光を繋ぐもの〜神戸リカバリープロジェクト

高橋健一郎

第1話

タイトル:「光をつなぐ者 – 神戸リカバリープロジェクト」

テーマ:リカバリー文化の普及と個人の尊厳の回復を描く物語


第1章:はじまりの光


夜明けの港 – 自分の足で立つ


神戸の海は、朝を迎えるたびに新しい光をまとっていた。

夜明け前のメリケンパーク。波の音が静かに響く中、高橋健一郎は一人、港を歩いていた。


遠くに見えるポートタワーがぼんやりとオレンジに染まり始める。海面がわずかに揺れ、朝日が差し込む準備をしているようだった。


「太陽は誰にでも光をくれる。俺も、誰かの光になれるかもしれない。」


自分に言い聞かせるように小さくつぶやいた。

この場所での朝は、何度も彼を励ましてきた。


リカバリーは、自分を取り戻す旅だ。

かつて自分も、その旅の途上で光を見失い、そして再び見つけた。


彼は立ち止まり、ゆっくりと海の方へ視線を落とした。船がいくつか並ぶ景色の向こうに、朝日が顔を出し始めていた。

ひんやりとした空気が肌を刺すが、不思議と心は穏やかだった。


「これから始まる。」


新しいプロジェクト、**「光をつなぐ者」**が、いよいよ神戸の地で動き出す。


異人館の扉 – 仲間との出会い


北野異人館街は、朝早くから静けさの中に独特の空気が流れていた。石畳の道を進み、ひときわ目を引くカフェの扉を押す。


「いらっしゃい。」


奥から聞き慣れた声が響く。

マック夫妻だ。


「健一郎、久しぶりだね。」


エミリーが温かいコーヒーを差し出した。彼女の隣で、ジョンが笑顔を向ける。

二人はアメリカ時代の仲間であり、彼のプロジェクトを支えてきた最初のサポーターだった。


「君の夢は遠くまで届くよ。リカバリーは一人じゃなく、みんなで作るんだ。」


ジョンの言葉に、高橋は静かに頷いた。


テーブルに広げたノートには、リカバリーのアイデアがびっしりと書かれていた。

「光をつなぐ者」は、神戸の人々と共に、新しい文化として根付かせるプロジェクトになる。


高橋はカップを手にしながら、窓の外に目を向けた。


異人館街の向こうには港が見える。朝日がもう完全に空を染め上げていた。


広がる輪と新しい光


波止場の青年 – 初めてのリカバリー支援


ハーバーランドの波止場に立つと、見慣れない青年が一人で海を見つめていた。

その表情はどこか、かつての自分に似ている気がした。


高橋はそっと近づき、隣に立つ。


「何かあったのか?」


青年は驚いたように振り向き、少し戸惑った様子で答えた。


「いや…ちょっと。」


彼の足元には、小さな船の模型が置かれていた。

帆が破れ、船体にはひびが入っている。


「その船、直せそうか?」


高橋はそう問いかけたが、青年は首を振った。


「何も見えなくても、立ち止まらずに歩けば光が差す。俺も昔、そうやって立ち直ったんだ。」


青年は小さくうなずき、壊れた船を抱え直した。


この日の朝、高橋は気づいていた。

人は一度失った光を、誰かの手を借りてもう一度取り戻すことができる。


波止場の青年が歩き出す後ろ姿を見送りながら、高橋は静かに笑った。

**「光をつなぐ者」**の旅は、これから広がり始める。


次章:「試練と再起」 – 摩耶山の夜、そして仲間との再会

次の章では、高橋がプロジェクトで直面する困難と、それを乗り越えるための仲間たちとの絆を描きます。

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光を繋ぐもの〜神戸リカバリープロジェクト 高橋健一郎 @kenichiroh

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