第2話 バレーボール部

「お、もう荷物置き終わった?」

「はい、ありがとうございます」


 俺は自分の部屋を案内してもらい、すぐに荷物を置いた。

 あと数分長く持っていたら肩が外れてしまうと思うくらい重かった。


「疲れたでしょ? リビングにソファあるからリビングで一緒に話そ」

「はい、そうですね」


 俺は香澄さんに連れられ、リビングに向かった。

 ソファに腰を下ろした瞬間、疲れが一気に吹き飛んでいくような感覚に陥った。


(このソファ、めっちゃ座り心地良い!)


 俺がソファの座り心地の良さに感動していると、香澄さんが俺の隣に腰を下ろした。

 少しだけドキッとした。


「どうしたの驚いた顔して」

「いえ、少し緊張してるだけです」

「そう? それなら良いんだけどさ、お互いについて話さない?」

「いいですね。お互いの名前しか知らないですもんね」


 俺と香澄さんはお互いについて色々話すことにした。


 俺も香澄さんについての情報が1歳年上でということと、名前しか知らないのでありがたい提案だった。これから2年間一緒に暮らしていくのだから最初のうちでできるだけ仲良くなっておきたい。


「それじゃあ、まず私から話すね」

「はい、お願いします!」

「私は、春風高校で女子バレーボール部に所属してて、趣味は美味しいものを食べること!」


 どうやら香澄さんはバレーボール部に所属しているらしい。

 たしかによく考えてみたら香澄さんは女性にしては高身長だと思う。

 男の俺とあまり身長が変わらないので結構高い方だろう。


 それと、趣味が美味しいものを食べることってのは、ちょっと可愛いなと思ってしまった。


「香澄さんはバレー部だったんですね。どうりで身長が高いと思いました」

「そうなんだよね、もっと大きくなりたいけどねっ。さあさあ、次は涼くんの番!」

「俺は、テニス部に入る予定です。えーっと、趣味はー、俺も美味しいものを食べることです!」

「あっはは! それじゃあ、毎日一緒に美味しいもの食べようね!」

「は、はい!」


 趣味は思いつかなかったので香澄さんと同じ趣味を答えたら香澄さんは楽しそうに笑ってくれた。

 でも、毎日美味しいものを一緒に食べようねって、なんかプロポーズみたいだな。……って、何考えてるんだ俺。


「そっか、涼くんはテニス部なんだね。ってことはスポーツ推薦?」

「はい、そうです」

「お、流石だね。私もスポーツ推薦で入学なんだけどね!」


 香澄さんはドヤ顔で胸を張った。

 そんな香澄さんを見て俺は思わずくすっと笑ってしまった。


 笑っている俺に気が付き、香澄さんはポカポカと俺の腕を叩く。


「何笑ってるの! 本当に私もスポーツ推薦なんだって!」

「いえ、それを疑ったわけではなくて」

「じゃあ何で?」

「んー、香澄さんの仕草がちょっと面白くて」

「ぜったい馬鹿にしてるでしょ!」

「してないですよ~」


 笑いながら色々喋っていくうちに俺は香澄さんと少し仲良くなれたような気がする。

 最初はかなり緊張していたけど、香澄さんがとても話しやすい性格をしていたお陰で俺も緊張が徐々に解けていったんだと思う。


 同じ学校の女子の先輩と一緒に暮らすなんて……と最初は思っていたけど、今ではこの人となら上手くやっていけるかもしれないと思えている。


「ふふっ、涼くん楽しそう」

「え?」

「気づいてないかもしれないけど、さっきからずっと笑ってる」

「全然無意識でした」

「緊張はなくなったみたいだね」

「はい、香澄さんのお陰です。最初は不安だったけど、今は楽しみな気持ちの方が圧倒的に大きいです」

「それは良かった」


 俺と香澄さんはその後も談笑を続け、気がつけば日が落ちそうな時間になっていた。

 香澄さんと話すのが楽しすぎてこんなに時間が経ってしまっていることに気が付かなかった。


 香澄さんも時計を見て、驚いている様子だ。


「時間が経つのって早いですね」

「そうだね。こんなに長い時間拘束しちゃってごめんね」

「いえ、俺は大丈夫ですよ。香澄さんと話してる時間はとても楽しかったですし」

「それなら良かった。もうこんな時間だし夕飯にする?」

「そうですね。俺もちょっとお腹空きました」

「昨日の残りのカレーがあるんだけど、それでもいい?」

「はい、問題ないです!」


 ずっと談笑していたこともあってお腹が空いていた俺と香澄さんはこの後、二人で食卓を囲み、カレーライスを食べた。

 食卓に並べるときに香澄さんは「ごめんね、昨日の残りで」と言っていたのだが、今まで食べたカレーライスの中で間違いなく一番美味しかった。


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