第3話 幼馴染

 ――入学式当日。


 俺は張り出されているクラス表を確認していた。

 どうやら俺は1年1組のようだ。


 今日からこの学校の生徒なんだと思うと胸が躍る。

 スポーツ強豪校なのできっと周りの新入生たちも中学時代何らかのスポーツで成績を残してきた人が多いんだろうな。


 俺はこの辺の育ちじゃないから知らない人たちばかりだけど、早く馴染めるように努力ようと思う。

 そんなことを考えていた時だった。背後からトントンと肩を軽くつつかれた。

 後ろを振り向くと、そこにはよく見知った顔があった。


「よっ、高校でもよろしくっ!」

「は、はあ!? 何でお前がここにいるんだよ!」


 そこにいたのは、金髪のボブカットの髪型が良く似合っている小学校時代からの幼馴染である七瀬愛花ななせあいかだった。きっと高校入学を機に髪を染めたのだろう。

 この学校は染髪禁止の校則も特にないからな。


 そんなことより、本当に何でここにいるんだ。


「ふふん! そんなの私もこの高校にスポーツ推薦で合格したからに決まってるじゃない!」

「え、そうだったのか。合格した時に教えてくれても良かったのに……」

「涼のことを驚かせたかったの」

「なるほどな。でも、知ってる人がいてくれて心強いよ」


 そういうことだったのか。

 どうやら愛花も俺と同じく春風高校にスポーツ推薦で合格していたようだ。

 ちなみに、愛花も俺と同じくテニスをやっている。


 驚きはしたけど、今は愛花がいるという事に安堵している。

 少なくとも1人は顔見知りがいるという事だからな。


「涼、これ見て」


 愛花はクラス表を指差した。

 そこには、俺の名前と愛花の名前が1年1組の欄に記載されていた。

 まさかのクラスまで同じという奇跡。


「クラスまで同じなんてな」

「ねっ、私もビックリしたよ。高校でもずっと一緒にいれるね」

「そうだな。よし、とりあえず教室に向かうか」

「うん、そうね」


 俺と愛花は自分たちの教室である2年1組へと向かった。


*****


 教室に着くと、もう既に多くの生徒が集まっていた。

 それに、スポーツしていそうな雰囲気を醸し出している人が多い。


 黒板に誰がどの席に座るべきなのか張り出されている。


「え、マジ?」


 自分の席を確認すると、またしても奇跡的なことに俺と愛花の席が隣同士なのだ。

 こんなに奇跡的な偶然が何度も続くものなのだろうか。

 まあ、俺にとっては良い席なのだから別に不満は一切ない。


「私たちって、凄いね」

「奇跡が起きまくってるな」

「運命の赤い糸で結ばれてるのかも!」

「何言ってるんだお前」


 変なことを言い始める愛花の額に軽くデコピンをしておいた。


「何すんのよー、痛いじゃん」

「変なこと言うからだ」


 愛花は頬を餌を口いっぱいに頬張るリスのように膨らませていた。

 愛花は身長も低めなので、本当に小動物のようだった。


「ちょっといいか」


 俺と愛花が話していると、前の席に座っている男子生徒が突然話しかけてきた。

 結構ガッチリとした体格なのが制服越しでも分かるほどに鍛えられている身体をしている。


「えーっと、君は?」

「あ、すまんすまん。まずは自己紹介だよな。俺は、宮下海斗みやしたかいとだ。テニス部に入る予定だ」


 なんと俺と同じくテニス部に入る予定らしい。

 これは友達になるチャンスだ。これからは部活でも顔を合わせることになるのだから仲良くなっておきたいところだ。


「よろしく。俺は、鈴川涼。それで、この金髪が俺の幼馴染の七瀬愛花だ。俺たちもテニス部に入る予定なんだ」

「お、そうなのか! それならこれからよろしくな。俺はこの辺の育ちじゃないから知り合いが全くいなくてちょっと不安だったんだよ」

「俺たちも同じ感じだよ」

「マジか! なんか知り合ったばっかりだけど俺、2人とは仲良くなれそうな気がする!」

「あはは、そう言ってくれると嬉しいよ」


 俺と愛花は早速友達を作ることに成功した。

 愛花も俺の隣で嬉しそうに笑っていたので友達ができてホッとしているのだろう。


 それから間もなくして、教室に担任の先生と思われる女性が入って来た。


「はーい、みんな席についてくださいねー」


 先生は皆が席についていることを確認してから、入学式の流れなどについて話した。


「――今日はこのような流れになっています。入学式が終わった後は必ずここに戻ってきてくださいね。間違って帰ってしまわないように」

「「「はーい」」」


 先生が話し終えると、俺たちはすぐに体育館に向かい始めた。

 ここからは退屈な時間になりそうだ。だって、校長先生の話とか絶対長いからな。入学式の定番だろう。


 そんなことを考えていると、海斗がとある提案をしてくる。


「なあ、帰りにテニス部の練習見に行かね?」

「「賛成!」」


 俺と愛花は海斗からの提案に即答で了承した。

 強豪校の練習がどんなものなのか見てみたい。運動着などは持ってきていないから参加はできないかもしれないが、練習を見るだけでも得られるものは多いだろう。


 退屈な時間を乗り越えさえすれば、部活見学という俺たちにとってのご褒美が待っているのだ。

 絶対に乗りきって見せる!



 ……その後、入学式で爆睡しました。やはり、眠気には抗えない。


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バレー部エース候補の美人アスリートな先輩と同居することになった。 夜兎ましろ @rei_kimura

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