第6話 人助けと見返り

森へとやってきた。


「あの子供が言ってたのはこの辺だったと思うけど」


木々が生い茂ってるし見通しは悪いで最悪の光景だ。

んでもって更に最悪なのが日が暮れ始めてること。


このあたりは特に強いモンスターとかは出ないけど、ちょっとした段差があったりする。

それにひっかかってしまったりしては事故につながったりするし、捜索は急がないとな。


「とりあえず適当に探すか」


俺は特別魔法関係で優れてるわけじゃない。

よって索敵魔法なんてものも使えるわけじゃないし、こういう捜索は1からやるしかない。


「まぁ、使えないなら使えないなりで代わりのもので代用するんだけどな」


俺の場合は割と観察力が優れていたりする。

例えば……


「幸いだ。子供くらいのサイズの足跡あるな」


これを辿っていこう。

ちなみにこの世界の人探しは魔法で行われるためこういう足跡を見つけたりするのは俺みたいに魔法が使えないやつが使う手段。メジャーではない。


しばらく歩いたところだった。


「ごァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


森の奥からモンスターの鳴き声が響く。


「まぁモンスターの声なんて珍しくは無いが」


最悪なのが迷子ボーイとモンスターが鉢合わせることか。

ここいらはそんなに強いモンスターが出るわけじゃないから子供たちだけで出かけることもあるけど。それでも声が聞こえたのなら心配だな


歩く足を速める。

足跡を急いで辿っていく。


嫌な事に気付く。

さっき聞こえたモンスターの鳴き声と、この足跡の続く方向が一緒な気がした。

やがて異変に気付いた。


「足跡が増えたな、これはモンスター?子供を追っているのか?」


急げ。


更に進むと、大きな木の近くまでやってきた。


「ゴァァァァアァァァァァ!!!!」


そこには大き体をしたクマがいた。


(爪がデカイな。ってことはビッグベアーか。このあたりじゃそこそこ強い方のモンスター)


最低限状況を確認する。

子供を食った様子は見えない。

しかし


「悪いなクマちゃん。俺と出会ったモンスターの運命ってひとつしかないんだわ。死んでくれ」


ザン!


クマが倒れた。


(さて、子供はどこだろうね。探しに行かないと)


「すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!剣から斬撃飛んだ!!」


子供の甲だかい声。

目を向けると木の上に子供がいた。


(今朝の大人しそうなやつか、俺が探してた迷子ボーイはこいつで正解か)


「その制服は天光騎士団だよね?!だよねっ!」


興奮した様子で子供が降りてくる。

そして、俺の近くへ。


「うわー、かっけぇ!って、よく見たら今朝の衛兵のおじさん?」


「そう。通りすがりの衛兵プー太郎さ」


「なんでなんで?!なんで衛兵になってんの?!」


「王女様はプー太郎がお好きなようでな。引き抜かれたんだよ」


「うひゃー、すっげぇ!おじさん凄かったんだ!」


「そんなことは置いといて、帰るぞ?俺はさっさと帰って寝たいんだよ」


「はーーーい」



街に帰って子供を送り届けようとしたんだけど……


「お前の家ここなんだな」

「うん!」


子供が連れてきたのはよく世話になってる酒場だった。

俺は一人のため自炊なんてしないしできない。

よって食事は基本的に安い外食で済ます。


中に入ると俺はいつもの癖でカウンターの奥に直行しようとしたんだが、そのときの反応が全く違っていた。


「て、天光騎士団?!」

「こんなところに?!」


(この鎧すげぇな。こんなに反応が変わるなんて)


いつもならゴミを見るような視線ばっかなのに。


俺はカウンター奥の席に座った。

この店の店主であるオバサンがすぐに俺の前にやってきた。


「天光騎士団さんいらっしゃーい!って、アルバ?」


「まぁ、いろいろあってな。とりあえずいつものを頼むよ」


「はーい」


すぐに俺の前にいつものやつが置かれた。


それからニヤニヤしてた。


(なんでそんなににやにやしてる?)


「アルバがよく言う。出世払いって信じてなかったんだけど、これできっちり出世払いできるね〜?」


(あー、そういえばそんなこと言ってたな?!しかも出世しちまったし!衛兵から天光騎士団の大出世!)


そのとき、助けた子供がおばさんの近くに。


「母ちゃん聞いてよ。森で迷ってたらこの人が助けてくれたんだ。」


「え?そうなの?アルバが?」


「うん!」


店主が俺を見てきた。


「息子が世話になったみたいだし今までのツケはチャラにするよ」


「センキュ〜」


「でもこれからはちゃんと払ってね」


「わかってるよ」


それにしてもツケがチャラになるなんて思わなかったな。


(騎士団の一員としてとうぜんのことをしただけなんだが)


たまには人助けも悪くないかもな。


ただし出世はNG!


まぁ、これまでの話はいったん置いといて。

さてと、どうやって騎士団をやめるか。

頭を悩ませないとな。


(まじで騎士団とっととやめてー。カリオンとかいうやつもくっそむかつくしなー)


なんてことをリディアに言えれば早いんだけどな、とほほ。

一般人おじさんにそんな勇気はないのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

低賃金でブラックな底辺衛兵のおっさん俺、知らずに王女様を助けてしまいSSSランク超絶ホワイト騎士団にぶち込まれる~俺はブラック職場にいたいだけなんだが、なぜかホワイト騎士団で立場が盤石になってしまう にこん @nicon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ