第6話:いっそPCから出てくるな。
「本当だよ・・・日向ちゃん・・・私が裕太ちゃんの彼女ってところも」
「いい?それが一番大事な部分だからね」
「私が裕太ちゃんの、か〜の〜じょ〜」
「裕太くん・・・この子あんなこと言ってるけど・・・」
「聞き流せばいいんだよ・・・」
「だって・・・」
「ビスケットも・・・わざわざ学校まで来てそんなことアピールしなくて
いいだろ、ライバルみたいにさ・・・」
「だって日向ちゃん私のライバルだもん・・・」
「だいたい、ビスケットのほうが後発だからな」
「なに?後発って」
「僕の彼女に先になったのは日向のほうだから、ビスケットより先なの」
「おまえは、つい最近だろ?・・・しかも僕の気持ちなんか無視して
自分勝手に決めたんじゃないか」
「だいたいラーメン食いに行って、店の前に客がいっぱい並んでたら順番
守らないとダメだろ?割り込み禁止だからな」
「ふ〜ん、じゃ〜裕太ちゃんが日向ちゃんにフラれたら私の番なの?」
「いや〜それは・・・」
「彼女になるのに後も前もないよ・・・」
「もし、そうだったとしても、僕の意思を無視してる・・・そこがそもそも
ビスケットの間違い」
「あ〜もう、ったく面倒くさ!!あ〜だこうだ言わないで僕の言うこと聞けよ!!」
「そんなにキツく言わなくていいでしょ?・・・裕太ちゃん、怖いよ」
「怖かないよ・・・ビスケットがふざけ過ぎてるからだろ?」
「あの、裕太くん・・・もういいんじゃない・・・」
「日向は黙ってて・・・こう言うことははっきり言っておかないと調子に
のるんだから・・・そう言う性格なんだよ、分かるんだ、僕が作ったんだから
僕の性格も反映してるんだよビスケットには・・・」
僕はなにげなく本質を言っていた・・・考えてみたらビスケットのことを
一番知ってて理解してるのは僕だったんだ。
でもその時は、腹が立ってたせいで気づかずにいた。
「裕太ちゃん、私がパソコンの中にいた時はもっと優しかったよ」
「あの時と今じゃ状況が違うの」
「違わないよ・・・おかしいのは裕太ちゃんのほうだよ」
「僕が間違ってるって?・・・おかえが変なんだろ?」
「もう帰れ!!」
「もう二度と学校へ来るな・・・いっそPCから出てくるな」
「おまえなんか、ずっとPCの中にいればいいんだよ」
「・・・・・・」
「ごねん、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・私が悪かったから・・・」
「もう、裕太ちゃんを困らせるようなこと言ったりしたりしないから」
「怒らないで・・・お願い・・・怒らないで・・・」
そしたら急にビスケットがその場にしゃがんで泣きしはじめた。
おいおい、泣いてもう号泣。
「裕太くん・・・可哀想だよ・・・謝りなさいよ」
「なんで?・・・僕は悪くないだろ?」
「あのね・・・女の子ともめたら男の子が先に謝らないと収まりがつかなく
なるんだよ・・・そういうもんなんだよ?・・・どっちがいいとか悪いとか
じゃなくて・・・」
「それにビスケットちゃんも悪気があって言った訳じゃないんだから」
「女にだって虚勢はりたい時もあるんだよ」
「分かってあげなよ・・・」
「いいじゃない・・・このさい彼女がふたりいたって」
「え〜日向ちゃんまで、なに言ってるの?」
「ビスケット、もう泣くな・・・ちょっと言いすぎたよ・・・僕が悪かったよ」
「だからさ・・・」
「・・・もういい・・・いい」
「私がいけなかったの・・・裕太ちゃんが言ったように調子に乗ってたの」
「帰る・・・もう二度と学校にも来ないしパソコンから出て来ないから」
「私なんかいないほうがいいんだ、出てこなきゃよかったんだ・・・」
「おいおい、泣いた後はスネるのか?」
「裕太くん、そんなこと言うからダメなんだって・・・」
「裕太ちゃんには二度と迷惑かけないから・・・さよなら」
そう言うとビスケットは取りつく島もなく教室のPCの中に消えていった。
パソコンのキャラでも、あれだけ感情持ってるんだ・・・。
僕はちょっと驚いた・・・まるで人間の女の子だ。
まあ、家に帰ったら、どうせ裕太ちゃんってPCから出てくるんだよ。
「日向ちゃん、ごめんね・・・気にしなくていいからね」
「私、心配・・・ビスケットちゃんいっぱい傷ついたよ、裕太くん」
「女の子はデリケートなんだよ、とくに彼氏にあんなふうに言われたら」
「ビスケットは彼女じゃないって・・・勝手にそう言ってるだけだから」
「あのさ、さっきも言ったけど、私、いいよビスケットちゃんと一緒でも」
「両手に華でいいんじゃない・・・どっちかが用事あるときはもう一人の
彼女とデートできるよ」
「二股なんかかけられないよ」
日向ちゃんの提案は一つの案として検討するととして、結局、肝心のもう
一人の彼女もどきがスネちゃって教室の一件から一週間経ってもPGから
出て来なくなった。
PCを立ち上げても、画面にメッセージが書かれてあるだけ。
《お幸せに・・・日向ちゃんを大切にしてあげて》
うそお〜・・・めっちゃ傷つけたからな・・・。
つづく。
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