈々モテるから。本当にごめん。」



「バカ健二郎。」



「うん。分かってる。」



「どれだけ私が辛い思いしたと思ってるの。」



「うん。」



「じゃあ、そんなに私を好きだっていうのなら、今までの辛かった記憶を忘れるくらい幸せにしてよ。」



「うん。え?」



「だから…」



健二郎が、伏せがちだった目線を上にあげると、涙をいっぱい目に溜めた奈々と目があった。



「私も健二郎が好き。ずっとずっとずーっと健二郎、一筋だったよ。」



奈々の目からポロポロと涙が溢れ出す。

ポカンとする健二郎。



「ねぇ、こういう時、抱きしめるもんじゃないの?」



泣きながら、けど笑いながら奈々は言う。



「だ、抱きしめて良いの?」



「当たり前じゃん。バカ。早く抱きしめて。」



おしまい

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