「じゅうななさい」雪と言う名の女の子【カクヨムコン10短編

音無 雪

『雪』と言う名の女の子


「体重制限が厳しくて大変なのよ」



爽やかなライムグリーンのスパッツが眩しいポニーテールの女性


ウォーキングなどの軽い運動が推奨されているそうで、丘の上にある我が家へと脚を伸ばして頂けました。

この丘を登ってくるのは良い運動になると思いますよ。


彼女は単にかろりぃさんと戦っているわけではございません。おなかに新しい命を宿し、まもなくお母さんになる予定でございます。



「今日はお願いがあって来たのですけど、聞いてもらえますか」



§



立ち話も失礼かと我が家にお迎え致しました。母も参加してのお茶会でございます。



もちろんお茶はカフェインレス 壺に入れ夏を越しカフェインが抜けた壺切旬茶をさらにほうじ茶に仕立てました。


徹底してカフェインを抜いておりますので安心してお楽しみくださいませ


それにお子さまに良い成分も含有されているのですよ。日本茶ばんざいでございます。




さてお願いとは何でしょうか



「雪さんの名前をこの子に頂いてもよろしいでしょうか」



ふへっ


何をおっしゃっているのですか 




「生まれてくるのは女の子だとわかっているんです。夫と話し合って「雪さんのような女性に育ってほしい」と願いを込めた名前を付けてあげたいんです」



私のような女性ですか 

表情を見ると冗談ではないことはわかるのですが憧れていただくほどの人間ではございません。

それに永遠のじゅうななさいになってしまいますよ。



でも反対するつもりはございません。「雪」の文字を使って名前を付けるのですか 光栄でございます。

「雪姫」さんなんて如何でしょうか 情に厚くて困難に立ち向かえる素敵な女性の名前です。登場する小説もございますので紹介いたしますよ。




「いえ そのまま名前を頂いて「雪」と名付けるつもりです。画数も良いので」



えっと えっと どうしましょう。照れますね。



「うちの娘の名前を気に入っていただけるのでしたら、使っていただいて構いませんよ」



我が母からも許可が出ました。これで問題ないですね。

有名芸能人でもありませんし商標登録されているわけでもございません。


音無家の長女『音無 雪』 フリー素材でございます。自由にご利用くださいませ




「でも殿方にご縁の無い子にならないか心配ですわ」



ごふっ



実母からのクリティカルヒット 背中から打たないでくださいませ

じゅうななさいは立ち直れないかもしれません。




「ずっとお嫁に行かなくても良いと夫は言っていますので問題ありません」



我が父と同じ過保護でございますね。生まれる前から溺愛されております。でもそれはそれで問題ですよ。



「そうね お嫁に行かなくてもお嫁さんをもらえば良いですからね」


我が家独特の謎理論を他家にまで勧めないでください。



§



「お母さまのお名前も素敵ですよね。母子そろって物静かに感じます。よろしければ雪さんの名前の由来を教えていただけますか やはり雪のように物静かで清楚な女性になるようにですか」



母の名前はかなりサイレントな名前でございます。サイレントな苗字と並びますとより物静かな印象でございます。

でも実際にはアグレッシブでございましてよ。それに怒ると怖いのです。



私は名前の通り物静かで清楚に育ちました。線の細い儚げな美少女でございます。


おほほほ




「由来はね 『深夜に降る雪のように、音も無く人知れず努力をしていつか日を浴びて輝く自分の景色を作り上げて欲しい』そんな願いを込めて贈った名です」



自分の名の由来を聞くのは初めてです。


そんな想いを込めて頂いたのですね。あなたの娘は現時点で名前に負けております。そんな努力家ではございません。申し訳なく存じます。



「あとは雪の冷たさではなく雪の持つ温かさをわかっていただける方に巡り合えば安泰なのですが」



オーバーキルでございます。じゅうななさいはもう息をしていません。それ以上打たないでくださいませ 泣いちゃいますよ。




――――

――――




もうすぐ雪と言う名の女の子がひとり増えます。


私と同じ名を持つ女の子




彼女にとって優しい世界でありますように

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