第5話:裕太くん・・・この子誰?

僕の考えは甘かった・・・ビスケットに僕が学校へ行ってる間ネットでも

徘徊してたらって言ったのは、迂闊うかつだったかも。


ビスケットはパソコンがあるところなら、どこへでも現れることがきる

って、ちょっと考えたら分かったことだった。


で、最近はパソコンがないところなんてない訳でパソコンは学校にもある。


ね・・・ビスケットが移動するのに公共機関や自転車やバイクを利用する

必要なんかないんだな。

ネットワーク利用してどこへでも行ける・・・世界の果てまで。


だからビスケットがおとなしく家にいるはずがなかった。


それは学校が昼休みの時のこと、いつものように僕は春日 日向かすが ひなたと仲良く話をしていた。

なんせ日向は人間だし生身の女だし彼女だから・・・。


裕太ゆうたくん・・・ワンちゃん飼うって話どうなったの?」


「それなんだよね、出時夫が・・・ああ親父が動物アレルギーだってのは

言っただろ?・・・犬も猫もダメみたいなんだ・・・たぶんハムスターも

ダメだと思うんだ」


「そうだったね・・・じゃ〜無理かな?」


「親父はもともと喘息持ちだし・・・咳がではじめると止まらなくなるからね」

「犬なんか飼ったら、きっと死んじゃうよ」


「誰が死んじゃうの?裕太ゆうたちゃん」


「わっ・・・び、び、び、びっくりした・・・え?」


びっくりして僕が振り向いたら、まじ?まじ?って、ビスケットがそこにいた。

日向もこの子誰?みたいな顔してビスケットを見ていた。

今さっきまで他の数名の生徒以外は、そこに誰もいなかったはずなのに・・・。


「ビスケット、家にいたんじゃ・・・あれ?どうやって学校まで来た?」


「パソコンあるところならどこでも・・・って言うか、細かいこと

言うと、スマホからでも移動できちゃうよ・・・ネットにさえ繋がってたら

学校だろうが霞が関だろうが月面だろうがどこでも行けるからね、私」


「そうか、うっかりしてた・・・ビスケットは元々PCの中で生まれた

んだった」


「裕太くん・・・この子誰?」


「あなたが日向さんね?」

「よろしく私、ビスケット・・・裕太ちゃんの彼女」


「か、彼女?・・・」

「裕太くん、この子彼女なんて言ってるけど、なにこの子?」


「あいや〜なんてったらいいのかな〜」


「裕太ちゃん、私のこと日向ちゃんに説明してあげたら?・・・きっと面白い

ことになるよ」


「あ、あのな〜・・困ったな」


「裕太くん・・・この子があなたの彼女なんて聞き捨てならないんだけど」

「ちゃんと説明して・・・いい訳じゃなくて・・・」


「なに話してもいい訳にしかならないと思うんだけどな〜」


とりあえず、しかたなく僕はあの雷の夜のビスケットのことを日向に話した。


「ふ〜ん、裕太くん・・・浮気の言い訳にはちょっと無理あるよ・・・もっと

現実に即したいい訳して・・・そんな子供の妄想みたいなこと言って・・・

私をバカにしてる?」


「浮気じゃないし、バカになんかしてないって・・・」

「今まで僕が日向ちゃんに嘘ついたり騙したりしたことあった?」


「それはまあ、ないと思うけど・・・」


「だろ?信じてよ・・・本当のことなんだからさ」

「ビスケット・・・おまえもなんとか言えよ!!僕をフォローしろよ」


「ほら、面白いことになるって言ったでしょ?・・・ウシシ・・・」


「面白がらないで!!、僕が言ったことが本当のことだって日向ちゃん

に証明してくれよ」


「しょうがないわね・・・日向ちゃん、裕太ちゃんが言ったことはぜ〜んぶ

本当のことだよ・・・嘘って思うなら証拠見せちゃおうか?」


「証拠って?」


「よそ見しないで見ててね」


ビスケットは日向にそう言うと、教室にあったパソコンにシューって入って

行って、またシューって出てきた。


「うそ!!」


「日向ちゃん信じたほうがいいよ、こう言うことは認めたほうが楽だから・・・」


「なに?裕太くんが言ったこと、本当だったんだ?」


「だから、本当だって言ってるじゃん」


「本当だよ・・・日向ちゃん・・・私が裕太ちゃんの彼女ってところも」

「いい?それが一番大事な部分だからね」

「私が裕太ちゃんの、か〜の〜じょ〜」


つづく。



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