茄子の花が白くなる

白川津 中々

◾️

年が暮れる頃、母親から電話があった。


「寒いから、しっかり暖かくしてね」


「暖房つけてるよ」


「雪かきもしないと。お隣さんの玄関半分までね。全部やっちゃうと嫌味になるし、まったくやらないといやらしいから」


「東京はそこまで降らないよ」


「今度、米送るからね」


「いらないよ。切るから。じゃあね」



電話を切る。

母親というのは、いつになっても子供扱いしてくるものだ。歳を重ねるにつれどうにも噛み合わなくなる。煩わしい事この上ない。


「とはいえ、死んだら……」


母親は去年、癌が見つかり手術をしている。幸いにも早期発見により命に関わるような事態にはならなかったが、しかし……


……


母親が死んだら、俺はどう思うか、どう感じるか。今は「そうか」と受け入れられるつもりでいるが、実際にはその時になってみないと分からない。そしていつかその時がくる。


……


なんともいえない気持ちとなり、ふと窓の外を眺めると、白いものがちらついた。


「……雪だよ。くそ」


天気予報をみると、積雪の見込み。


「雪かきかぁ……」


親の意見と茄子の花は千に一つも無駄はない。


俺はスコップを買いに出かけた。


生きているうちは、母親の言葉に耳を傾けよう……

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